●TIME LIMIT〜社編〜 2●
「…なーんや。進藤のおらん今なら、塔矢ゲット出来ると思たのに。残念」
「社…」
「でも塔矢。進藤が結婚してもたら…どうするんや?失踪先で綺麗な姉ちゃんおるかもしれへんし?進藤は手が早いけんなぁ〜」
「……進藤は結婚なんてしないよ」
「絶対?100%?」
「僕に昔…そう言ったから」
―――『オレ結婚するつもりねぇし』
二十歳の誕生日に確かに彼はそう言った―――
「昔、やろ?時間が経てば人間の気持ちなんて変わるもんやで?」
「…確かにあれは何の責任もない独り身だったから言えたことなのかもしれない。今は子供がいるから…、時間が経てば…やっぱり子供には母親が必要だと思うかもしれない」
「……は?」
「でも…あの子の母親は僕だ。それだけは一生変わらない。もしかしたら…僕を必要として帰ってきてくれるかも――」
「ちょっ、待て、塔矢!子供って…何の話や?お前ら、子供おるん?」
「………」
……ついムキになって口が滑ってしまった。
でも僕は静かに頷いた。
「はは…ホンマかいな。何してんねんお前ら…」
「……」
「そりゃあ…忘れられへんわけやな。納得や」
「進藤は…僕らの子供を育てる為にどこかに行ってしまったんだ」
「意味分からんし!なんで他所に行く必要があるんや?出来ちゃったなら出来ちゃったで、結婚して二人で育てたらよかったやん」
「…僕が子供の母親にはならないって言ったから。僕が母親だっていう事実も隠してほしいって…言ってしまったから」
「なんでや!お前ら付き合っとったんちゃうんかいな!つーか、そんなに嫌なら、産まへんかったらよかったんや!」
「出来ないよ…進藤との子供だもの」
「くわーっ!意味わからん!さすが進藤と塔矢や!理解不能や!」
社が頭を抱え込んだ。
僕だって…意味分からないよ。
一体何をやってるんだろう…って思う。
「はぁ……まぁ…そういうことなら、俺は潔く塔矢のこと諦めさせていただきます」
「最初から本気じゃないくせに」
「はは〜バレてた?でもちょっとは本気やったで?お前を救いたい気持ちは嘘ちゃうしな」
「……」
「俺も協力したるわ」
「え…?」
「進藤を探すの。お前らのガキの顔、見てみたいしな」
「社…」
それから社は関西方面を中心に、聞き込みや人づてを頼りに進藤を捜してくれた。
もちろん、東北にいた彼を、見つけることが出来たはずはなかったけどね。
でも、その気持ちが嬉しかった。
進藤が棋士に復帰した後、僕はそのことをもちろん進藤にも教えた。
「サンキュー社、オレのこと捜してくれてたんだって?」
「別に〜塔矢の為やし」
「……は?」
社が意味深な言い方をしたせいで、僕は進藤に社と何かあったのか?と、問い詰められる。
別に…何も。
あ、でも、キスはされそうになったかな?
もちろん怒った進藤が、その後社の持っていた天元のタイトルを奪取してやろうと躍起になったのは言うまでもない。
「へ〜、この子がお前らの子供かいな。塔矢にそっくりやな」
「千明です。はじめまして」
「可愛いな〜、お兄ちゃんのお嫁さんにならへん?」
今思うと…社のこの不用意な一言が、進藤の過保護人生を更に加速させることになったのかもしれない。
でも千明は初めての生の関西弁に目を輝かせていた。
「よかったな、塔矢。進藤が帰ってきてくれて」
「うん―――」
―END―
以上、社編でした〜。
ヒカルのいない間に、アキラさんの方にも男の影をチラつかせとこうかな〜なんて思いまして、社を選びました(笑)
でも社は基本ヒカアキの味方ですので、こんな感じのオチでいいかな?
社のせいで、ヒカルは千明に寄ってくる男に敏感になったみたいです(笑)
にしても関西弁は難しいです><
私も半分関西弁みたいなもんなんですが、妙に阿波弁が入ってしまい、正しい関西弁が分かりません…(=_=;)間違っててもスルーして下さいませ…。