●My BROTHER, My SISTER 18●







「ん……気持ち悪い」

「どした?全然箸進んでないじゃん」

「疲れが出たのかな…」

「はは♪昨日調子にのって柄にもないことするからだぜ?」




アキラの誕生日の翌朝。

オレらは部屋で遅い朝食を食べていた。

昨日はアキラ主導で何度もイかされて、オレも正直言って体がダルい。

でも、最高に楽しかった♪

たまにはああいうのもいいよな〜、と顔がニンマリ。




「はぁ…駄目。本当に駄目だ」


アキラがぐったりと畳に倒れこんだ。


「おいおい…大丈夫かよ?」


顔色もちょっと悪いみたいだった。

直ぐさま駆け寄ったオレは、背中を摩ってやる。


「気持ち悪いのか?吐いてくるか?」

「う…ん…」


何とか体を起こし、よろよろとアキラはトイレへ向かっていった。

しかも、マジで吐いてる。


おいおいおい…




「失礼します。…あら?お客様どうかされたんですか?」


お茶を入れにきてくれた仲居さんも、慌ててアキラの元に駆け寄ってきた。


「う……気持ち…悪くて」

「吐き気だけですか?熱は?どこか痛みは?」




…ん?


ちょっと待てよ…?

こういうの…確か前にもなかったか?

しかも最近。

ここ一年以内。






―――――――あ!!






「アキラ!オマエもしかして悪阻なんじゃねぇ?!」

「え……?」

「ほら、父さん達が結婚したばかりの頃、明子さんが気持ち悪いってグッタリしてたじゃん!」

「ああ…そういえば…」

「絶対悪阻だって!」

「絶対悪阻……ってキミ……、そんな脳天気な…」

「え?」




――――は!



そうか!

悪阻ってもしかしなくても妊娠した時の症状だもんな!


妊娠……



妊娠??!




「ええぇ??!」


「驚くのが遅いよ……」


アキラが苦笑していた。


まだそうと決まったわけじゃないのに、オレらは旅館の人達に「おめでとうございます」と言われて、恥ずかしさで逃げるように伊豆を後にした。

帰りの特急の中でも、アキラの肩をずっと撫でてやる。




「本当に妊娠してたらどうしよう…」

「別にいいじゃん。結婚して一緒に育てようぜ」

「…うん。そうだね…」

「ていうかさ、一体いつ出来たんだろな?だって誕生日以外はちゃんと付けてたじゃん?まさか昨日の?んな即行症状出るもんなのか?」

「昨日のは違うと思う。キミの誕生日の方かな…」

「ええ??オレの誕生日って9月だぜ?もう3ヶ月近く前じゃん!」

「でも……言われてみれば、あれ以来月のものが来てない気がする…」

「は?!マジ?!んな大事なこと、もっと早く気付けよ!!」

「だって…名人戦で余裕なかったんだもの」

「あ…そっか」



今回初めて名人戦の挑戦者になったアキラ。

緒方さん相手に3勝4敗と最後まで粘ったんだけど、結局は奪取ならず。

悔し涙をオレだけに見せてくれたあの時のアキラは可愛かったよな〜なんて、思い出すだけで顔がにやけてくる。


…と、今はそんな場合じゃなかった。












「おめでとうございます。もう14週間目に入ってますね」


家に帰る前に立ち寄った病院。

思った通りの結果にオレもアキラも喜んだ。



「お母さん達きっとビックリするね」

「んー…何から言おうか迷うよなぁ」


元々今日帰ったら付き合ってることは打ち明けるつもりだったから、やっぱまずはそれからかな?

妊娠はその後だな。

いやいや、妊娠の前に結婚の方が先かな?



「……あ。ごめん、アキラ。言うの遅くなった」

「え?」

「オレと…結婚して下さい」

「………」


ボッっと一気に赤くなったアキラは、すぐにコクンと頷いてくれた。


「嬉しい……」

「オレも♪」

「幸せにしてね?」

「ああ。任せとけって!」





絶対に、誰よりも幸せにする―――








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