●3rd FEMALE+β 7●


「―塔矢、キスしても…いい?」

「……うん」

初のデートの日、帰り際にオレはキスすることに成功した。


「…ん…―」

今までしたことなかったけど……感覚でどうすればいいのかなんて分かる。

だけどすごくドキドキして…離れた途端、無意味に息があがってしまった―。


「…はぁ…、は…ぁ―」

塔矢ももちろん初めてだったみたいで、唇が離れた後も視点を合わさない目で…ぼーっとしていた。

そしてしばらくして我に返ると、今度は頬を一気に赤く染めてきた―。

…すげー可愛い…。

思わず手が出そうになったけど、もう夕方だし…母さんが下にいたから、初回のデートは結局キスだけで終わらすことにした。


「…次、オマエいつオフだっけ?」

「来週の金曜だけど…」

「あ、オレもその日休みだからさ、またウチ来いよ。朝から打とうぜ―」

「いいよ。じゃあまた明日、棋院でね」

「ああ、気をつけてな」


今日はオレん家で一日碁打つだけだったけど、来週のデートん時は外に連れだそう…。

いよいよ本格的に計画開始だ。

塔矢を手に入れるために―。










「塔矢あのさ、この後…上の部屋取ってあるんだけど……いい?」

「え?」

ホテルでランチを食べてる途中、直球で聞いてみた。

何も伝えずに部屋に連れ込むことは確かに簡単だけど、逃げられたら困るし…嫌がられても困るので、一応確認してみる。

だけど塔矢は理解出来てないらしく、首を傾げていた。

「『いい?』って何が?」

「その…抱いてもいい?って意味なんだけど―」

「え?!」

いきなりのことに驚いたらしく、塔矢はまたしても顔を赤めた―。

「今日?!」

「うん…」

「今から?!」

「…うん」

「早過ぎないか?!僕らまだ付き合って……」

塔矢が指を折って数え始めた。

「んなこと分かってるよっ!だけどオレ……抱きたい」

オレの方も顔を赤くして、必死に気持ちを伝えた。

早いのは分かってる。

まだ付き合って数日、デートだって2回目だ。

だけどオレらには時間がない。

何としてでもケンカする前に――



「………分かった。いいよ」

オレの真剣なまなざしに負けたのか、塔矢はランチを食べ終わった後、了解してくれた―。

「…ありがと」

取りあえず第一関門を突破したみたいで、安堵の溜め息が出た。


…だけどすげー緊張する。

上手く抱けるかな…?

こんな時塔矢塔矢って一筋だったのは失敗だったかもって思う。

もっと場数踏んでおけばよかった…。

でもオレ自身やっぱ初めてん時は一番好きな奴としたかったし、他の奴と経験があることで塔矢とモメるのだけは避けたかったから……これでいいんだ。

コイツが手に入るんだったら、一生他の女なんて知らなくてもいい―。


「…この部屋?」

「うん」


ガチャ

お互い緊張した面持ちで中に入ると、デスクやテレビが一番に目に入ってきた。

そして入口からは死角になるその奥に、大きなダブルベッドがある。

ダブルの部屋取ったのは失敗だったかな…。

余計緊張する…。

だけどデイユースでツイン取るのも変だし……これでいいよな?

「僕ダブルの部屋始めてかも」

「そうなんだ…?」

「うん、セミダブルはあるんだけどね」

意外に塔矢がこの大きなベッドを気に入ったみたいで、早速ゴロゴロ寝転がっている。

「この部屋何時まで?」

「5時。あと4時間ちょいかな」

「ふーん。このホテル高かっただろ?半分出そうか?」

「いや、いいって。こういうのは男が払うもんなの」

「そうなのか?」

「うん…」

横になってる塔矢に近付いて、軽く頬にキスをした―。

「体で返してくれたらいいから…」

耳元でそう囁くと、塔矢の顔がまたしてもゆで蛸になっていった…。

唇にそっと口付ける―。


「…えっと、取りあえずシャワー浴びて来る?」

「…うん、そうしようかな」

塔矢がベッドから起き上がって、バスルームに向かい始めた。

「あ、シャワーブース独立してるよ。きれーい」


良かった…。

気に入ってくれたみたいだから、張り込んだ甲斐があったぜ。

その辺のラブホでも良かったけど…やっぱ最初ぐらいはちゃんとしたホテルで抱きたいからな。


しばらくすると塔矢が浴衣を着て出てきた。

「これに着替えちゃった」

塔矢の浴衣姿は今まで何度も見たことあるけど…、いざこういう場面で着てこられるとかなりドキッとする―。

「髪…洗ったんだ?」

「うん、キミが入ってる間に乾かしちゃうよ」

「…オレがやってやろうか…?」

「え?」

洗面台の横に置いていたドライヤーを手に取って、ベッド脇のコンセントに繋げた。

「ほら、座れよ」

「あ…うん。ありがとう―」

直に髪に触れると、柔らかさがよく分かる。

すげーキレイ…。

いい香りもして気持ちがグラついてきた―。

「―…塔矢…」

抑えが効かなくて…乾かすのを途中でやめ、後ろから抱き締めた―。

髪と耳にキスをして、首筋に唇を押し当てた―。

「…や…っ、…ぁ…―」

舌を這わして…浴衣のすき間から手を入れ、胸を揉み始める―。

「ちょっ…、進藤待って―」

「…ごめん…もう無理―」

一度手を離して、塔矢をベッドに押しつけ…浴衣の腰紐を解いた―。










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