39BIRTHDAY 2●





「――…ぁ…ん…」

「…アキラ…」



早速温泉に浸かり始めた僕ら。

と言っても、普通に浸かってたのは最初の2分くらいで、すぐに僕に近付いてきて…、後ろから抱き締められたのだけど。

首筋にキスされて…、胸を揉んでくる。

先端に指で刺激を与えてくる。


「…どうする?息子も今頃彼女と同じようなことしてたら…」

「んん…、キミじゃないんだから…」

「でもオレの息子だしなぁ…」

「…そうだね。それなら…、してるかもね…」

「だろ?」


息子はどちらかというとヒカル似だ。

そして彼女も、僕みたいな髪の長い、細身の長身の女の子だ。

(蛙の子は蛙で、好みも父親に似たのだろうか…)

でもあの大和撫子みたいな外見の女の子が、息子とそういうことを本当にしてるのだろうか…。

いかにも結婚まで貞操は守り抜きそうなタイプだったけれど…。


でも…人は見かけには寄らないからな。

僕だってそうだった。

僕だってもしヒカルと出会わなければ、きっと結婚まで処女を貫いていたと思う。

でも実際は出会って、交際を始めてわずか1ヶ月で体を許してしまった。

それからは今日の今日までずっと、一週間と開かずに体を合わせ続けている僕ら。

もちろん週に複数回することもある。

彼に抱かれる度に思う。


(僕って愛されてるんだなぁ…)

と――


彼が僕の体で欲情してくれるだけでももちろん愛は感じるが、それよりもヒカルは言葉で僕に愛を伝えまくってくれるのだ。


「アキラ…、好きだ…」


好きだ。

愛してる。

オマエと結婚出来て幸せ――と。



「うん…、僕も」


胸を弄りながら、僕の下半身にも手を伸ばしてきていた彼。

解されて、彼を受け入れる準備が出来ていく。

こんな温泉の中でこんなことをして、今にものぼせそうなのに、もっと深く繋がりたくなる。

このまましてしまおうかな……どうしようかな……

 


「…なぁ、やっぱナマでしたらマズい?オマエまだ妊娠する可能性ある?」

「そりゃ…、生理はまだあるからね…」


39
歳でも普通に生理はもちろんある。

でも、若い時よりは妊娠はもちろんし辛くはなってるとは思う。

でも可能性はゼロではないだろう。


そう――ゼロではないのだ……

 


「んー…、仕方ない。ベッドに移動するかぁ…」

「…そうだね」


僕らは仕方なく浴室から寝室に移動することにした。

僕をベッドに横たわらせ、上に再び乗ってくるヒカル。

濃厚なキスを落としてくる。


「――…んん、…ん…っ」



結婚したのがハタチの僕ら。

息子が出来たのが22歳の時だった。

この17年間、棋士と子育ての両立は正直かなり大変だった。

さっきも言った通り、年間の3割をホテルや旅館で過ごしてる僕らなのだ。

普通の手合いと違ってタイトル戦では常に3日以上拘束されるし、海外棋戦となると一週間だ。

両方の両親の協力なくして、この子育ては成立しなかっただろう。

だから当然2人目なんて考える余裕もなかった。


でも……僕の体のタイムリミットが迫ってきて、もう一人くらい産んでおけばよかったかな…、と後悔してる自分もいた。

僕の母も、ヒカルのお母さんも、本当はもう一人欲しかったと昔言っていたことを思い出す。

欲しかったけど、出来なかったのだと。

僕らは本当ならもっと授かれたかもしれないのに。

本当にこのまま終わりを迎えていいのだろうか……



「アキラ…」

首筋にチュッチュとキスしてくる彼に、僕は思いきって聞いてみる

「…ねぇヒカル」

「ん〜?」

「僕らって子供1人だね…」

「そうだな。アイツもう17だもんなぁ…、早いよなぁ」

「今更もう1人はやっぱり無理だよね…」


キスしていたヒカルの動きがピタッと止まる。

ガバっと起きてくる。


「え?オレ的には全然無理じゃねーけど?」

と真顔で返される。

真剣な表情で見つめられる。


「まだ39だし、その気になれば今からでもあと2人くらいいけるんじゃね?」

「え?キ、キミ…、欲しいの?」

「欲しいよ。いつだってずっと欲しかったよ。でもアキラはオレ以上に忙しいし…、オマエが望まないのならって、ずっと諦めてた」




―――え?




「え?何?アキラ欲しくなったの?マジで?」

「う…ん、このまま1人で終わってしまっていいのかなって、最近思ってて…」

「それ絶対将来後悔するやつじゃん!もっと早く言えよ〜〜!」

「え?だって…、―――んん…っ」


再び濃厚なキスを落とされる。

舌を吸われるように絡め取られる。

同時に僕の下半身に触れて、濡れ具合を確認してくる。


「――…は…アキラ…、今から子作りしよっか」

「…本当にいいの?」

「いいよ。だって、後悔したくないだろ?オレもしたくない。大好きなアキラとの子供…もっと欲しい」

「…うん、僕もだ――」


僕の中に彼が入ってくる。

何も隔てず、そのままの彼が入ってくる。


「ぁ…っ、…ぁん…っ」



僕も大好きなヒカルとの子供をもう一度産みたい。

後悔しない為に――

 

 

 

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