●My BROTHER, My SISTER 4●
「オマエ、いつから『近衛アキラ』になってたんだよ?初耳だぞ」
「三年前に両親が離婚した時からだ」
「離婚??塔矢先生離婚したのか?!」
「しっ、声が大きい」
父さんに連れられてやってきたTホテル。
どんな人がお母さんになるんだろう…ってドキドキしてたわけだけど――有り得ない人物だった。
塔矢元名人の元・奥方。
塔矢先生が離婚してたってだけでも驚きなのに、よりによってウチの父さんと再婚??
それってそれってそれって、オレと塔矢の関係ってどうなっちまうんだー??
「父さんは知ってたの?明子さんが塔矢のお母さんだって」
「ああ。元々棋士の子供を持つ親同士、共通する点で親しくなったからな」
「ふーん…」
二人の話によると、出会ったのは二年前らしい。
父さんが料理教室に通い始めた時。
付き合い始めたのは三ヶ月前。
それって……バレンタイン?
明子さんからチョコもらったとか?
う、うーん…何だかなぁ。
親の恋愛話を聞くのって何ともいたたまれない気持ちになるぜ…。
「で?二人は結婚するつもりなんだよな?いつするんだよ?」
「ああ、それなんだが…とりあえず近衛さんの体調を優先しようと思っていてな」
「……は?」
「一応安定期に入り次第式を挙げようと考えてる」
「はぁ??!それって、それって…っ」
「妊娠なんて20年ぶりだから嬉しいわ」
明子さんの言葉を決定打に、オレと塔矢は引き攣った顔を見合わせた。
ま…マジで?
妊娠??
まさか、でき婚??
オレらに弟か妹が出来るのか??
「お…おめでとうございます、お母さん…」
もう放心状態の塔矢が何とかお祝いの言葉を述べていた。
「ありがとう、アキラさん」
「オレも…、おめでとう…父さん…」
「はは…ありがとうヒカル」
予定日は来年の年明け。
てことは式は夏頃か?
まさか親の結婚式に出ることになるなんてな…。
「でも籍は今週中にでも入れようと思っていてな」
「へ…へぇ」
「引っ越しも近いうちにと考えてる」
「引っ越し?まさかオレも?」
「ああ。この機会に一人暮らしするっていうのなら話は別だが…」
「いや、まさか…」
「調布でいい物件が見つかったんだ。家族五人、そこで仲良く暮らそう」
五人??
それって父さんとオレと明子さんと産まれてくる赤ん坊と、あとまさか塔矢??
オレ、塔矢と一緒に暮らすのかー??
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