●YUME●


「佐為…お前って…、オレの夢の中…見えてる?」

<ヒカルの夢の中ですか…?いいえ、見えませんよ>

「そっか…良かった…」

<どうかしたんですか?>

「……」

<ヒカル…?大丈夫ですか?>

震えてるオレの体を、触れない体で…佐為はぎゅっと抱き締めてくれた―。


「…佐為はさ、セックスしたことある…?」

<セックス…?何ですかそれは?>

「あぁ…英語だったんだっけ。日本語じゃ……性交とか、交わり?かな」

<あぁ、それのことですか>

佐為が意味ありげに笑い出す。

「何笑ってんだよ…」

<いいえ〜、ヒカルもそういうのに興味を持つ年頃になったんですね>

「悪いかよ」

<いいえ、それが普通ですよ>

真っ赤になってるオレを優しく宥めてくれる。


「……でさ、最近見ちゃうんだ…夢で」

<何をです?>

「女と…ヤってる夢」

<それも普通ですよ>

「普通じゃねーよ!だって…だって…、その女って…アイツなんだもん…」

<誰です?>

「……………塔矢」

<ヒカルは…塔矢のことが好きなんですか?>

「好きじゃねーよ!アイツはただのライバル!それ以上でもそれ以下でもねェ!」

<……>

「だけど…夢でオレ…アイツに…」

<ヒカル…>


何で?!

何で塔矢?!

別にお気に入りの芸能人でもいいじゃん!

クラスの可愛い女の子でもいいじゃん!

何でよりにもよってアイツなの?!


それがオレには理解出来なかった。

そのうちオレは眠るのが怖くなった。

夢を見るのが怖い。

またアイツが出てきそうで…。

めちゃくちゃに…犯しちまいそうで…。



チン

「あれ?進藤?」

「……」

棋院に書類を届けに行った帰り、エレベーターで偶然塔矢に会った。


「もうすぐキミとの一戦だね」

「……そうだな」

「楽しみにしてるよ」

「……オレも」


あの夢を見出してから、塔矢を直視出来ない。

見てしまうと…思い出しちまうから―。

しかもよりにもよって今日の塔矢は制服だった。

学校の帰りなのかな…?

オレはこいつの制服姿…結構好きなんだ。

よく似合ってる。

…だけど、スカートなんだよな。

塔矢はそんなに短くしてないとはいえ、それでも下半身のラインがハッキリ見える。


「……」


嫌だな。

オレって最低じゃん。

なに想像してんだろ…。

オレ…来週こいつと当たって、平常心で打てるのかな…?



その晩――オレはまたしてもアイツの夢を見て、慌てて飛び起きた。

<ヒカル?ヒカル?!大丈夫ですか?!>

真っ青な顔でオレは佐為に泣きついた。

「もうやだ…やだよオレ…!アイツとあんなことしたいわけじゃねーのに!ただ碁が打てれば…それでいいのに―!」

だけどこの夢のせいで、平常心で打つ自信がなくなる…。

オレ…もう…アイツと打つ資格ないかも…。

せっかくプロになれたのに…!

<ヒカル、大丈夫ですよ。打てます。きっと普通に打てますから―>



だけど心配した対局は、塔矢先生が倒れたことからオレが不戦勝になった。

そのうちずっと慰めてくれていた佐為が消えて……オレは更にどん底に追い込まれる。

だけど…不思議だよな。

人間て一番下まで落ちると、すべてを受け入れれるんだ。

どうでもよくなる、とも言うけど―。

そのうちアイツの夢も見るのが嫌じゃなくなった。

もういいよ…。

オレ…もう二度と打たないから…平常心でいられなくてもいい…。



「進藤、なぜ手合いに来ない?」

「……」

アイツが学校にまで押しかけてきた時には、もうオレの中じゃ現実と夢とかごちゃごちゃになってたのかも。

しつこく追って来るアイツにキレて、気がついたら――どこかのホテルでめちゃくちゃに犯した後だった。


「気は済んだ…?」

「……」


こいつ信じらんねぇ…。

こんなことされたのに、なんで何も言わないんだ…?

いつもみたいに怒れよ。

ふざけるなっ…て。


「シャワー浴びてくる…」

そう言ってベッドから下りたアイツの寝ていた場所には、血痕がぽつぽつ残っていた―。

一気に顔が青ざめる。

「塔矢…!ゴメッ…―」

振り返ったアイツの顔は――佐為みたいに穏やかだった。

「いいんだ…。僕はキミが好きだから―」



え…?



「何言ってんだよ…。オレとオマエは…ライバルだろ…?」

「ライバルを好きになっちゃいけないのか?」

「そんなことねぇけど……平常心で打てなくなる」


あれ…?

ってことはオレって塔矢のことが好きなのか…?


「キミと平常心で打ったことなんて一度もないよ」

「え…?」

塔矢がクスッと笑ってきた。

「いつもドキドキさせられる。すごく楽しいよ」

「……」

「だからもっと打ちたいんだ…。早く手合いに復帰してほしい―」

「……」

ごめんな…。

それは出来ないんだ…。

オレが打ったら…もう佐為は……―


――だけど

オレの中で一つの答えが出た。

オレは塔矢が好きだったんだ…。

だから…あんな夢を見た。

でもライバルでいたかったオレは…それを認めたくなかったんだ。

たぶん……そういうことなんだ。

そうだろ…?佐為…。


「進藤…?」

起き上がって塔矢の手を掴んだオレは、力任せに引き寄せて――抱き締めた。

「好きだよ……塔矢」

「……」

赤くなって抱き締め返してくれた塔矢を、またベッドに押しつけて――優しくキスをした――。








―END―










以上、ヒカルの苦悩話でしたー。
久々に一話単発ものを書きました。
そして実は佐為を出すのは初めてだったり。
内容はもう…何とも言えない内容で…。
取り合えずまとまりのない文章ですみません…。
でもね、あの小6〜中3という思春期真っ盛りの時を共に過ごした二人ですから、色々……話してると思いマス!
にしても考えてることが筒抜けなのは痛い…ですよね。
まぁ佐為は囲碁関係以外のことはスルーしてそうですが。

それにしても…ヒカアキの初H歳がどんどん下がっていってるのは気のせい??