●AGAIN 6●
北斗杯2日前――去年と同様合宿が始まった
「いらっしゃい、進藤君、社君」
「「よろしくお願いしまーす」」
母に元気よく挨拶する二人。
母も笑顔で迎える。
でもたまに…進藤を見る目が恐い。
やっぱり気付いてるんだな…相手が進藤だったってこと――
「塔矢のお母さん初めて見たわ〜。そっくりやなー」
「そう?」
「セレブで上品な和風の奥様って感じでめっちゃいいなー。うちのおかんにも見習ってほしいわ」
「はは…」
「ほな始めよか」
「やっぱまずは早碁だよなー♪社、打とうぜっ」
「よっしゃ!」
二人が打ってる間……僕はずっと進藤の顔を見ていた。
「…何だよ?」
気付いた進藤が少し照れ臭そうにこっちを見る。
「…別に」
「何や何や〜?しばらく会わんうちにいい雰囲気になっとるやーん」
「そんなんじゃねーよ」
直ぐさま訂正する進藤。
「つーか早碁中に話しかけんな!見るな!気が散る!」
「へいへい。ま、その辺の話は夜にゆっくり話そな〜♪」
それはいわゆる恋バナというやつだろうか…。
社には好きな子とかいるのかな?
進藤には……いつかそんな子が出来るのかな?
僕と違って、ちゃんとお付き合いから始める彼女が。
キスしたり……優しく抱いたりも…?
そんなことをキミもいつか誰かと……――
「……塔矢?大丈夫か?」
「え…?」
しらないうちに涙が零れていた。
慌ててティッシュで目を押さえる。
「平気。最近涙腺が弱いだけだから…」
「悩みとかあるんやったら聞いたるで?」
「大丈夫。本当に…」
進藤は何も言わずにこっちを見てる。
…キミのことを考えると最近涙が止まらないんだ。
嫉妬してる。
いもしない未来のキミの彼女に。
イライラが…ムカムカが止まらない。
どうして?
進藤が好きだから?
そうだよ、好きだよ。
大好きだから……離れたくない。
もっともっと一緒にいたかった。
キミの一番になりたかった――
「進藤、社」
「「なに?」」
「僕ね……北斗杯が終わったら……中国に行くから…」
これが両親との約束。
取引。
相手の名前を言わない代わりに…ね――
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