●My BROTHER, My SISTER 23●
『そうか…やっぱり記憶が飛んでいたか…』
「お父さんは真実を知っているんですか?僕の父親が誰なのか…」
『ああ』
「誰なんですか?教えて下さい!」
『…私だよ』
「…え?でも、お見合いした時既に僕はお腹にいたんでしょう?」
『ああ。お見合いした時…はな。だが私は見合い前に一度明子に会っているんだよ。…明子は覚えてないようだが』
「え……?」
母との話し合いでは結局折り合いがつかなかった。
報告の為に父に電話をすると、父は母の記憶が抜けてる部分を…真実を語ってくれた。
進藤のお父さんに裏切られて捨てられた母が…いかにボロボロだったかを。
母は自殺をも考えていたらしい。
いや、考えるだけじゃない。
実際橋から飛び降りようとしたらしいのだ。
そんな時、偶然通り掛かった父が助けたらしい……
『傷付いた彼女を癒す為に…私は彼女と一晩を共にすることにしたんだよ。彼女は私を別れた恋人と勘違いしてたのかもしれない。何度も進藤さんの名前で呼ばれて…縋られたからな』
「お父…さん…」
『見合いの席で再会した時には正直驚いたよ。でも私のことは覚えていなかった。少し…残念だったかな。はは…』
結婚後、母はお腹の子供を、あたかも父の子供であるかのように振る舞ったらしい。
父も気付かない振りをしたらしい。
でも僕が小さい時に、母に内緒でこっそり僕に検査を受けさせて、本当に自分の子供であることを知ったらしい。
『アキラには不安な思いをさせたね。もっと早く打ち明けるべきだった。すまなかったね…』
「いえ…話してくれてありがとうございました。お母さんには僕から話しておきます」
『明子を頼むな…アキラ』
「はい…」
『あと、進藤君とお幸せに』
「はい…!」
母が退院した後、僕は進藤と進藤のお父さんと三人で、母を説得した。
もちろん最初は受け入れてくれなかったけど、進藤のお父さんとのDNA鑑定結果を見せると、認めざるを得なかったみたいだ。
「正夫さんがいけないのよ……私を裏切るから」
「すまなかった…」
あんなにラブラブに見えた両親に、こんな暗い過去があったなんて驚きだった。
「…ま、いいわ。今は私のものだし。ココちゃんもいるし」
「明子…ありがとう」
でも僕は…内緒だけど少し進藤のお父さんに感謝していた。
だって、もしあの時の浮気がなかったら、今頃進藤も僕も生まれてなかったから。
もちろんこの子も…と、僕は自分のお腹を撫でた。
「アキラさん、堕ろせなんて言ってごめんなさいね」
「いえ…お母さんは母親として当然のことをしたまでだと思います。僕だって、もし子供同士が恋愛しちゃったら…全力で阻止すると思うし」
「予定日はいつだって言ってたかしら?」
「6月です。6月16日」
「そう…楽しみね。それまでに結婚もしないとね」
「はい――」
僕と進藤は笑顔で顔を見合わせた―――
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