●My BROTHER, My SISTER 21●
「アキラ…?」
「お父さん…!!」
僕は中絶の手術の前に、北京にいる父のもとを進藤と訪れることにした。
父の姿を見た途端、またどっと涙が溢れてきた。
「アキラ…?どうかしたのかね?」
「お父さん……僕…僕…っ」
「アキラ……」
父は僕が落ち着くまで、無理に詳しいことを聞こうとはしなかった。
ただ僕を抱きしめて…待ってくれた――
「何も用意出来なくてすまないね。今日はお手伝いさんが休みでな」
「いえ…僕の方こそ突然押しかけてごめんなさい」
「二人とも…苦しそうだな。何かあったのかね?私でよかったら話してくれないか?」
「………」
僕と進藤は目を合わせた後、頷いた。
進藤がこの数日で分かった事実全てを、父に話してくれる。
なるべく…父を傷付けないように―――
「…アキラが私の子ではない…か。明子が確かにそう言ったのかね?」
「はい…」
「そうか…」
「でも!お父さんが僕の父親であることは変わりません!これからもずっと!」
「ありがとう…アキラ」
日本に戻ったら中絶することも話した。
それには顔をしかめてくる。
「でももう14週目なんです…。急がないと…」
「後悔だけはしないようにな…」
「そんな……無理です。後悔だらけです…。こんな思いするならもう二度と恋なんてしたくない…。もう一生…一人でいいです…」
「アキラ…っ」
横に座っていた進藤が、耐えられなくなったのか、父の前だということも忘れて僕を抱きしめてきた――
本当に大好きだった……この温もりが。
一生彼にこうやって抱きしめられたかった。
きっと僕には進藤以上に好きになる人なんて出来ない。
なら、もう恋なんてしなくていい。
一生キミだけを密かに想って生きていくよ。
それがもうすぐお別れの…お腹の子に対するせめてもの償いだ――
「もう14週…か。だが言い換えればまだ14週だ。まだ時間はある」
「え…?」
「アキラは囲碁なら最後まで絶対諦めないだろう?なのに大事な子供をそう簡単に諦めてしまっていいのかね?」
………え?
「とことん可能性を追求しなさい。希望はある」
「あの、おっしゃってる意味が…分かりません」
「よく聞きなさい。確かに私と見合いした時、明子が既に身篭っていたのは事実だ。彼女は隠していたが…それに気付かないほど私は馬鹿ではないよ」
「………」
「私の記憶が正しければ2ヶ月目だったように思う。それが4月だ」
「……?」
「あの頃の明子は恋人に裏切られて精神的に酷くまいっていてね…。だから明子のご両親が新しい出会いをと、私との見合いを急がせたんだが…」
「…すみません」
「進藤君が謝ることじゃないよ。私が言いたいのは、あの頃の明子の記憶があやふやだってことだ。きちんと計算すれば自ずと真実が見えてくるはずだ」
真実…?
「きちんとDNA鑑定を受けなさい。アキラが本当に進藤さんの娘なのかどうか。結果を見てからでも中絶は遅くないはずだ」
僕と進藤の誕生日が3ヶ月離れている意味。
それが解れば全ての謎が解ける―――
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