●ARRANGED MARRIAGE 1●
<お見合い?何ですかそれは>
「うーん、一種の出会い提供の場かな。結婚相手を紹介してくれるんだよ」
<ヒカル…結婚したいのですか?>
「したくねーよっ!だってオレ…」
<彼女いましたよね?>
「そうなんだよ〜〜〜!」
都内でも指折りの高級老舗ホテル。
オレは今、母親に連れられて仕事でもないのにスーツまで着せられて、こんな場違いな場所にきていた。
「まさかあんたにお見合い話がくるなんてねぇ…」
母さんもビックリだろうけど、オレだってビックリだ。
父さんの会社の取引先の社長の知り合いの娘……が今日の見合い相手らしい。
歳はオレより一つ下の22歳。
写真は興味ないから見てないけど、22で見合いなんて今どきありえない。
きっと相手も断れなくて嫌々に決まってる。
会うだけ会って、さっさと帰ろう。
貴重な日曜日をこんなことで潰したくない……ぜ…
「………」
見合いする部屋に着くと、一番にその見合い相手が目に入り――言葉を失った。
予想と違った。
高そうで上品な着物を来た彼女はまるで日本人形。
育ちが良さそうで頭がよさそうで、美人で綺麗でオレになんか絶対勿体ない。
「今日はよろしくお願いします」
周りが挨拶してる間、俺はずっと彼女に釘付けだった。
<ヒカル、一目惚れって顔してますよ?>
うるせー。
隣でクスクス笑いながら茶化す佐為をひと睨みして、また彼女に視線を戻した。
まさか見合い相手がこんなに美人でオレ好みだとは思わなかった。
断るの…勿体ないかも。
いやいや、彼女いるくせに何考えてんだオレ。
でもなぁ……
「こちらが進藤ヒカルさんとお母様の美津子さんです」
「塔矢アキラです。よろしくお願いします」
微笑みながら挨拶してきた彼女の声は意外にも低い。
というか、前にも聞いたことあるような…ないような…
「アキラさんはプロの囲碁棋士ですのよ」
「囲碁?」
<囲碁?>
オレと佐為は同時に顔を見合わせた。
塔矢…アキラ。
塔矢…?
まさか―――
「あの、四冠の塔矢名人てまさか…」
「父です」
「!!」
<ヒカル!ヒカル!結婚して下さい!あの者と打つ機会がもてるかもしれません!>
オマエな…人事だと思って…。
隣で勝手に大はしゃぎしてる佐為は元は平安一・江戸一の打ち手。
そして今目の前にいる彼女は今ナンバー1の打ち手・塔矢行洋名人の娘。
これは偶然か?
運命か?
それとも…――
「…やっと見つけた。進藤ヒカル…」
「え…?」
「覚えてますか?僕と、もう一度打って下さい」
これがオレとアキラの再会。
初めての出会いは一ヶ月前に遡ることになる―――
NEXT