●My BROTHER, My SISTER 2●







親が離婚しようが再婚しようが関係ない?

いや、そんな訳ないって!

一人暮らしならまだしも、まだ実家で親と暮らしてるオレにとっては一大事だ―――








「ん、旨い」

「そうか、よかった」



今夜も父さんの作った夕飯を二人で食べた。

最初はあまりにもマズくて吐き出す程だった父さんの料理。

でも料理教室に通い始めてからは少しはマシになったのかもしれない。

今日のハンバーグもなかなかいける。


もちろんオフの日はオレも作ってみるけど、レパートリーが圧倒的に少ないし。

結局はスーパーの惣菜になったり、外食になったり。

はぁ…一生この食生活が続くのかと思ったらもうゲッソリだ。

かと言って一人暮らししたとこで何も変わらないし、結婚もまだまだしたくないしなぁ。

はぁ…また塔矢に作りに来てもらうかぁ…なんてひそかに考えてると、突然父さんが言い出したんだ―――









「ヒカル、今度の日曜は空いてるか?」

「日曜?んー…取材が入ってたような気がするけど」

「変更してもらうことは出来ないのか?」

「そりゃ頼めば大丈夫だけど……なんで?用?」

「いや、その…な、実は紹介したい人がいてな…」

「え??!」

「今度の日曜に一緒に食事でもどうかと思うんだが…」

「マジ??父さんそんな人いたの??」

「例の俺が通ってる料理教室の先生なんだけどな、ちょっと前から…正式に…な」

「へー、へーへーへ〜〜」


料理教室の先生かぁ!

そりゃもう、息子のオレとしては大歓迎!

もし結婚ってことになったら、これからは毎日美味しいご飯が食べられるし♪

掃除も洗濯もしなくて済むようになるかも♪



「どんな人?名前は?母さんに似てる?」

「近衛さんって言うんだが……顔も性格も母さんとは丸っきり違うタイプかもしれないな」

「ふーん…近衛さんかぁ」







オレの母さんは、オレが17の時に交通事故で亡くなった――


買い物途中に暴走車に跳ねられて…そのまま即死。

あまりの突然の別れに言葉も出なかった。

あんなに涙が止まらなかったのは…佐為以来だった。

相手も即死だったから、怒りをぶつける相手もいなくて。


でも、それより許せなかったのが自分自身だった。

母さんにあんなに心配ばっかかけて目茶苦茶やって我が儘ばっか言って大変な思いさせたのに……オレは何一つ恩返し出来なかった。


せめてもう一年…オレが早くタイトルを取っていたら、その姿を見せてやれたのに――


せめて即死でなきゃ…お礼の一言でも言えたのに――



あー…やばい。

思い出したらまた涙が滲んできた。


とにかく!オレの生活はそれ以来180度変わったわけだ。


朝起きたら朝飯が、帰ってきたら夕飯が用意されてて。

時には昼飯の弁当も。

洗濯カゴに洗い物を入れておけば勝手に洗濯されて箪笥の前に戻ってきていて。

スーツにもアイロンがバッチリ。

ごみ箱のゴミも気がついたら無くなってて。

気がついたら布団も太陽のいいかおりがして。

部屋にも掃除機がかけられていて……


そんな今まで当たり前だと思っていたこと全部が、母さんのおかげだったんだって…改めて思い知らされた。




母さんが亡くなって早三年。

手探り状態で父さんと手分けして何とか家事をこなしてきた。

お互いもう限界だけど、何とかやってこれた。

そしてこれからもそうだと思ってた………のに、いきなりの父さんの告白。

母さんが亡くなってまだ三年なのに、もう新しい恋人が出来たんだ?

子供としてはちょっと…ショック。

でも今の大変さを考えると、考えようによっては大歓迎かもしれない。




オレの父さんは今43歳。

大学卒業と同時に母さんと結婚したから意外とまだ若い。

オレに似た(いや、オレが父さんに似てるのか)甘いマスクで会社でも女子社員から人気だと聞いているし。

子供もハタチを超えた今だから……新しい恋愛をするのもアリなのかも?

ま、うちの父さんはこれからの人生、ずっと一人ってのは無理な気がするしな。

いい人が出来たのなら、上手くいって二度目の幸せを掴んでほしいと思う。



…オレも見習うべきかなぁ。

いい加減片思いも飽きたし、そろそろ本命の塔矢に想いを伝えてみようかな―――











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