●AGAIN 9●
合宿一日目の夜――オレは社と客室で眠ることになった
「にしてもさっきは驚いたわー」
「オレも…。なにやってんだろ…」
そういえばあの日以来、オレは毎日ずっと塔矢のことを考えてる。
罪悪感ともう一つ……今までに感じたことのない不思議な気持ちと一緒に――
「お前ら付き合ってはないんよな?」
「ああ…」
「付き合ってないけど……ああいうことしてるんや?」
「さっきが初めてだし…」
「ふーん…変なの」
「変?」
「うん、変。どっからどうみても両想いやのに付きおうてない言うし、でもキスはしてるし、めちゃくちゃ変や」
「両想い…?」
そうなのか…?
そういわれると思いあたる節はいっぱいあるけど……
「さっさと告れや」
「告ったら……塔矢は中国に行かないと思う?」
「いや、塔矢先生が決めたことやし、それは変わらんと思う」
「そっか…」
「何や何や〜よっぽど行ってほしくないんやな。ベタ惚れやん、お前」
「………」
「早よう告ってき」
ポンッと背中を押されて部屋を追い出された。
仕方がないので塔矢の部屋に向かう――
「…塔矢」
と恐る恐る声をかけると、中から明子さんが出てきた。
びっくりしたー!
一瞬部屋をまちがったのかと思った。
「さっきはいきなりごめん…」
気を取り直して、取りあえず昼間のことを謝った。
「勝手にキスして…」
「どうして謝るんだ?僕は嬉しかったよ…?」
「塔矢ぁ〜…」
彼女に抱き着いて――抱きしめて――感触とか温かさを確かめる。
そういえば塔矢に触れるのはあの日以来。
今度は優しく…愛おしく包み込んだ――
「…ごめん…」
「今度は何が?」
「なんかもう…全部が」
「………」
「…痛かったよな…?」
「うん…そうだね」
「初めてだったんだよな…?」
「…うん」
「ごめんな…。責任取る…」
「………」
「責任取るから…行かないでよ――」
離れたくない。
また碁会所で打とう?
二人で上を目指そう?
ずっと一緒にいよう?
抱きしめていた体を少し離し――彼女の瞳をじっと見つめた――
塔矢も見つめ返してくれる――
「塔矢…」
「…ありがとう。キミの気持ちは嬉しい…。でもね、まだ16歳のキミにどう責任が取れるっていうんだ…?」
「それは…」
「ごめんね。家族皆で決めたことだから…中国は」
「………」
「そのかわり…戻るまで待っててくれる?誰とも付き合わないで…」
「うん…」
「戻ってきたら僕と付き合って?」
「うん――」
再び約束をして、オレらは再びキスをした。
まだ16のオレ。
無力で責任なんて確かに取れない。
だから、オマエが帰ってくるまでにもっと成長するよ。
碁も体も精神力も何もかも――
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