●SAVING TABOO 〜番外編A〜 ●
「…進藤?」
固まってしまったオレの顔を、アキラが心配そうに覗きこんできた。
「大丈夫か?」
「………大丈夫なわけ…ねーじゃん」
「え…?え………あ―――」
いきなり体を引き寄せられて――抱きしめられたことに、アキラが目を大きく開いて驚く。
「ん――…」
そのままキスをして……オレは無我夢中に唇を貪った。
オレになすがままのアキラ。
オレらの様子を見てキャアっと悲鳴か歓声かよく分からない声をあげる市河さん。
若さんに何しやがるんだ!って怒る北島さん。
なんだっていい。
これが夢だろうとタイムスリップだろうと、そんなこと…どうだっていい。
今度は…
今度こそは失敗しない。
何がなんでもアキラを手にいれる。
「――…ぁ…は…ぁ」
唇が離れた後、頬を赤めてオレを見つめるアキラを…更にきつく抱きしめた――
「やめろよ…結婚なんて」
「え…?」
「オレ…ずっとオマエのことが好きだった。するならオレと結婚してよ…」
「進藤…」
いきなりの告白とプロポーズに驚きを隠せないんだろう。
真っ赤になりながら、どうでもいい反論をしてくる。
「でも…もう結納終わっちゃった」
「結納だろ?結婚したわけじゃねーじゃん」
「後援会の紹介なんだ…」
「だから何?後援会の言いなりになってんじゃねーよ。オマエの人生だろ?」
「父も母も喜んでるし…」
「オレが相手の方が喜ぶって」
「そうかも…でも…こんないきなり…」
「今じゃなきゃいつ言うんだよ」
「でも…」
「搭矢」
頭が混乱してる彼女の口にもう一度そっとキスをして――目をじっと見つめた。
「好きだ…。オレと結婚しよう…?」
「…うん」
あっさりと首を縦に振ってくれた。
最高に可愛い笑顔で―――
…んだよ。
すげー簡単なことだったんじゃん。
何で最初のオレはこんなことに渋ったんだろ。
このアキラの笑顔…見せてやりたいぐらいだぜ。
「僕も…好きだった」
「ホント?搭矢…」
「うん…。すごく嬉しいよ…」
「オレも…――」
あっという間のアキラの婚約解消。
代わりにオレが搭矢先生や明子さんに挨拶に行き、結婚の許しをもらった。
「いつしよっか?」
「キミが本因坊のタイトル取れたらね」
……そうでした。
この時のオレってまだ無冠じゃん。
つーか、棋力…14年後のままだぜ?
この時の倉田さんなんて余裕で一刀両断出来そうな気がするんだけど。
いいのかなぁ…?
いいよな!
どっちみちタイトルは奪取しちゃう予定だし!
「じゃあさ〜、今夜Aホテルで食事しねぇ?」
「別にいいけど…」
「服なんだけどさ、黒のワンピース着てきてほしいな〜なんて」
「は?」
「この前の和谷の結婚式の時のやつとかでいいからさ」
「別にいいけど…」
「よし!決まりな!んじゃ夜の7時に予約入れとくから、ロビーで待ち合わせな!」
「ああ…」
レストランのついでに部屋も予約するオレ。
ダメもとで
「2015空いてますか?」
って聞いたら運よく空いてたり。
アキラ、知ってる?
ここ…前はオマエが用意したホテルなんだぜ?
初めて結ばれた部屋。
あの時も嬉しかったけど、同時に罪悪感でいっぱいだった。
でも今度は違う。
朝まで一緒にいような。
子作り…じゃなくて、エッチを純粋に楽しもうな――
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