●My BROTHER, My SISTER 20●
12月16日。
オレとアキラに妹が出来た。
話し合いの最中に倒れた明子さんは、すぐに病院に運ばれたけど母子共に危険な状態にまで陥ったらしい。
でももう臨月間近だったから、そのまま帝王切開で取り出されて子供は無事。
明子さんも結局大事には至らなかった。
妹の誕生――もし明子さんからあの話を聞かなかったら、オレは今頃大喜びで毎日病院に通ってるところだろう。
でも、それどころじゃなくなった。
オレとアキラが本当の兄妹…?
そんなわけない。
そんなわけないよな??!
「父さん……一体どういうことだよ?」
「すまない…ヒカル」
「そんな大事なこと、今まで黙ってたのかよっ?!」
「知らなかったんだ!…明子が俺の子供を産んでたなんて…っ」
父さんを問い詰めて、オレは過去を全部吐かせた。
何が料理教室で意気投合だ……笑っちまうぜ。
全部嘘だったんじゃん。
全部―――
父さんと明子さんは同じ大学に通っていた。
当時大学4年の父さんと、2年の明子さん。
一年以上付き合っていたそうだ。
…ちなみにオレの母さんも同じ大学。
しかも父さんと同じゼミ。
年末の忘年会で、ハメを外して我を忘れた父さんは……母さんと一夜限りの関係を持ったらしい。
もちろんその時も父さんは明子さんと付き合っていた。
…つまり、浮気ってわけだ。
で、運悪く母さんがオレを妊娠しちまった…と。
結局、悩んだ末に父さんは母さんを選んだ。
明子さんとは別れることにしたらしい。
その後明子さんは塔矢先生とお見合いしてスピード婚するわけだけど………
明子さんが先生に初めて会ったその時にはもう、アキラは明子さんのお腹にいたらしい。
つまり…アキラの本当の父親は先生じゃない。
本当の父親は……オレのくそ親父だったってわけだ。
「はは……もう笑うしかねぇや…」
「進藤……」
もうどうしたらいいのか分からなかった。
オレも。
アキラも。
どんなに考えてもいい手立てが見つからない。
アキラと結婚したい。
もちろん子供も産んでほしい。
でもそれは一般的には禁忌で…決して許されないし認められないことなんだ。
「…逃げちゃおうか」
「え…?」
「二人でどっか遠くに逃げちゃおうぜ…。塔矢先生のいる北京とかいいかも…」
「…そこでこの子を産み育てようって言うのか?」
「うん…」
「…駄目だよ。産めない。人として外れたくない」
「じゃあお腹の子はどうするんだよ?!堕ろすのか!?オレは嫌だ!!…せっかくの…アキラとの子供なのに……」
「でも…奇形児が産まれる可能性が高い」
「確率の問題だろ!?平安時代は異母兄弟の結婚とか普通だったらしいじゃん!」
「だから昔の上流階級はおかしな人が多かったんだ」
「……っ」
「それに、僕は子供にそんな重荷を背負わせたくない…」
「オレだって…!」
でも、じゃあどうすりゃいいんだよ…!!
いい方法なんてない。
どんなに考えても見つからない。
オレとアキラが幸せになれる方法なんて……ないんだ…――
「アキラさん…見て。ココちゃんよ」
「可愛いね…」
息詰まったオレらは、気分転換に明子さんの病室を訪れた。
産まれたばかりの妹・ココロを見せられる。
「アキラさんが産まれた時とよく似てるわ…」
「そうなの?」
「ええ」
「……」
「あの人には悪いことしちゃったわね…。ずっと話せなかったの。アキラさんが自分の子供だって信じて疑わないあの人には…話せなかった」
「…僕にとってお父さんは一生お父さんです。これからも…ずっと」
「…ありがとう」
そしてごめんなさい…と明子さんはオレらに頭を下げてきた。
アキラの目に涙が溜まっていた。
妹を抱いて…「僕も産みたかった…」と一言。
涙を拭った後、アキラは母親に告げた。
「この子は…堕ろします」
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