●TIME LIMIT〜17才編〜 1●
『来年もオマエのことが好きだったら……くれる?』
『……いいよ』
何故こんな約束をしてしまったのだろう。
カレンダーを見て、徐々に近付いて来る進藤の誕生日に…僕は焦りを感じていた。
…いや、大丈夫。
彼には今付き合ってる彼女がいたはず。
もう僕のことなんか何とも思ってないはず。
大丈夫大丈夫大丈夫………
「なぁ、塔矢。オマエ去年の約束覚えてる?」
「……何の話だ?」
「ほら〜、オレの誕生日の次の日だよ。もし来年もオレがオマエのこと好きだったら、また同じプレゼントくれるって、言ったよな?」
「……さぁ?記憶にないけど?」
知らない振りをしても、そんなことこの進藤には通用するはずもなく。
オレ、久しぶりに東京ドームシティ行きたいんだよな〜とか、一人でぶつぶつ言っていた。
「塔矢はどこ行きたい?」
「その前に!進藤、キミはまだ僕のことが好きなのか?!」
「当たり前じゃん」
「じゃああの子は?一度棋院まで迎えに来てたあの女の子は一体何なんだ!彼女じゃないのか??」
「あ〜元カノ元カノ、もうとっくの前に別れた」
「別れ…た…?」
「うん」
うん……って。
だからといって、決心がつくはずもない僕の顔を進藤が覗きこんできた。
今にもキス出来そうなくらい…近づいて――
「塔矢、オレ結構真剣なんだ。この一年…誕生日の為に頑張ったようなもんだし」
「大袈裟だよ…」
「オレだって驚いてる。でも、駄目だったんだよ…他の女じゃ。塔矢でないと駄目なんだ」
「……」
「お願いだ…塔矢。一日でいいから恋人になって」
「………20日は、その…午後から指導碁の予約が入ってるんだ」
「終わってからでもいいから。待ってるから」
「………」
結局………僕は首を縦に振ってしまった。
あまりに真剣な進藤の目に負けてしまった。
それでも、どうせ彼女と別れたから…誕生日に一緒に過ごしてくれる人がいないから、僕のことを思い出したんだろう…という程度にしか思っていなかった。
誕生日の晩――再び彼に抱かれるまでは―――
「うわぁ…すっかり夜になっちまったなー」
「ごめんね…遅くなって」
「仕事だったんだから仕方ねぇって」
9月20日夜20時。
僕らは後楽園でデートを開始した。
真っ暗な分ネオンが綺麗で…少しロマンチック。
一年ぶりに手も繋いでみた。
温かい手…。
ちょっと汗ばんでる?
意外に緊張してるのかな…?
進藤に限って…まさかね。
「…やっぱり変な感じだな。キミといるのに打ってないなんて」
「今日は絶対に打たないからな!」
「分かってるって…」
去年も打たなかった。
進藤が望んでいたのは普通の恋人達のデートだったから。
普通に昼間遊んで、夜は………
ひいぃぃ…っ!!
思い出した。
思い出してしまった!
僕…僕僕僕僕の初めてを彼に奪われてしまったんだった!
ままままさか…今年も???
いやあぁぁぁっ…!!!
そして夕飯の後、僕の抵抗も虚しく…進藤にホテルに連れていかれてしまった。
いやあぁぁぁっ…!!!(二回目)
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