●AGAIN 4●
芦原さんに連れていかれた総合病院。
この胃の痛さはストレスによるもの。
生理がこないのは……やっぱり妊娠してるから…らしい。
「はは…」
もうどうしようもなくて笑えてくる…。
「まだ16歳ですし、お相手の方ともご両親ともよく相談して下さいね」
「……はい」
まだ7週目。
まだ時間はある。
でもこんなこと……両親には絶対に言いたくない。
進藤にも…――
「アキラ、進藤君と付き合ってたのか?」
首を微かに横に振る。
「じゃあ…流れでそうなったのか?」
「流れ…?」
「アキラも進藤君もよく考えたらまだ16だもんな。夜中まで二人きりだと…そういう雰囲気になるよな」
「……」
一人で納得してる芦原さん。
どうやら合意の上で僕らが結ばれたと勘違いしてるみたい。
まだ若いから興味本位で…ってこと?
はは…素敵だね。
そっちの方がまだいい。
でも現実は―――
「サインは代わってあげれるけど…、進藤君にも言わなきゃ駄目だよ?」
「……はい」
「言える?俺が代わりに言ようか?」
「大丈夫です」
と言いながらも心の中じゃ無理だと思ってる僕。
こっそり下ろして……何もなかったことに出来たらいいのに。
でも大好きなキミとの子供。
こっそり産んで…育てたり?
もし僕がハタチを過ぎてたのならそうしたかもしれない。
でも社会に出てるとはいえ、現実はまだ16歳の、親の保護下に置かれているただの子供。
こっそりなんて到底無理な話で、皆に知られることになる――
「ア…ア…ア…アキラさん?!」
緊急帰国した僕の両親は、芦原さんからこの話を告げられ――絶句してしまった。
しばらく固まるお父さんとお母さん。
「…相手は…誰だ?」
沈黙を破ったのはお父さんだった。
「言えません…」
「アキラ?!」
「アキラさん?!」
「言えません…絶対に…」
「芦原、お前は知ってるのか?言いなさい」
「や…、そのぉ…」
僕の方を見て、僕の考えてることを察してくれたのか
「僕も…知らないんです。アキラ口固くて…」
と言ってくれた。
言えない。
絶対に言わない。
もし言ってしまったら、進藤の人生は変わってしまう気がする。
やっと見つけたライバルなのに。
もうすぐ北斗杯も始まるのに。
自分の体のことより囲碁を取ってしまう僕って間違ってる?
でも僕の出した答えはこれ。
僕が黙っていれば、両親の怒りの矛先は僕にだけ向けられる。
「アキラ、そやつのことが…好きなのか?」
「……はい」
「そやつは…アキラのことを好きなのか?」
「……分かりません」
「そうか…」
それ以上両親は何も言わなかった。
僕が好きな人なんて大体想像がつくんだろう。
そして相手の年齢を考えると……責任をとれる歳ではないと分かったのかもしれない。
『若気の至り』
それで片付けられた今回の騒動。
僕と両親と芦原さんしかしらない秘密。
でももう少し…キミが大人になった時に、キミだけには教えてあげる。
このお腹に、キミとの新しい命が宿ってたってこと―――
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