●SAVING TABOO 〜番外編A〜 2●
「かおる!?」
いきなり立ち上がって部室から飛び出した。
必死に追ってくる遥。
私が向かったのは一年生の教室が並ぶ本館一階の靴箱前。
ここに全クラス全員の名前が張り出されてる。
進藤…進藤洋人…進藤――
「…あった!」
本当にいた。
1年E組10番、進藤洋人。
「もぉーかおる超速過ぎー。陸上部の方があってるんじゃない?」
「遥、見て。いた」
「誰?」
「進藤洋人」
「……?誰よ?」
「会ってみれば分かるよ」
「は?」
その1年E組に向かった。
教室内をグルッと一周見渡すと―――勝手に目が止まった。
「……いた」
「進藤君?どれどれ」
窓際で女の子数人と楽しそうに話してる男の子。
間違えるわけがない。
パパにそっくりだ―――
「ちょっ…かおる、あんたにそっくり…」
私も洋人君も父親似。
性別や髪形は違えど、当然私と洋人君も同じ顔なのは予測出来てた。
まさかここまでそっくりに成長してるとは思わなかったけど……
「かおる!?」
ずかずかと教室に入っていき、一直線に洋人君の元へと向かった。
途中で私に気付いた彼が大きく目を見開く――
「久しぶり…洋人君」
「………かおるちゃん?」
「私のこと、覚えてる?」
「うん…忘れるわけない」
「パパ…元気?」
「……うん」
「そう。じゃあお願いがあるの」
「え?」
「一緒に囲碁部に入ってよ。私に碁を教えて」
「囲碁部?」
「断れるわけないよね?私の大事な人…奪ったんだから」
「………」
もちろん洋人君のせいじゃないってことは分かってる。
親の都合。
親のせい。
元はと言えばパパの浮気のせい。
でも、許さない。
許せないの。
私のパパがコイツの側にいるのは事実だから―――
「…いいよ。入る」
「そうこなくっちゃ」
「…あかりおばさん元気?」
「パパから聞いてない?私ね、藤崎から七井に苗字変わったの」
「え?」
「ママ再婚したってこと。だからもちろん元気だよ」
「そう…よかった」
「…何よ、洋人君はこっちのこと何も知らないのね。私は洋人君に妹が出来たことも弟が出来たことも全部知ってる。全部ママが教えてくれた。それなのにそっちは……どうせ興味ないんでしょ?自分達が幸せならそれでいいのよね!」
「ちょ…かおる、あんた言い過ぎ」
「うるさい!私はコイツに言いたいことが山ほどあるの!ムカつく…マジムカつくっ」
遥が止めるのも無視して、言いたいことを言いまくった。
止まらなかった。
クラス中に注目されても気にならなかった。
最後は泣きながら叫んでた。
返して…って―――
「…落ち着いた?」
「うん……ごめん」
洋人君に教室から連れ出されて、駅近くのマックに来た。
感情が納まると次は羞恥が襲ってくる。
「場所…選べばよかった。私もうE組に恥ずかしくて行けないよ…」
「俺も…」
「どうしよ…体育合同なのに」
「かおるちゃん、F組なんだ?」
「うん…隣」
洋人君が嬉しそうに目を細めてきた。
「…私のこと呆れたでしょ?入学早々嫌な思いさせて…」
「え?全然。だって悪いのは俺の両親だし。そんなことより、かおるちゃんにまた会えて嬉しい…」
そっと手を握られて、微笑まれた。
ドキッと胸の中の何かが反応する。
……さっき、どうして洋人君が女の子達に囲まれてたのか分かる気がする。
というか洋人君、もしかして女ったらしに成長してる??
「…うちに遊びに来る?」
「え?」
「父さん…かおるちゃんに会いたがってたから喜ぶと思う」
「パパ…私に会いたがってた?」
「うん」
―――嬉しい―――
「部活なんか入らなくても、俺が家で碁教えてあげるよ。家族全員碁打てるしな」
「いいの…かな」
「いいに決まってるだろ。拒否なんかさせねーし。俺も両親にはムカついてるんだ、俺とかおるちゃんの仲裂きやがって」
「やだ、洋人君ったら」
「行こう?」
「うん…じゃあ行ってみようかな」
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