●My BROTHER, My SISTER 13●







「進藤!いい加減離れてくれ!」

「やだ。ギリギリまでアキラに抱き着いてる」

「本当にいい加減にしろ!あと、両親の前で僕のことを間違ってでもアキラって呼ばないように!」

「え〜〜」

「え〜、じゃない!」



両親が新婚旅行に出かけていたこの四日間で、僕と進藤の距離は劇的に縮んでいだ。

告白されて、付き合い始めて。

もう数えきれないくらいキスをして……セックスもして。


ちなみに、今も僕らは裸だったりする。


両親が羽田に着くのが16時。

そこから荷物を受けとってタクシーに乗って……の時間を全て計算すると、かなりやばい気がする。

もう帰ってくる頃だ。

なのに懲りずにまだ僕の胸を触ってる進藤。


「もういい加減にしろー!!」

と彼を突き飛ばした。


「一応僕らは兄妹なんだ!そこを弁えてくれ!」

「よく言うぜ。さっきまでお兄様のアレを咥えこんでアンアン喘いでたくせに」

「進藤っ!!」


床に落ちていた彼の服を投げつけてやった。


「さっさとキミも服を着ろ!」

「へーい」






ちょうど二人とも着替え終わったところで、玄関に車の着く音がした。

ギリギリ間一髪だ。





「ただいまー」

「お帰りなさい、お母さん、お父さん」

「ただいま、アキラさん、ヒカルさん。ちゃんと仲良くしていた?」

「え?う…ん、まぁまぁ…かな」


ちょっと動揺してる僕の様子を見て、進藤がプッと笑っていた。


「お帰り、父さん。北海道どうだった?涼しかった?」

「ああ、こっちよりはな」

「お土産は?」

「色々買ってきたぞ」

「やった♪」


早速お菓子類の箱だけ開けて、進藤はボリボリ食べ出していた。






「アキラさん。ちょっと」

「え?」


お母さんが僕を隣りの和室に手招きしてきた。

何だろう?


「来週、あの人が日本に帰ってきた時、アキラさんまた会う予定なんでしょう?このお土産渡しておいてくれないかしら」

「え…?お父さんに…ですか?」

「ええ。結婚のお祝いもいただいたから一応買ってきたの」

「………」


お父さん…とは、もちろん僕の実父。

母の前夫のことだ。


お祝いを贈った?

一体どういうつもりなんだろう。

母の結婚を本当に祝ってるのだろうか。

そんなわけない…よね?

一応義理で贈っただけだよね…?

















「お父さん!」

「アキラ、久しぶりだね。頑張ってるようだな」

「お父さんも…元気そうで何よりです」



翌週――僕は自分の生まれ育った塔矢家に足を運んだ。


久しぶりに見る父の顔。

前とさほど変わっていなかったけど……どことなく寂しそうだった。



「明子も元気か?進藤さんと上手くいってるのかな?」

「…これ、母から預かってきました。新婚旅行の…北海道のお土産です」

「そうか。ありがとう…と伝えておいてくれ」

「…はい」

「アキラも進藤君と仲良くやってるのか?」

「まぁ…何とか。棋士としては最高の環境を得たと思っています。彼と打つのは誰より勉強になるので…」

「いきなり兄妹になって複雑とは思うが、頑張りなさい」

「はい…。あの、もうすぐ僕に弟か妹が出来るんですよ」

「ああ、緒方君から聞いたよ。明子は喜んでいただろう?ずっと前からもう一人欲しいと言っていたからね」




……え?




「でも私は明子の願いを叶えてやれなかった。その辺りが敗因なのかもしれないな」

「敗因…?お父さんは、お母さんの結婚のことを本当はどう思ってるんですか?」

「もちろん祝福している。私はこれでも明子が好きだったからね。明子が幸せになってくれるのが一番だ。…私との結婚生活は彼女に溜め息ばかりつかせていたからね」



確かに…お母さんは今の方が離婚前より遥かに表情が明るい。

服のセンスも少し変わって、若返ってるみたいだった。



「アキラもいい恋愛をしなさい」

「お父さん…も」

「私は囲碁が恋人だ」

くす




今の両親には言えないけど、僕は父に進藤とのことを話してみた。

やっぱりな、と笑われる。


「そういえばアキラは昔から進藤君一筋だったな」

「へ、変な言い方しないで下さい!進藤の碁が気になってただけです!」

「そういうことにしておこうか」




でもいつの頃からか、彼自身も気になっていた。

ようやく手に入れた彼。

絶対離さない。

一生離さない。



だからキミも僕を離さないで―――


お父さんのように…離してしまわないで―――











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