●AGAIN +7●
――今日も出来ない――
また拒否られてオレの下半身は破裂しそうだった。
やっぱり松澤さんとしておけばよかった…と一瞬後悔したり。
あの晩―――
『お相手しましょうか?』
と誘われたオレは、文字通りお相手してもらった。
もちろん囲碁で、だ。
やっぱり夜の相手をしてもらうべきだったのか………なーんて。
んなことしたらバレたら最後、塔矢に殺されるな。
「ふ…ふ…ふえぇ」
今までご機嫌だった塔矢の弟がいきなり泣き出した。
「ええ??どうしたんだ急に…」
オロオロするオレの横から素早く塔矢が赤ん坊を抱き抱えた――
「ミルクかな?おシメかな?」
チラッとオレの方を見た塔矢。
「進藤、絶対に覗くなよ」
「え?」
「返事は?」
「あ…うん。分かった」
ピシャリと襖を閉め、隣の部屋に行ってしまった。
ミルクをやるか、おシメを換えるだけなのに、どうしてオレは入っちゃいけないんだろう。
しかも弟だろ?
男だろ?
見ても問題ない気が…。
というか………覗くなと言われたら覗きたくなるのが男の性だ。
そお……っと5ミリだけ襖を開けてみた。
―――え?
目に入ってきたのは……塔矢が弟にミルクを飲ませている姿だった。
しかも哺乳瓶じゃない。
自分の胸で…!
すげーすげーアイツ母乳出るんだ。
あー…そりゃあこの格好をオレに見られるの恥ずかしいよな。
胸丸出しだもんな。
納得して、襖を再び閉めた。
「ごめん。お待たせ」
「ん?いや」
10分後―――塔矢が隣から出てきた。
弟は食事の後だからか、スヤスヤと眠ってしまったみたいだ。
「僕の部屋で寝かせてくる」
「おう」
戻ってきた後、一局打つことにしたオレら。
でも………集中出来ない。
さっきの胸の残像がオレの頭にうつる。
いいな……オレもあんな風に塔矢の胸に吸い付きたいな…。
美味しいのかな?
一体どんな味がするんだろう。
もうそれしか考えられなくて、碁盤と胸を交互にチラチラ見てしまった。
「…進藤」
「え?」
「本因坊の挑戦者とは思えないお粗末な手だな」
「ご…ごめん。ちょっと胸が邪魔して…」
「胸?」
「や…何でもない」
「……?」
少し考えた塔矢はハッと顔を上げたと思うと、一気に血の気が引いていっていた。
「まさか………見た?」
「え…っと」
「信じられない…」
怒りに震えた彼女は、半泣きになって碁石をオレに向かって投げ付けてきた。
「いてっ!こら、やめろって!いいじゃん減るもんじゃないしっ」
「帰って!帰れーー!!」
「分かったって!お邪魔しましたーっ」
しぶしぶ塔矢家を後にしながら、どうしても腑に落ちないオレ。
いいじゃん…胸ぐらい。
やっぱ生理中だからか?
ヒステリックになってたのかな…。
「和谷〜打とうぜー」
まだ帰るには早い昼の3時。
和谷ん家で打つことにした。
「あれ?今日は塔矢と打つとか言ってなかったか?」
「追い出された」
「はは…何やらかしたんだよお前」
そういえば……和谷って確か彼女いたよな?
ちょっと恥ずかしいけど、聞いてみようかな…。
「…和谷はさ、彼女とエッチ…したことある?」
「は?そりゃあ…」
「胸ってさ、どんな味?」
「味?別に…」
「美味しい?」
「は?」
意味が分からないという顔をする和谷。
「飲んだことないの?母乳」
「ぼっ…?!あるわけないだろっ!」
……え?
「和谷って彼女の胸吸ったりしないんだ?」
「いや、吸うけど、母乳なんて出てくるわけないって」
―――え?
「あれは子供を産んだ直後の人しか出ないの」
「………マジ?」
「おいおい常識だぞ…」
子供を産んだ…?
じゃあ……さっき見たあれは一体なんだ?
塔矢だって子供なんか………
「………」
「進藤?大丈夫か?」
もし、もしも仮に…あの弟を産んだのが塔矢だったとしたら……納得がいく。
でも、その場合…塔矢が男とセックスしたってことだよな?
誰と?
えーとえーと確か弟が産まれたのは1月。
単純計算で3月か4月ぐらい?
あ、よかった。
オレだ。
オレが塔矢を犯ったの、3月のだもん。
―――――て。
ええっ??
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