●BEFORE&AFTER 4●
今夜――先生も明子さんもいない
もう夜だし、こんな時間に二人きりはまずいだろ…と最初は思ったが、明日パーティーだと聞いて当初の目的を思い出した。
そうだ、オレ告りに来たんだった。
両親がいない方がむしろ都合がいいじゃん。
「今日泊まってもいい?」
ちょっと突然過ぎたかな。
でも、泊まれば明日の朝まで時計一周分一緒にいられる。
それだけあれば打てるし告れるし、上手くいけば…出来るかも。
フラれたら、全部冗談にして一晩中やけ打ちしよう。
「進藤、客間で寝る?」
「は?」
「今夜打ちまくるんだろう?いつでも寝れるように先に布団敷いておいた方がいいと思って」
「や…敷かなくていいよ。ていうかマズイだろ。明子さんにオレを泊めたことバレるぞ」
「?別にもともと隠すつもりはないけど…」
「はあ??言っておくけどオレ男だぞ!泊めたなんて言ったら変に勘繰られるぞ」
「じゃあ…キミは寝ないつもりか?」
「雑魚寝でいいって言ってんだよ」
「雑魚寝…ね」
不満そうな顔してきた。
いいんだよ、男なんて雑魚寝で。
和谷ん家に泊まった時はいっつもそうだから慣れてるし。
「じゃあ……僕の布団使う?」
「…は?」
「いくらなんでもお客さんに雑魚寝は失礼だ。でもキミの言うことも一理ある。確かに母に見つかったら後々面倒だ。だから、僕の布団で寝ればいい」
「寝ればいい…って、オマエは…?」
「僕は雑魚寝は嫌だ。だから……」
頬を赤くほてらせてきた。
つられてオレも赤くなる。
「まさか…一緒に寝ろって?」
「詰めれば何とか…無理ではないかも」
「オレ、男なんだけど?」
「だから知ってるって…」
「襲っちゃうけどいい?」
「……ダメ」
いやいやいや。
ダメと言われても無理だって。
好きな奴がすぐ横に寝てて、大人しく寝れる男なんかいるわけがない。
「…キミ、好きな女の子がちゃんといるんだろう?それなのに僕を襲うだとか、軽いのにもほどがある」
「失礼だな、軽くねーよ。言っておくけどオレ、今まで誰とも付き合ってねーもん」
「…え?嘘…」
「今まで碁でいっぱいいっぱいで、そんなヒマなかったんだよ。でもやっと力付けて落ち着いてきて、好きな奴に告れるぐらい余裕が出来てきたのにさ、そいつお見合いパーティーに行くとか言いだすんだもん。冗談じゃねーよ」
「………え?」
「毎晩毎晩オレがどういう目的で通ってるのかも全然気付いてくれないし」
「………」
「確かに分かりにくすぎたかもしれねーけどさ…。今はもっと皆ストレートだもんな」
「進藤、それって…」
「もう分かっただろ?そうだよ、オレが好きなのはオマエなのっ」
10年越しの恋―――叶うといいな
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