●AKIRA 3●
ファッション誌を読んだ僕は絶望した。
こんなメイク…僕には出来ない。
こんな服…着こなせるわけがない。
秋羅さんのモデル写真を見れば見るほど落ち込んできた……
ブーブーブー
携帯のバイブが鳴ったので、重い体を起こして手に取った。
メールの着信だ………しかも進藤から。
『今から会える?』
…だって。
会えるわけないよ。
服もメイクも全部いつものまま。
キミに見向きもされない姿だもの。
どう返信しようと迷っていたら―――今度は電話の着信。
仕方なく通話ボタンを押す…
『あ、塔矢?ごめん…返事待ってられなくて』
「すまない…今はその…」
『会えない?何か用事?』
「…そうじゃないんだけど…」
『今から塔矢ん家…行ってもいい?』
「え??ダメ!だって服が……メイクも…」
『は?あー…もしかして寝起きだった?まだパジャマとか?』
「え?いや…そういうわけでは…」
『いいよ何でも。パジャマだろうが素っ裸だろうが、とにかくすぐ行くから』
「素っ…て――」
一方的に通話を切られた。
パジャマはともかく、いくらなんでも素っ裸はないだろう…。
僕の格好なんて何でもいいのか?
興味なし?
ショックで茫然としていると、すぐに玄関先に車が止まる音が聞こえた。
ピンポーン
「早っ!本当にすぐだな……もう」
仕方なくいつもの格好で出迎えることにした。
「進藤…」
「なーんだ、オマエのパジャマ姿が拝めると思って急いで来たのに、着替えてんじゃん」
「そんなわけないだろう…もうお昼だ」
「上がってもいい?」
「……うん」
居間に通した後で、机に例の雑誌を置きっぱなしだったことに気付いた。
慌てて隠す――
「塔矢…今の」
「え?はは…ちょっと、興味あって。キミの彼女の秋羅さんがどんな女性なのか…」
「ふーん…」
「素敵な人だね。僕とは…大違いだ」
「うん。オレにはオマエの方が合ってる」
「そうだよね、キミには僕の方が…………え?」
聞き間違い?と進藤の方を向くと、頬を赤くした彼と目が合った。
「オレ……塔矢が好きだ。今日はそれを言いに来たんだ」
「え?だって…秋羅さんは…?」
「秋羅と付き合って…分かったんだ。オレ、色んなところで塔矢とアイツを重ねてた。ううん、そもそも塔矢と同じ名前だったから興味持ったんだ」
「…別れたの?」
「うん…。アイツも気付いてたみたい。さっさと行ってこいって言われた…」
「………」
進藤が僕に近づいてきた。
と思ったらそのまま腕が伸びてきて―――抱きしめられる。
「好きだ…塔矢。オレと付き合って」
「でも僕…地味だし…ダサいし…スッピンだし……秋羅さんに全然敵わない女だよ…?」
「いいんだよ、オマエはオマエで。塔矢にそんなこと求めてないし……つーか、オマエは今のままが一番なんだ」
「でも…もう少し服とか勉強したい。今のままだとさすがにちょっと…」
「じゃあ一緒に買いに行こう。いっぱいデートしよう、塔矢」
「……うん」
進藤の顔が近づいてきて―――キスされた。
僕のファーストキス…。
ねぇ…進藤。
いつか僕のことも名前で呼んでくれる?
キミの中の『あきら』は僕だけでありたい―――
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