●APRIL FOOL 1●
4月1日―――エイプリルフール
嘘をついても許される日。
オフだった今日、僕は家でゴロゴロしながらどんな嘘をつこうか考えていた。
ターゲットはやっぱり進藤かな。
彼も今日はオフなはず。
嘘の内容のメールでも送って驚かせてやろう。
『好き』
と珍しく絵文字まで使って送信した。
はは。
今頃どんな顔をしてるんだろう。
驚いてるかな?
それともエイプリルフールってことに彼も気付いてるのかな?
すぐに返ってきたメールを開けてみると―――
『マジ?オレも!』
と書いてあった。
「………」
これは…………どう反応したらいいのだろう。
嘘でも頬が少し赤くなった。
いやいやいや。
彼が僕のことを好きなわけないから
(たしか今も彼女いたはずだし)
僕の冗談に彼は付き合ってくれてるんだろう。
それじゃあ……
『付き合ってくれる?』
『喜んで!今からデートしようぜ♪オマエも休みだろ?』
『うん。でも雨だから、僕の家に来てもらってもいい?』
『塔矢ん家でデート?先生いる?』
『いないよ』
『じゃあ行くー♪待ってて』
て、まさか本当に来るわけないよな?
待つこと30分。
ピンポーンと玄関のベルがなった。
「塔矢ーーっ!!」
といきなり抱き着かれた。
「オレマジ嬉しいんだけど!」
「え?あ…いや」
「オマエから告られるなんて夢みてー」
夢じゃなくて、嘘だから………なんて言えない。
「塔矢…」
いきなり顔が近づいてきてぎょっとなった。
慌てて顔を背けてガードする。
「し、進藤、僕らの間ではほら、やっぱりデートと言ったら囲碁デートだと思うんだよ。打とう?」
「えー…せっかく恋人同士になったんだからさー、もっと色っぽいことしようぜー」
「なに…それ」
「言わなくてもわかるだろ〜?親がいない時に男を家に誘ったんだからさ、普通OKって意味だよな?」
「な…っ!僕はただ―――ん…っ」
あっという間に奪われた唇。
ファーストキスだったのに……とショックで頭が真っ白になった。
放心状態の僕を進藤が部屋に引っ張っていく――
「よいしょっと」
と、ご機嫌に布団まで敷かれてしまった。
「進藤…その…」
「ん?」
「すまない。今日はエイプリルフールだろう…?だから…」
「うん。エイプリルフールだからさ、どんなに嫌がっても嘘にしか聞こえない」
「え…?」
「今更オレのこと何とも思ってないって言っても遅いってこと。オレにとって不利になることは全部嘘だと思うからな」
「………」
「ま、日付が変わったらいくらでも文句聞いてやるからさ、それまで恋人ごっこ楽しもうぜ」
冗談じゃない!と叫びたかった口は再びキスで塞がれ―――布団の上に倒された。
くそっ……しくじった。
失敗した。
嵌められた。
やっぱり最初から進藤は嘘だって分かってたんだ。
仕掛けた僕も悪いけど、でも、こんなのあんまりだ。
「………ぁっ…」
そう思うのに、大人しく彼の下で喘いでしまったのはなぜだろう。
初めてだった僕を気遣って、丁寧で優しく抱いてくれたから?
彼の嘘で甘い
「好きだ…」
という台詞のせい?
少し…嬉しくて胸がときめいた。
いつもは囲碁の話以外しない僕らなのに不思議だね。
今までで一番進藤が近くに感じる。
結局裸で抱き合ったままで終わったエイプリルフール。
日付が変わった瞬間に、僕は彼をひっぱたいた―――
NEXT