●BEFORE&AFTER 2●
「なにがお見合いパーティーだ!ふざけんなっ!」
塔矢家からの帰り道、車の中で耐え切れず叫んでみた。
「…くそっ。人の気も知らないで…」
22になったオレは、昔から好きだった塔矢をそろそろ本気で手にいれようと思っていた。
だから、昔佐為から教わった求婚方式を実践してみていたんだ。
――男が女の人の家に通うのですよ――
佐為がいたのはもう何年も前だし、教わった記憶は途切れ途切れだけど、とにかく通えばいいらしい。
その前に文がどうとか言ってたな…てことで、行く前には必ずメールしてる。
『今から行ってもいい?』
『いいよ』
とすぐ返事が返ってくるから、脈なしではなさそう??
三日三晩通ったら結婚成立とか言ってたけど、それは現代では通用しないよな…。
というか初日から朝帰りとかアイツ言ってたような気が………
あー!もっと詳しく聞いておけばよかった!!
とりあえず親もいることだし、大人しく夜7時訪問〜11時帰宅を最近繰り返してる。
それなのに、それなのに、アイツが見合いパーティーで男作ったら意味ねーじゃん!
あーー…なんかもう現代の知恵に古代の習わしが負けた気分……
ったく、夜を空ける為にオレがどれだけスケジュール調整に苦労してると思ってんだよ…。
やっぱり普通に告った方が早かったのかな…。
昔と今は違うもんな……
「奈瀬、一生恨んでやるからな」
次の日―――偶然棋院のエレベーターで出くわした奈瀬に、我慢出来ず口走ってしまった。
「あら、もたもたしてる進藤が悪いんじゃない。私はずっとフリーで可哀相な塔矢を誘っただけよ?何か問題ある?」
「……く」
「あの子美人だし、きっとパーティーでモテるわよ〜」
キャハハと上機嫌でエレベーターを下りていった。
美人だし美人だし美人だし…
モテるわよモテるわよモテるわよ……
嫌味な台詞が頭の中でぐるぐる回る……
ダメだ!
ダメだ!!
やっぱり塔矢を行かせちゃダメだー!
直ぐさまポケットから携帯を取り出しメールする。
『今夜も行くから』
いつもの行ってもいい?じゃなくてもう断定系。
すぐに返ってきたアイツからのメールを開くと
『分かった』
と一言。
よし、もう何がなんでも今夜告ろう。
手に入れよう。
塔矢はオレのものだ。
絶対に他の男になんか渡さない。
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