●TIME LIMIT〜19才編〜 1●
「よっし!完勝!中押し♪」
千明が寝静まった後、ネット碁をするのがここ最近のオレの日課になっていた。
今夜の相手はzeldaこと和谷。
前線を退いてもう三年近くなるのにまだ和谷に圧勝出来るぐらいだから、そんなに棋力は落ちてないのかもしれない。
『少しは手加減しろーー)`ε′(』
と和谷からチャットが入った。
へへん、やだよーだ。
返信しないまま、今夜はもうパソコンを閉じた。
「パパぁ…」
「ん?どうした千明」
すぐ横のベッドで眠っていた千明が、眠そうに目をこすりながら体を起こしてくる。
「パパ…ねないの?」
「寝るよ」
オレもベッドに入り腕枕をしてやると――千明は再びスヤスヤと夢の中へ戻っていった。
寝顔…すごく可愛い。
塔矢の寝顔もこんな感じだったよな…とふと思い出した。
アイツと過ごす夜は常に不眠不休で、ひたすら朝までヤりまくってたけど……たった一度だけ。
19歳の誕生日だけは不覚にも寝てしまったんだよな。
デートの場所を舞浜にしたのが悪かった。
久々のディズニーランドだったから、めちゃくちゃテンション上がってて。
アトラクションもショーもパレードも、ゆっくりする間もなく全部見て回ってしまって。
気がついたら閉園時間だった―――
「あー疲れた。でも楽しかったー」
ようやくホテルに戻ったオレらは、一緒にベッドにダイブした。
「ディズニーランドなんて何年ぶりだったんだろう。記憶にないぐらい前だ」
「先生や明子さんと行ったのか?」
「ううん。確か緒方さんとだった気がする。学校帰りだったのかな?学生服着てた」
「マジ?制服の緒方先生、超見てぇ!」
まだ興奮が収まらなくて、塔矢と撮ったデジカメを見返しながら…ベッドの上で色んな話をした。
次第に声が小さくなる彼女。
さすがに疲れたのか、うとうとしていた。
「ひと眠りするか?」
「…うん…ごめん。キミの誕生日なのに…」
「いいよ。オレ風呂入ってくるし」
「ん…」
そのまま塔矢は眠りに落ちた。
服を着たまま。
メイクも髪もそのまま。
どんなに疲れていてもきちんと準備を終えてからいつもは眠りにつく彼女なのに。
今日はよほど疲れたんだろう。
楽しんでもらえてよかった。
寝顔…可愛いな。
チュッと額にキスをして、バスルームに向かった。
「…はー、気持ちいい」
オレの方もお風呂に入ると次第にうとうとしてきた。
……やべぇ。
これからが本番なのに…。
塔矢と朝までしまくらなきゃなんねーのに………眠い。
顔を洗っても全然眠気が取れなくて、朦朧としたまま風呂から出た。
すると塔矢が気持ち良さそうに眠ってて……違う意味で誘われてる気がした。
あーー…もうダメだ。
オレもひと眠りしよう。
起きたら甘い恋人同士の時間を楽しむことにしよう―――
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