●TIME LIMIT〜18才編〜 3●
「―…はっ、…あぁ…っ…あ…―」
進藤が動く度に声が漏れる。
一番深い場所で繋がって、一番近い関係になって。
彼は経験豊富だから触られただけでも僕は達して、挿れられてからもまた何度も達して――僕らは恋人達がする愛の営みを一晩中続けた。
「…は…っ、塔…矢…」
「進…ど……」
「好き…だ…、塔矢…好きだ」
「僕も…」
セックスをすると苦しいほど彼の想いが伝わってくる。
他の女性には淡泊なくせに、僕には重たいほど愛してくる彼。
いつか、この愛を他の女性に向ける日が…彼にやって来るのだろうか。
残念なようなホッとするような…不思議な気持ちになる。
早く開放してほしいような……ずっと進藤の気持ちを独占していたいような……――
「……朝か」
「うん…」
結局何時間交わっていたのだろう。
ようやく外が明るくなってくれて、進藤が僕の上から退いてくれた。
でも、今回の誕生日はこれで終わりじゃない。
まだ前哨戦。
21日はこれから始まるようなものだ。
「…そういやオレ昨日からロクに食ってないんだよな。さすがに腹減ったー」
「何か食べれば?」
「レストランは関係者多そうで嫌だな…。ルームサービスにしよっかな。塔矢の分も頼もうか?」
「お願い」
進藤がベッドを降りた後、僕は即座にシーツに包まって体を隠した。
はぁ…恥ずかしかった。
疲れた。
眠い。
でも不思議と変に満足感もあった。
一応僕も一年ぶりのセックスだったからだろうか……
「ここからだと上野とか浅草が近いよな。動物園行かねー?」
「いいよ」
一緒に朝食のルームサービスを食べた後、僕らは普通の年相応のデートをするために、ホテルの外へ出ることにした。
始めは上野動物園。
そういえば小学校の時に遠足で来て以来かもしれない。
犬や猫以外の動物を見るのは久しぶりで…ちょっと楽しい。
「おー!シロクマだ!オレ、シロクマ大好きなんだよなー」
「可愛いね」
「小グマいないかな〜?」
ゾウにサルにキリンにサイにライオンにペンギン。
そしてシロクマに進藤が夢中になっている時だった。
僕は何やら視線を感じ…気になって振り返った。
二人組の女の子…?
一人が何か僕を睨んでるような……
「ねぇ進藤、もしかしてキミの知り合い?」
「へ?」
進藤がその子を見て、少し目を見開く――
「……紗耶香」
「…久しぶり、ヒカル」
「……」
「誰…?その子」
「…彼女」
一日限定だけど…ね。
この子は進藤の元カノだろうか……
「…私と別れたいって言ったの、本当はその子と付き合う為だったのね」
「…ああ」
「囲碁に集中したいって…嘘だったんだ」
「……」
「信じた私が馬鹿だった。…さよなら」
涙を辛うじて堪えた彼女は、友達を引っ張って走って行ってしまった。
「進藤今の…元カノ?」
「ああ。一週間前に別れた」
「一週間…前?」
「だから今は塔矢だけだから」
「…まさかこの日の為にわざわざ別れたんじゃないだろうな?」
「そうだけど?」
「な…っ――」
ななな…なんて馬鹿な男なんだ。
たった一日の為に、しかも偽りの恋人なのに……本当の恋人と別れるなんて…!
「今日はオレにとって一年で一番大事な日なんだ。塔矢だけと恋人でいたい」
「だからって…」
「いいんだよ別に。あんな女…単なる時間つぶしだし」
「……」
「オレが本当に好きなのはオマエだけだから」
…嬉しくない。
僕の為に簡単に人を傷つけるなんて。
切り離せるなんて。
この時僕は始めてこの男の愛が怖いと思った――
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