●SAVING TABOO 〜番外編A〜 3●
「ただいまー」
ついにやってきた進藤家。
洋人君に誘われるがままに上がらせてもらった。
「パパ…今いるの?」
「うん、たぶん和室。オフの日はいつも棋譜並べしてるから」
ドキドキしながらその和室へ向かった。
「父さん、ただいま」
「お帰り〜」
碁盤から顔を上げたパパ。
私の姿を見て――パパが固まった。
「紹介するよ、オレの彼女」
思わずプッと吹き出しそうになった。
「…かおる?」
「うん。久しぶり、パパ」
「かおる…!」
直ぐさま駆け寄って、私をぎゅっと抱きしめてくれた。
嬉しい。
懐かしいパパの匂い…温かさ。
ずっとこうしてほしかった――
「大きくなったな…。会いたかった」
「うん…」
「お姉ちゃんとお兄ちゃんも元気か?」
「うん。お姉ちゃんは関西の大学行っちゃったからなかなか帰ってこないけど」
「そっか…早いな。かおるももう中学生だもんな」
「洋人君の隣のクラスなんだ」
「よかったな」
「うん」
やっぱりやっぱり、直に話すと全然違う。
嬉しさで怒りなんかどこかにいっちゃう。
今でもやっぱり大好きな私の自慢のパパだ―――
「今日はね、碁を洋人君に教わりに来たの」
「オレが教えてやろうか?」
「ダメダメ、俺が教えるんだから。じゃ、かおるちゃん俺の部屋に行こう」
腕を掴まれてパパからグイッと引き離された。
「仕方ない…後でお茶持っていくな」
「ありがとう、パパ」
二階の階段上がってすぐ右の、洋人君の部屋。
ベッドに座らせてもらって、はぁ…と余韻に浸った。
「まだドキドキしてる…」
「どうだった?久しぶりに会った父親は」
「すっごく嬉しい。連れてきてくれてありがとう、洋人君」
「よかった。俺もかおるちゃんが笑ってくれると嬉しい」
洋人君も私のすぐ横に腰掛けてきた。
肩に手を回されて――引き寄せられる。
「洋人君…?」
「俺、昔本当にかおるちゃんが好きだった」
「私も。よく将来結婚しようって言ってたね」
「…実は姉弟だって聞かされた時、本気でショック受けたよ。両親が死ぬほど憎かった。浮気してたなんて信じらんねぇ」
「……」
もう遠い記憶でしかないけど、お互いの家族が仲良く過ごしてたあの数年間。
全部偽りの幸せだったんだと思うと…寂しいし悲しい。
「俺…親に一度そのことであたったことがある」
「え…」
「あの母さんに泣かれて…さ、不妊ですげぇ悩んでたんだって」
「不妊?」
「何年も子供が出来なくて……父さんに協力してもらったって」
「そうだったんだ…」
「父さんは父さんで自分の優柔不断さを責めてた。ずっと過去を悔やんでた」
「……」
「びっくりだよな。俺、それまで単に二人が軽い気持ちで浮気して…俺が産まれたんだと思ってたから」
「パパは…そんな人じゃない。アキラおばさんなんて絶対違う」
「うん…俺が生まれて色んな人が救われたって。死んだ最初の父親もそうだったらしい」
「よかったね。本当のことが分かって」
「うーん、でも俺とかおるちゃんが結婚出来ないってことは、どうあがいたって変わらないしなぁ〜」
「もー男なら潔く諦めなさい。いいじゃない、姉弟の方が切っても切れない関係だし」
「はぁ…分かった」
つい今朝まで、私からパパを奪った洋人君が憎かった。
でも今は違う気がした。
奪われたんじゃない。
パパは二人のパパなんだ。
繋がりが増えたんだ―――
コンコン
「かおる〜洋人〜、ジュースとケーキ持ってきたぞ〜」
「はーい」
「あれ?まだ碁盤も出してないじゃん」
「ちょっと話してたんだよ。ちゃんと教えるから、父さんは邪魔しないでよ」
「はいはい」
「パパ、打てるようになったらかおると打ってね」
「おう!」
その晩―――ママにちゃんと事情を話して、進藤家に出入りする了解をもらった。
ママも今は本当の運命の人に出会えたからか、パパの名前を出しても嫌な顔をしなくなった。
毎日部活代わりに進藤家に立ち寄って、洋人君やパパや時にはアキラおばさんにも打ってもらって。
まるで家族が二つに増えたみたいですごく嬉しかった。
「洋人君。私に彼氏が出来るまで、彼女作らないでね」
「お。やきもち?」
「でないと私…今度は彼女憎んじゃいそうだもん」
「心配しなくても、しばらく碁に集中するつもりだから大丈夫」
「頑張ってね、プロ試験」
「うん」
パパもママも洋人君も、今は皆側にいる。
私、今幸せです―――
―END―
以上、もう一つの番外編でした〜。
やった!上手くまとまった!皆が幸せのハッピーエンドだ!きゃっほーい(笑)
えー…ヒカルとアキラがほとんど出てこない完全オリジナルキャラ話でしたが……いかがでしたでしょうか?
え?つまんない?ごめんなさい…(ほとんど自己満足の世界…)
この番外編Aも途中まで書いててずっと放置してたんですが、今回無事完結出来ました。
やきもちやきなかおる嬢。
次は洋人君の彼女にかな〜?
ちなみにアキラママは3人の子持ちらしいです。
本編の後半で2人目妊娠してましたが…3人目もですか、そうですか。
ヒカル君、遺伝上では6人のパパですねー。わぁ…すごぉい…(遠い目)
あと、なんかね、娘には慕われてても、息子には多少ウザがられてる父親・ヒカルって面白いよね…なんて。
やっぱりハッピーエンドが一番ってことで。。。