●SAVING TABOO 〜番外編@〜 ●
――あの22の春にまで戻れたらいいのに――
アキラと上手くいっても結婚出来ても子供が生まれても、それでも何度もそう思った。
色んな人を傷つけたし、これからも傷つけていくと思う。
もしオレがあの時素直に自分の気持ちを伝えていたら――
自分に正直になっていたら――
悔やんでも悔やみ切れない過去。
全部…夢だったらいいのにって―――
「――ん…眩し…」
朝日で目が覚めて、何だかけだるい体をゆっくりと起こした。
「何時…だろ」
サイドデスクの時計を見た。
「あれ…?」
時計がない。
つーか、サイドデスクもない。
まだ今にも眠りだしそうな意識をハッキリさせる為に、目を擦りながら顔を振った。
ゆっくりと大きく目を開ける――
「…どこだ?ここ…」
寝室じゃない。
でも……見覚えがある。
この部屋…、確か独身の時に一人暮ししてた部屋だ。
何で……
ピッ
「おはようございます。4月21日火曜日、今朝の――」
取りあえずテレビをつけてみた。
運よくちょうど始まったニュース。
あれ?
このアナウンサーって何年か前に寿退社しなかったか?
いや、そんなことどーでもいいや。
今日は4月21日………うん、合ってる。
あれ?でも火曜だったか?
昨日手合いあったぜ?
何だかよく分からないまま風呂場に向かった。
つーか…アキラどこだ?
洋人もいないし…。
取りあえず朝一の習慣で歯磨きを始める。
ぼーっと鏡を眺めながら……
「…………」
あれ…?
「℃☆£≧÷〆〇♀Å√ ??!」
何だこれ!!
オレの顔じゃねー!!
いや、オレの顔だけど…だけどだけど……
「若…い?」
見た目ハタチそこそこに見えるんですけど……!!
バンッ!
慌てて風呂場から出たオレは、急いでどこかにあるはずの携帯を探した。
「あった!…て、分厚っ!いつのやつだよ…」
まぁそんなことはいいとして、電話帳電話帳…
和谷和谷…
プルルルル
プルルルル
『…はい?何だよ進藤、朝っぱらからー』
なんか和谷の声も若いような…
「和谷!今日って何年の4月21日だっけ!?」
『はぁ?2009年に決まってんじゃん』
「に…っ――」
2009?!
嘘…だろ??
『用はそれだけか?切るぜ』
切られた携帯を呆然と握りしめたまま突っ立ってしまった。
ありえない…し。
「2009…14年…前?」
てことはオレ…22歳か…?
一瞬ズキンと胸が痛んだ。
…そうだよ。
22歳の4月って確か――
♪〜〜♪〜♪〜〜♪
「…メール?」
届いた一通のメール。
送り主は……アキラ!?
慌てて開く――
『今日ヒマ?囲碁サロンで打たない?』
ヒマ?
ヒマなのかな…オレ。
14年前の予定なんて当たり前だけど覚えてない。
だけど……なぜかハッキリ覚えてる。
確かオレ…このメールで碁会所に呼び出されたんだ…
で、何局か打って……そのあと―――
「僕ね、今度結婚するんだよ」
再び面と向かって言われた衝撃的な一言。
そうだよ。
忘れもしない14年前の4月21日。
この日から、この一言から全てがおかしくなったんだ―――
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