●AGAIN 8●
合宿一日目の夜――僕は眠れずにいた
進藤とキスをした唇を何度もなぞってしまう。
まだ心臓がドキドキして頬が熱い。
「アキラさん?入るわね?」
「あ…はい」
パジャマ姿の母が僕の部屋に入ってきた。
溜め息をつきながら僕の横に座る。
「昼間はびっくりしたわ」
「すみません…」
「でもやっと確信出来たわ。やっぱり進藤さんだったのね」
「………」
「心配しなくてもお父さんには言わないから大丈夫よ」
「付き合ってるわけではないんです…」
「そう…」
付き合ってないのにキスをしてしまった。
無理矢理とはいえ赤ちゃんが出来るようなこともして…。
母から見ればすごくふしだらな娘だよね。
でも僕は――
「僕は…進藤が好きです」
「そうね。見てれば分かるわ…」
「進藤は気付いてくれないけど…」
「ふふ、お父さんもそうだったわ。全然気付いてくれなくて…」
17年前に恋愛結婚をした両親。
父は今の僕らみたいに囲碁ばかりの生活で、恋愛とは無縁だったとか。
しかも母が初めて父と会ったのは学生の頃。
10歳も年下の母はそもそも恋愛対象じゃなかったのかな。
それでも母の粘り勝ち。
昔話を聞く度に素敵だと思う。
僕もそんな恋をしたい。
進藤とは出来るのかな…?
「…塔矢」
「?!」
突然障子の向こうから進藤の声がして、僕と母は同時に振り返った。
「入っても…いいか?」
「あら、私はお邪魔みたいね。もういくわ。お休みなさいアキラさん」
「お休みなさい…」
ガラッ
障子が開いて現れたのが母だったので、一瞬固まる進藤。
「お休みなさい、進藤さん」
「あ…お休みなさい」
「あまり長居しないでね?」
「あ…はい。すぐ終わります…」
まるで釘を刺すような母の言い方。
こんな時間に来たから一応の警戒かな?
母が見えなくなった後に進藤がゆっくり振り返った――
「入っていいか?」
「う…ん」
ピシャリと障子を閉められて――僕らは二人きりで見つめ合う。
「さっきはいきなりごめん…」
「え?」
「勝手にキスして…」
「どうして謝るんだ?僕は嬉しかったよ…?」
「塔矢ぁ〜…」
――え?――
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