●My BROTHER, My SISTER 8●







何だよ、塔矢の奴!

言ったら教えるって言ったくせに!

逃げ出すなんて卑怯だ!!




「あ、父さん?うん、大丈夫。そっちは?着いた?ふーん…、ま、楽しんで来てよ。はは、分かってるって。うん、じゃあお休み」

ピッ


父さんからの電話を切った後、オレは再びテレビをつけた。

チラッと吹き抜けから二階の塔矢の部屋のドアに目を向ける。

あれから部屋から一向に出てこない塔矢。

もう夜だ。

さすがに心配になって、オレは立ち上がった。



コンコン


「塔矢??生きてるか??もう夜だぜ??いい加減出て来いよ??」


シーン

反応なし。返事なし。


「だからごめんって。謝るから出てきてよ。腹減ったー」


シーン


「……はぁ」


オレもドアにもたれて座り込んだ。


「…何だよ、いいじゃん別に。結局キスはしてないわけだしさ。つーか、部屋に篭りたいのはオレの方だっつーの!こんなの…フラれたも同然じゃん」


こんなことなら言わなきゃよかった。

やっぱりライバルのまま、兄妹のままいた方がよかった。

一歩関係を進めようとすると、恋愛は必ずリスクを伴う。

上手くいくか、それまでの関係がぶっ壊れるか。

そのリスクを背負ってでも手に入れたい時、告白ってするもんだと思う。

で、やっぱしなきゃよかったと後悔する。


はぁ……




カチャ



―――え?



「塔矢っ?!」


8時間ぶりにドアが開いた。


「ごめん…寝てた。今何時?」

「え…7時だけど」

「ご飯作るよ」

「あ…うん。オレも手伝おうか?」

「別にいいよ。何?急に」

「いや…別に」


キッチンでパタパタ塔矢がせわしく動き出した。


寝てた?

何か拍子抜け。

でもまさか、寝て全部忘れちまったんじゃないだろうな??

(あれでもオレの一代告白だったのに…!!)





「ごめんね、カレーにしちゃった」

「え?全然いいよ、オレカレー好きだし」

「そう。よかった」


ダイニングで向かい合って食べ始めた。

二人とも黙々と食べて、スプーンが皿にあたる音だけが響く。

ちょっと、気まずい。



「…あ、そういや父さんと明子さん、旅館に着いたって。さっき電話あった」

「そうなんだ。何か言ってた?」

「んー…別に。アキラさんと仲良くなって」

「……そう」


塔矢の耳が少し赤くなってるのに気付いた。

もしかして……平静を保とうと頑張ってる?


「……なぁ、塔矢」

「え?」

「何で…逃げたんだよ?やっぱ嫌だったから?」

「…ううん。ちょっと…突然過ぎて、僕の頭では処理出来なかったから…」

「好きな奴教えろって言ったのはオマエだぜ?まさか自分だって言われるとは思ってなかった?」

「……うん」

「そっか…。でも、本当だからな。オレはオマエのことが好きだ」

「うん……僕も好き…」



は?



「好き?今、好きって言った?」

「うん…好き。僕もずっと進藤のことが好きだった…」

「ま、マジ?」

「うん…」

「な、何だよそれ…。この8時間、オレずっとショック受けてたんだからな!もっと早く言ってくれよな!」

「だから突然過ぎて…返事どころじゃなかったんだ。それに…」

「それに?」

「近親相姦…とか、キミが訳わかんないこと言うから……ちょっと身の危険を感じて…閉じこもってみました。で、気がついたら寝てた」

「なんだよ…もー」


心配して損した!

だいたい身の危険って、オマエもうハタチだろ?

なに少女ぶってんだよ!

まさか経験ないのか?

処女なのか?

妹の初めてを兄が頂いちゃうのって…何かヤラシー。

エロゲーとかでありそうだよなー。

(ま、オレと塔矢は本当の兄妹じゃないけどな。でも義妹としちゃうっていうのもあったような?うわ、なに考えてるんだオレ!塔矢のことだ、絶対しばらくは清い関係を求めてるって!)



「じゃあ…さ、とりあえず……オレと付き合ってくれる?」

「…うん」

「あ、でもしばらくは父さん達には秘密な」

「うん――」



やったー!












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