●AGAIN +5●
塔矢との初デートから2日後―――オレは本因坊戦の為に沖縄に来ていた。
我ながら気持ちの切り替えのよさには驚くばかりで、一日目は割りかしいい流れで終わった。
でも夜になると―――不完全燃焼で終わったオレの体が熱くなってくる。
「………くそっ」
頭を冷やす為に部屋を出た。
桑原のじーちゃんはもう寝ちゃったのかな。
寝るの早そうだしな…。
立会人の岡崎九段はどうかな…。
誰かと話せたら……落ち着きそうなんだけど……
「…あれ?進藤さん?」
「え…?」
呼ばれて振り返ると―――松澤さんがいた。
「なんでここに…」
「ジュース買おうかと思いまして」
「いや、そうじゃなくてなんで沖縄に…」
「やだ、私本因坊戦の解説の聞き手ですよ。知らなかったんですか?」
「全然…」
ちょっとショックそうな彼女の顔。
それにしても………浴衣、よく似合ってるな。
胸とか腰とか尻とか、この前見た塔矢のと比べてしまう。
若干塔矢の勝ちか?
でも最近の16才って成長早いよなーなんて。
「少し話しませんか?何だか寝れなくて」
「あ。オレも」
「私の部屋、すぐそこなんです。ちゃんと碁盤もありますから」
「ふーん…じゃあお邪魔しようかな」
オレも飲み物を買って、彼女の部屋で話すことにした。
いつの間にか検討に変わっていて、彼女の女流本因坊戦の三番勝負について、ここがよかった悪かった、でも今のままじゃ塔矢が復帰したら瞬殺されるぞと脅したり。
「私、塔矢アキラに憧れて棋士になろうと思ったんです」
「あ。そうなの?」
「だから瞬殺されるのって本望かも。早く復帰してくれないかな〜」
「変わってるな…松澤さんて」
「進藤さんて塔矢さんと付き合ってるんですか?」
「ん?まぁ…」
「すごい!ステキ!いいなぁ…」
いいなぁ…って何が?
「私も頑張って進藤さんみたいな彼氏見つけます」
「はは…やめておいた方がいいと思うけど」
「謙遜。進藤さんみたいに格好よくて碁も強い人、そうそういませんよ?」
「でもオレ、人としてダメダメだから」
「少々ダメな方が母性本能擽っていいと思います」
「松澤さんてオレに興味あるの?」
「全然」
………おい。
「でも、塔矢さんの彼氏っていう意味では興味あります」
「……は?」
彼女が立ち上がって………オレのすぐ横に座った。
胡座かいてるふとももに…手なんか置いちゃったり。
微妙に…近いから、反応するんですけど。
「私と進藤さんが関係持っちゃったら……塔矢さんどんな顔すると思います?」
「確実に殺されるな。オレが」
「でも進藤さん…、さっきから私の胸ばっかり見てる」
「………」
「塔矢さんと上手くいってるんですか?」
「いってる…と思う」
「ふぅん…」
この前は拒まれた?けど、今度は上手くやるし。
それ以外では順調だし…。
「欲求不満…て顔に書いてますよ?さっき、会った時からそう」
ギク…
「お相手しましょうか?」
「………」
NEXT