●BEFORE&AFTER 5●






僕……?




いきなり告白されてしまって、恥ずかしさに僕の顔は真っ赤になってしまった。

進藤が好きなのがこの僕??

嘘。

本当に??


「…塔矢?大丈夫か…?」

「あ……うん」


どうしよう。

どう返事すればいい?

ありがとう…とかお礼を言っても仕方ないよね。

この場合、僕も好きか嫌いか、付き合うか付き合わないか…だよね。



「僕は……嫌いじゃないよ」

「マジ?じゃあ好き?」

「どちらかと言えば…」

「じゃあオレと付き合ってくれる?」

「………うん」


コクンと首を縦に振ると、喜びを表現するかのように僕を抱きしめてきた――


「やった…。すげ…嬉しい」

「………」


何だか夢みたいだな…。

進藤が僕のことを好きなのも、彼と付き合うことも…。

こうやって抱かれて、彼の体温や心臓の音を肌で感じてるのも全部……



「明日のお見合いパーティー、キャンセルしてくれよな」

「うん…奈瀬さんに断ってくる」

「よし」

「うん…、じゃあ……打とうか」

「―――え?」


この状況で碁を持ち出してくる僕に、進藤が目を丸くしてきた。

回されていた腕も解かれる。


「打つって……今から?」

「え?当然だろう?キミはその為に来たんだし」

「いや、確かにそうだけどさぁ…。いや?そうだっけ?オレ的にはただ告りにきただけのような気も…。碁はついでというか口実?」

とにかくもうちょっとこの雰囲気に長く浸っていたかった…とかブツブツ言ってくる。


「いいからっ!早く座ってくれ」

「分かったよ…」


はーーっ、と思いっきり溜め息を吐かれた。


だってだってだって、さっきの雰囲気だと付き合い出してほんの数分でキス…とかしちゃいそうだったし。

そのまま流されて押し倒されでもしたら抵抗出来ないよな…とか。

とりあえず一局打って頭を冷やしたい。

進藤の頭も冷やさないと。



「お願いしますっ」

「あー…はいはい。お願いしますっと」

「進藤!真面目に打たないなら帰ってもらうからな」

「…分かったって」


キリッといつもの真剣な目付きに戻った。


でも………どうしよう。

今夜、一緒の布団でなんか寝たら絶対に進藤は僕の体を求めてくるだろう。

付き合うのを承諾したのだから、それは覚悟の上ということになるのか?

というか合意の上?

そもそも僕は彼に抱かれるのが嫌なのか?

いや、嫌じゃないぞ?

付き合い始めたその日に…というのに少し躊躇してるんだ。

高校生じゃあるまいし、22にもなってそれはおかしいか?



「…おい。オマエも真剣に打てよ?」

「え?あ…分かってる」

「負けたら一緒に風呂に入ってもらうからな」


はい??


「あ、それいいな。賭け碁みたいですげぇやる気出る〜」

「なに勝手に…」

「嫌なら真剣に打てよ。本当にその石はそこでいいんですか、塔矢八段」

「え?あ…」


しまった……置き間違えた。


「楽しい夜になりそうだな〜こりゃ」


一気に顔中、体中が熱くなる気がした。


「ま…まだ序盤だ。巻き返しはいくらでも出来る」


いきなりお風呂だなんて、そんな恥ずかしいこと絶対に嫌だ。

セックスより嫌だ。



絶対に何がなんでも勝ってやる!!














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