●YES or NO●
「進藤!塔矢!結婚おめでとう!!」
今年のバレンタインに、オレと塔矢はめでたくゴールインした。
でもお互いのスケジュールが噛み合わず、式はまだまだ半年以上も先。
とりあえず仲間内でお祝いだけでも…と、和谷が幹事でちょっとしたパーティーを開いてくれた。
「これは女流の皆からよ〜」
「ありがとう、奈瀬さん」
女流棋士から、塔矢にプレゼントされたのはコーヒーメーカーとお揃いのマグカップだった。
これは結構使えるかも。
「進藤、これは森下門下一同から」
「サンキュー」
和谷が代表して渡してくれた森下門下からは、高そうな客用和食器。
まぁ…来客用にこういうのも必要だよな。
他にもこれはどこどこから、こっちはどこどこから〜と次々に渡された。
一番もらって嬉しかったのは、やっぱ物より金っていうか…旅行会社の商品券。
新婚旅行で使わせてもらおう。
一番面白かったのは社筆頭の関西棋院の友達からもらったバスローブとなぜかタコ焼き機。
あと阪神のオープン戦のチケット。
(これ絶対お前の趣味だろ…)
一番使えると思ったのはペアのワイングラス。
オレも塔矢もワイン好きだから嬉しい。
あとタオルとかも意外と高いから助かる。
でもって一番貰って困ったのは、門脇さん含む仲のいい男連中からプレゼントされた…ペアの枕。
しかもイエスとかノーとか書いてあるやつだ。
「アキラ、OKの日はイエスの方を置いておけよ」
「何がOKなんですか?」
芦原さんのご丁寧な説明に塔矢は真顔で聞き返していたが、耳元で詳しく説明された途端…真っ赤な顔になっていた。
はぁ…絶対こういうプレゼントもあると思ったんだよなぁ。
ちなみに、嫌な予感がしたので皆の前で開けなかったが、枕の他にいわゆる夜のアイテム…大人のおもちゃ的なのももちろんあった。
塔矢に見つからないように隠しておこう…。
「たくさん貰っちゃったね」
「そうだな」
塔矢と新居に帰った後、早速貰ったプレゼントを片っ端から片付け始めた。
とりあえず食器系は台所に置いておいて…と。
風呂系はバスルームだな。
クッションはリビングのソファーにでも。
「進藤、これ…使う?」
「え?」
塔矢が聞いてきたのは、例のイエス・ノー枕。
「…使うわけねーし」
「でもちょっと便利じゃない?生理中とか…いちいち断る手間が省けるし」
「ノーが置かれてあったらへこむからやめて。いちいち断ってくれた方がまだマシだって」
「そっか…それもそうだね」
じゃあ必要ないな、と塔矢が押し入れに片付けた。
「これは何だっけ…」
と、今度は例の夜グッズに手をかけようとしたので、慌てて奪って阻止した。
「これはダメ!オマエは見るな!」
「どうして?」
「ダメなもんはダメなの!」
ムッとした塔矢が、オレから奪おうと手を伸ばしてきた。
「だからダメだって!」
「進藤!僕ら二人にくれたプレゼントだろう?!僕にだって見る権利はあるはずだ!」
「これは男用なんだって!」
「嘘をつくな!」
「嘘じゃねーし!」
しばらく攻防戦を続けた末に、塔矢が
「じゃあもういい」
と諦めてくれた。
ホッと安堵の溜め息が出る。
でも、なぜかさっき片付けた例の枕を押し入れから出してきた。
しかも…ノーの方だけ。
「見せてくれるまでこれだから」
「は…?」
「じゃあね、お休み!」
プイッと自分の部屋に帰ってしまった。
「と…塔矢?!」
慌てて追いかけたが部屋には鍵がかけられていて…。
「しばらくは一緒に寝る約束だろ?!だから寝室分けるのにもOKしたんだぜ?!」
ドンドンドアを叩きながら叫んでみたが、一向に返事はなし。
くっそ…ムカつく。
オマエが嫌がると思って見せなかったのに…何だよ。
ああ…そうかよ。
「…そんなに見たいなら、見せてやるよ」
そう言うとガチャっと鍵が開いた。
「…本当?」
「ああ」
ほいっと箱ごと渡してやった。
「最初から素直に見せてくれればいいのに」
「…オレらには必要ないもんだし」
「ふーん?」
楽しみそうに箱を開けた塔矢だけど、いざ中の物を見ると――固まってしまった。
「し、進藤…これって…」
「だから言っただろ?見ない方がいいって…」
みるみる赤くなった塔矢。
「変態!エッチ!スケベ!バカァ!!!」
と箱ごとオレに投げつけてきた。
「塔矢ぁ〜」
「触るな変態!」
「何でオレが変態なんだよぉ。文句があるなら、これをくれた門脇さん達に言ってよ」
「キミが実はこういうの好きだって知ってて、くれたんじゃないのか??」
「…へぇ、じゃあ使っていいの?」
投げられた衝撃で床に散らばった箱の中身のうちの一つ、バイブを拾ってみた。
じりじり塔矢に近付いていくと、例のノー枕を投げてきた。
「ふざけるな!!もう離婚だぁぁ!!!」
こうして、前途多難なオレらの新婚生活が幕を開けるのだった―――
―END―
以上、イエス・ノー枕話でした〜(笑)
ただ新婚でいちゃいちゃしてるヒカアキが書きたかったのですが…あれ?もう離婚ですか?(笑)
いやいや、まだ純情なアキラさんをこれから調教しないとね★