●My BROTHER, My SISTER 15●
「お母さん、実は14日にセミナーの手伝いが入ってしまって…」
「あら、残念だわ。じゃあアキラさんのお誕生日会は前日にしましょうか」
「あ、オレもそのセミナー呼ばれてマス」
「ヒカルさんもなのね。頑張ってね」
もうすぐ12月14日。
僕の誕生日。
この日はもう最初から二人で家を抜け出す計画を立てていた。
都内のイベントの手伝いはもちろん、泊まりがけのセミナーとか解説、出張指導碁もしょっちゅうある僕達だから、全く疑われてないようだった。
13日の夜に、進藤の誕生日の時と同じように皆で祝ってくれて、プレゼントもくれて。
14日の朝には二人揃って「行ってきます」と家を出た。
でも駅に着いた途端、化粧室でスーツから私服へと着替えて、必要のない荷物をコインロッカーに押し込んだ。
「よっし、完璧♪行くか、伊豆♪」
「うん!」
進藤の希望で、結局伊豆の温泉で一泊することにした僕ら。
部屋に内風呂も付いてる、少し高い部屋にしてみた。
もちろん費用は進藤持ち。
だって今日は僕の誕生日だからね。
思いっきり甘えてやろう!
「そういえばキミと温泉なんて初めてだね」
「えー?いっぱいあるじゃん。先月のイベントも有馬だったし」
「仕事は別。二人きりでっていう意味」
「…確かに。二人きりは初めてかもな」
楽しみ♪と進藤の左手が僕の右手を握ってきた。
「今夜も寝かせねーからな。覚悟しておけよ♪」
と耳元で囁かれる。
「…嫌。今日は僕の誕生日だから、夜の主導権も僕が握る」
「お、マジ?」
「僕のしたいようにさせて貰うよ。キミはただ寝転がっていればいいから」
「おお…マジマジ?何してくれんの?」
ちょっと楽しそうな進藤。
一体何を期待してるんだか。
でも、いつも進藤に流されてばかりの僕だから。
たまには立場逆転してもいいだろう?
僕らはライバル、僕らは同等なんだからね!
(今更?)
「お疲れ様でした」
少し観光名所を回った後で、僕らは旅館に到着した。
さっそくチェックイン。
部屋に案内された後、すぐに浴衣に着替えてみた。
「ん〜相変わらずオマエって浴衣似合うよなぁ♪すっげー色っぽい!」
直ぐさま口説こうと僕の肩に手を回してきた、彼の手をとりあえず除けて。
代わりに碁笥を手渡した。
「…もしかして碁、打つの?」
「ああ。さっきフロントで借りてきたんだ♪さ、握って♪」
「え??せっかく温泉に来たんだから、もっと楽しいことしようぜ〜混浴とか混浴とか混浴とかさ〜〜」
「今日は僕のしたいようにするって言っただろう?夕飯までは打つんだ!」
「えーーー…マジでー…」
しぶしぶ握らせた。
もちろん、僕もキミと早く重なりたいのは山々なんだけど。
でも、まだお昼の3時前なんだ。
今からそういうことしていたんじゃ体がもたない。
夕飯までは打って。
夕飯を食べてからも、もう少し打って。
それから温泉。
そのあとは…………
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