●My BROTHER, My SISTER 16●
親には内緒の温泉旅行。
ちょっとイケナイことしてるみたいで楽しいよな!
「……半目足りない」
「へへ♪オレの勝ちだな!」
「くそっ…!進藤もう一局だ!」
「え〜〜もう9時だぜ?」
夕飯までは渋々打ってやった。
なのに、夕飯終わってもまた打とうと言ってきたアキラ。
仕方なく一局だけ付き合ってやったけど……もう限界だ。
「また明日打ってやるからさ、今日はもういいだろ?全然温泉に入らないで一体何の為に来たんだよ?」
「そうだけど…っ」
負けてスッキリしないからか、ごねるアキラをもう無理矢理脱衣所に引っ張って行った。
浴衣の紐を解いて、彼女の浴衣を脱がしていく。
あらわになった白い肌に…ゴクリ。
相変わらず…すっげぇ綺麗だ。
「ほら、入ろうぜ」
「…うん」
アキラが諦めたように髪を上に束ねだした。
その仕草がまた堪らなく色っぽい。
オレも脱いで、既に反応してる下半身を隠すようにタオルを腰に巻いた。
「あ…いい湯加減だよ」
「へ、へぇ…」
実はオレ、内風呂って初めてなんだけど……よくよく考えてみると、これってカップルにとって最高の風呂なんじゃねぇ?
一緒に入れるし。
他に誰もいないし。
景色はいいし。
温泉は気持ちいいし。
いちゃついて下さいって言われてるようなものだ。
「ア…アキラっ」
「ヒカル」
「なに?て、…は?ヒカル?」
「うん、ヒカル。僕も今夜だけヒカルって呼んでもいい?」
「い…いいけど。つーか、別に今夜だけじゃなくてもいいし…」
「ううん、とりあえず今夜だけでいい。今日は…特別な日だから」
「…オマエの誕生日だもんな。おめでとう」
「…ありがとう」
21年前の今日――アキラが生まれてきた。
塔矢先生と…明子さんの子供として。
不思議だよな。
だって先生と明子さんが出会わなかったら、アキラは生まれてないんだぜ?
もし、先生より先にオレの父さんが明子さんと出会ってたら……アキラは生まれてなかったのかもしれない。
もっと言うと、オレも生まれてなかった。
生まれてても、もし母さんが亡くならなかったら今頃オレらは兄妹じゃないし、明子さんのお腹の子もいなかった。
出会いって不思議、運命って不思議だ。
もし父さん達が再婚しなかったら……オレとアキラはまだただのライバルの関係を続けていたのかもしれない。
今、こうやって二人で温泉に来てることも……混浴してることもなかったのかも――
「アキラ……」
「ヒカル?」
アキラを…ぎゅっと抱きしめてみた。
「オレ…何か今すっげー運命に感謝してる。アキラに出会えてよかった…。オレらの出会いも…ちょっとした偶然だし」
―――もしあの時
囲碁サロンに足を運んでなかったら、オレはアキラに出会ってなかった―――
囲碁を続けてたらいずれは会う運命だったのかもしれないけど、アキラにあの衝撃を与えることはなかった。
「…キミに会えてよかったと僕も思ってるよ」
「ホント?」
「でないと…きっと僕はこんなに強くならなかった。キミのおかげだ」
「オレも…オマエのおかげでここまで来れた…」
自然とオレらは唇を合わせていた。
優しく啄みあって、今お互いが触れてる喜びを感じあった。
――いつまでお互いだけ?
とも思う。
いつまでこの関係を隠すつもりなんだろう。
オレらは何も悪いことしてないじゃん。
オープンにしたい。
皆に言いたい。
言いまくりたい。
認めてもらいたい。
いや、単に知っておいてほしいだけだ。
オレとアキラが愛し合ってるってことを―――
「……帰ったら、打ち明けようか」
「え…?」
「オレらのこと。親にも…ちゃんと知っててもらいたい」
「…そうだね。そうしようか…」
きっと祝福してくれる。
この時はそう思っていた―――
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