●AGAIN 7●
今年も始まった北斗杯前の合宿。
やる気満々で来たのに、それどころじゃなくなってしまった。
塔矢が…中国に行くとか言い出したからだ――
「北斗杯終わったらって、今週末には行くってことなん?急やな〜」
「父が…やっぱり心配だからって」
「まぁ一人娘やもんなー。進藤は知っとったん?」
「初耳…」
異様なぐらい自分が動揺してるのが分かる。
平静を装うとしても無理で、頭の中がぐるぐるでどうしたらいいのか分からない。
何てコメントしたらいいのか分からない。
たかがライバルの留学に、何そんなに焦ってんだよ!オレ!
「どれくらい向こうに行くん?」
「来年には帰ってくると思うよ」
「来年??俺てっきり一・二ヶ月かと思ってたわ」
「父の北京チームの契約が来年までだからね」
「へー」
呆然とするオレの顔を、塔矢が心配そうに覗いてきた。
「黙っててごめんね」
「………」
「はは、進藤の奴ショックで固まっとるわ〜」
社がオレの両頬をきつく摘んでくる。
それでも痛さなんて感じなくて、心のショックの方が遥かに大きい。
塔矢と一年も離れ離れになる…。
たった一年。
されど一年。
やだよ…そんなの。
「…行くなよ…」
「え?」
「行くな…」
「進藤…」
どうやったら引き止めれるんだろ…。
お父さんが心配でってことは、塔矢先生に頼めばいいのかな?
先生の代わりにオレが守りますから!…て?
なんかそれってライバルの発言というよりかは彼氏…いや、婚約者の発言っぽいような…。
娘さんを下さい的な…。
「進藤、僕もキミとは離れたくないよ?」
「じゃあ…」
「でもこれは仕方のないことなんだ」
「………」
「一年で帰ってくるから。絶対に…」
「約束だからな…?」
「うん」
なぜか見つめ合ってるオレら。
ただのライバル…だよな?
それだけじゃない?
どっちでもいいけど、今は流れ的に……するべき?
ていうか体が勝手に乗り出す――
「――……ん…―」
そっと触れた唇。
初めてのキス。
約束のキス。
横にいた社とお茶を持ってきた明子さんが同時に悲鳴を上げたのは言うまでもない――
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