●CARRY AWAY 14●
どうやら塔矢の機嫌をそこねてしまったらしい…。
風呂に浸かりながら、何が悪かったのか考えてみた。
声を出すなって言ったのが問題だったのかな…?
でもさ、右の部屋には和谷達がいるし、左には越智達がいるんだぜ?
声聞かれたらヤバいだろ!
つーか聞かせたくない。
アイツの喘ぎ声を聞いていいのはオレだけだもん!
にしても…塔矢の奴、今夜本気で何もしないつもりか?
アイツが言い出したら一歩も引かない性格ってのは嫌ってほど分かってるけど……でもちょっと卑怯じゃねぇ?
散々今までオレを誘ってその気にさせて…味をしめさせておいてさ、いきなり今夜はお預けって……。
はぁ…。
何とかならねぇかなぁ…。
ガチャ
「出たぜー」
バスルームから出ると、既に浴衣に着替えてるアイツがいた。
「じゃあ僕も入るよ」
「お、おう」
ドアが閉まった途端、オレはベッドに撃沈してしまった。
やべー…。
抱けないと思うと余計に抱きたくなる。
やっぱアイツの浴衣姿って可愛いよな〜。
目を瞑るとアイツと初めてした時の光景が脳裏によみがえってくる。
あん時も確か浴衣だったんだよな…。
アイツが浴衣を脱いで…オレに迫ってきた。
初めてだったくせに…今思うとすげーなアイツ。
あーあ…絶対に今夜も抱きたい。
抱いて抱いて抱きまくりたい。
しばらくベッドの上でゴロゴロしていたが、居ても立ってもいられなくなって――恐る恐るバスルームのドアを開けた。
塔矢がカーテンから顔だけ出して、こっちを睨んでくる。
「進藤!入ってくるな!」
「オマエが約束してくれたらすぐに出るって」
「約束…?」
「うん…」
塔矢の目線の高さまでしゃがんで――軽く頬に唇をあてた―。
そのまま耳元で囁く―。
「な、今夜も抱かせてよ…」
「イヤ」
即答されて、オレの方もかなりムッときた。
「じゃあオレ出ていかねーから!ここでずっとオマエの入浴姿見ててやるっ」
「変態っ!!」
塔矢がお湯をバシャっと頭からかけてきた。
「うわっ、オマエ最悪!」
「自業自得だ!変態進藤っ!」
「ちょっ…マジでやめろって!」
更にバシャバシャかけてきた塔矢の両腕を掴んだ。
「は、離せ…!」
「やだね」
オレの方も跨いで、バスタブの中に入った。
「進藤、浴衣が…!」
「いいよ、これだけ濡れちまったらどっちみちもう使い物になんねーし…」
「でも…――」
うるさい塔矢の口をキスで塞いで――体を壁に押しつけた―。
「ん…っ―」
最初は抵抗していたコイツも、長いキスに徐々にその気になってきたのか…彼女の方も舌で返してくれた―。
「んっ…ん…っ―」
貪りつくように舌を絡めあって――お互いの存在を確かめあう―。
「…ぁ…はぁ…は…ぁ―」
唇を離すと、塔矢が凭れかかってきたので、抱き締めながら首にキスをして――同時に胸に手を伸ばした。
「…ぁ…やっ、ダメ…声が…―」
「こうすれば平気だって…」
シャワーの方の蛇口を捻ると、上からお湯が降ってきて――塔矢の声をも打ち消した―。
更にずぶ濡れになって重さを増した浴衣をオレも脱ぎ捨てて――直に肌を合わせていく―。
お湯の温度のせいか、いつもよりお互い息が荒い…。
でも塔矢の色っぽさも3倍増しで、ますますオレを夢中にさせた―。
「…ぁ…、進っ藤…」
水の中での交わりはすごく不思議な感じで…でもそんなことを気にする余裕もなくて――
ただ…浮力と水圧のせいでいつもより体を動かしづらい―。
「あっ、ぁ…っ―」
でも相変わらずコイツの感度も声も最高で、熱でのぼせてクラクラしながらも――体は止まらなかった―。
「塔矢、大丈夫か…?」
「……ん」
すっかりのぼせてしまった塔矢をバスタブから引き上げて――取りあえずバスルームの床に寝さした。
「ごめんな…」
謝ると塔矢が少し笑って、オレの頬に手を伸ばしてくる―。
「キスして…?」
「え?ああ…うん―」
ゆっくりと負担にならない程度の軽いキスを…唇に落としてやった―。
嬉しそうにオレを見つめてくる―。
「進藤は僕のこと…軽い女だって思ってる…?」
「は?」
「セックスに飢えてて…誰にでも脚を開くような女だって―」
「お、思ってねーよっ!」
「本当に?」
「バカにすんなよなっ!これでもオマエの性格は嫌ってほど分かってるつもりだぜ?!……だから、今回のことはちょっとビックリした」
「うん…僕もびっくりしてる。何でこんなことになってるんだろうって…。キミにはいい迷惑だよね?彼女もいるのに…」
「え?あ…いや、別に迷惑では…」
――ってオレ、何言ってんだ?!
普通彼女持ちの男としては迷惑だって言うところだろ?!
でも実際全く迷惑じゃねーんだよ!
むしろ大歓迎?
「…僕はキミの彼女に嫉妬してるんだ」
「え…?」
「キミを彼女から奪いたい。僕だけのものにしたいって思ってる」
「塔矢…」
オレも一緒だよ…。
オマエを独占したいって思ってる―。
絶対にもう誰にも渡したくないってな―。
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