●9 MEMORIES 5●





●○● ActD 初体験   アキラ ●○●



不思議な体験だった。

記憶がないのに、正真正銘初めてなのに。

僕は進藤の一つ一つの動作、指使いに、全く恐怖を感じず体中で彼を受け入れていた。

まるでこれが気持ちいいことだって最初から知っていたかのように――



「あ…ん……」

「やっぱり体が覚えてるみたいだな…」

「ん…、そうなのかも…ね」


上半身を触られるのも気持ちよかったけど、下半身はもっといい。

まだ挿れてもないのに、何度も達してしまうぐらいに。

いい加減焦らさないで早く挿れてほしいと思ってる僕って、実はかなり淫乱なのかもしれない。

でもそれはその行為がどれだけ心地いいものなのかを知ってるからだ。

処女の思考ではない気がする。

知らないのに知っている。

変な感じだ。




「…な、そろそろいいか…?」

「…うん」

「怖い?」

「…ううん」


進藤が体を起こして、何やらゴソゴソしだした。

何をしてるんだろうと覗くと、例のものを付けているところだった。

ちょっと…びっくり。

だって、記憶はないとはいえ、僕らは一応夫婦なんだろう?

しかも新婚。

付けないのが普通だと思っていた。

記憶のない僕に遠慮してるのだろうか…。

それとも進藤は元々子供なんてほしくないのだろうか…。


「ごめん、お待たせ」

「…ううん」


再び進藤が僕に覆いかぶさってきた。

直ぐさま中に押し入れてくる。

僕の体は元々彼用になってるわけだから、痛みは全然感じなくて、快楽だけが襲ってくる。


「―…は…っ、アキ…ラ…」

「………」


でも所詮ゴム越しの偽りの気持ち良さ。

純粋に彼とのセックスを楽しめない僕がいた。


「ん…アキラ…?どうした?」

「進藤…、僕らって夫婦なんだよね…?キミが僕にそう教えてくれたものね?」

「そうだよ。思い出した?」

「じゃあ…どうしてこんなもの付けるんだ?必要ないだろう?」


彼のものに被さっている、半透明の避妊具に触れた。

進藤の顔が一気に真顔に戻る。


「だって…オマエ、今の状態で出来たら困るだろ?」

「僕は別に困らない。例え出来ても生まれるまでには記憶が戻るかもしれないし、戻らなくても十月十日あれば心の準備は出来る」

「でも…」

「それとも、キミは子供がほしくないのか?僕はほしいよ。いつか両親に孫を抱かせてあげたいって気持ちは既にあるし、自分が一人っ子で寂しかったから、子供にはたくさん兄弟を作ってあげたい。父親がキミなら最高だって…思ってた」

「オ、オレだって!ほしい…よ」

「じゃあ、それ、外して」

「………」


少し躊躇った進藤だったが、僕の迫力に負けたのか、渋々外して捨ててくれた。

でも彼のものが少し弱々しくなってしまったので、セックスは中断。

進藤は僕に「今日はもう寝よう」と、シーツの中に入るよう促してきた。


「…そんなに外すのが嫌だったのか?」

「…別に。オレだって子供は欲しいもん。オマエに触ってる最中だって、付けるか付けないかずっと考えてたぐらいだし」

「欲しいのならどうして付けたんだ?」

「…オマエの体をこれ以上傷付けたくなかったから」

「…え?僕の体って傷付いてるのか?どこが?」

「………」


進藤が僕を抱きしめてきた。

横で寝ていた僕を持ち上げ、自分の上に移動させて、下から更にギュッと抱きしめてくる。


「知らぬが仏って諺があるけど…、知らない方が罪なのかもな…」

「え…?」

「いつか…ちゃんと話すから」

「いつかって…いつ?記憶が戻ったら?」

「そうだな…」

「そんなに待てない。それまで…エッチはお預け?」


進藤がクスッと笑ってきた。


「中身は15歳なのに淫乱だなぁ〜アキラちゃんはぁ」

「キ、キミが煽るから!中途半端なままじゃ気持ち悪いだけだ!」

「よく言うぜ。指で何回もイってたくせに」

「ゆ、指より…キミのでイく方が気持ちいいって…体が覚えてるんだ」

「ふーん…」


進藤が僕を抱きしめたまま半回転した。

それはつまり、また僕が下敷きになったってこと。

ちゅっちゅっと、頬にキスされる。


「アキラが煽るから何かまたその気になってきた…」

「続き…してくれるの?」

「んー、じゃあこうしよう。アキラの希望通りナマでするけど、外に出すってことで」

「外に出したからって妊娠しないわけじゃないだろう?」

「でも中に出すより確率は下がるだろ?」

「……」

「それでいい?」

「……うん」


承諾すると、進藤は再び僕の下半身に触れてきた。

まだ濡れて緩んでることを確認した後で――― 一気に奥まで押し込んできた。


「―…あ…っ、あん…っ、あぁ…っ」

「アキラ…っ」

「進…ど…」


突かれる度に信じられないぐらいの快楽が襲ってくる。

冷静に考えたら、あのライバルの進藤ヒカルとこんなことをしてるなんて…信じられないことなのに。

でも、僕は進藤が好きだった。

いつか告白して付き合って、結婚して、こんな感じで子作りすることを夢みてた。

その夢が9年後には叶ってるなんて、信じられないくらい嬉しい話だ。


「進藤…好き…」


首の後ろに腕を回して、僕は彼に抱き着いた。


「ヒカルって…呼んでよ、アキラ…」

「ん…ヒカル…」

「アキラ…っ」


徐々にスピードが上がって、クライマックスに入る。

先に上り詰めたのは僕だった。

そして僕の締め付けで進藤も達する直前に、慌てて彼は抜こうとした。

でも僕は意地悪にも彼の腰に脚を絡めて、それを阻止する。


「アキラっ?!バ…っ、……っ…――」


不覚にも中で出してしまった彼は、僕の体の上に沈没した。


「くそ…何てことしやがる…」

「だって僕は子供が欲しいもの」

「どうなっても知らないからな!」

「うん」

「……はぁ」


溜め息をついた彼は、諦めて僕の上で余韻に浸りだした。

男の人は出したら眠くなるって聞いてたけど、進藤はすぐに眠らずちゃんと事後行為をしてくれる。

まだ繋がったままでそれをされると、最高に嬉しい気がした。


「アキラ…気持ちよかった?」

「うん…すごく」

「オレらめちゃくちゃ相性いいんだぜ」

「そうなの?」

「そう思うだろ?」

「…他の人と試したことあるの?」

「ずっとオマエ一筋だよ」

「9年間?」

「そ、9年間。でもって、一生」

「…僕って幸せだね。キミのおかげですごく素敵な人生をおくれてる」

「…そう言って貰えると…救われるよ…」


何を思い出したのか、進藤はまた涙を浮かべてきた。



そして一度してしまったら二度しようが三度しようが同じだと思ったのか、進藤は続けてまた腰を動かしてきた。

結局絡み付いたまま、僕らは眠りに落ちた―――








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