●My BROTHER, My SISTER 3●
「そうそう、今日紹介する方のお名前ね、進藤さんって言うのよ」
「え?進藤…ですか?」
「ええ、進藤正夫さん」
日曜日――僕は母に連れられて日比谷のTホテルに来ていた。
これから僕の新しいお父さんになるかもしれない人と会うなんて…正直緊張する。
しかも名前を聞いて、更に僕の鼓動は早まった。
進藤なんてよくある名前なのかもしれないけど。
僕のライバルと…僕の好きな人と、同じ名前だなんて――
「向こうも息子さんが一人いらっしゃるみたいでね、今日ご一緒してくれることになってるの」
「そうなんですか…」
「あ、ここよ。このレストラン。進藤さんもう来てらっしゃるかしら…」
ボーイに案内されて、僕と母はそのフレンチレストランの中に入っていった。
僕らの姿に気付いた一人の男性が手を挙げる。
ふーん…この人なんだ。
驚いた。
父とは正反対のタイプだ。
優しそうで明るそうで、しかも結構若い?
母と同じぐらいの歳なのかもしれない。
意外…お母さんってこういう人もタイプだったんだ。
「アキラさん…だよね?話は聞いてます。初めまして、進藤正夫です」
「初めまして、近衛アキラです。お会い出来て嬉しいです」
いつもの営業スマイルで挨拶してみた。
向こうも馴染み深い笑顔で返してくれる。
…ん?
馴染み深い?
どうしてそう感じるのだろう……
「父さん、ごめん!トイレの場所分かんなくて迷った…っ」
「ヒカルも挨拶しなさい。近衛さんだ」
「あ、うん。こんにちは、進藤ヒカルで…す…」
母に挨拶した進藤が、あれ?と首を傾げた。
どこかで会ったような?
ふん。当たり前だよ、僕の母なんだから。
昔家に打ちに来てた時、何度も会ってただろう?
続いて母の横にいた僕に視線を流してくる。
「…オマエ、何やってんだよ。こんなとこで…」
「それはこっちの台詞だよ…」
僕と進藤は同時に
「父さん?!どういうことだよ?!」
「お母さん?!どういうことなんですか?!」
とお互いの親に食らいついたのだった―――
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