●WOW!●







―――その日の朝

僕と進藤はいつものように抱き合っていた。

昨日の手合いの後、一緒に僕の家に来て。

最初は真面目に打ったり検討したりしていたわけだけど。

夜になると、恋人同士の僕達は当然…お互いの肌を求めるようになる。

翌朝は翌朝で、昨日の熱がまた復活してきて…いつもならもうとっくに起きて碁盤の前で唸ってる時間なのに。

碁のことなんか忘れて、欲望のままに今朝も僕らは絡みあっていた。




「―…ぁ…っ、進…ど…もっと…ぉ…」

「ん…、分かってる…って」



もし始めてすぐだったなら…気付いたのかもしれない。

でももうクライマックスで、お互い上り詰める寸前。

激しく動き動かれていたので、僕らはこの部屋に一直線に向かってくる二つの足跡に、全くもって気付かなかった。


いきなりスパーンッ!と戸が開いて、

「ただいまアキラさん!ごめんなさいね、中々帰ってこれ…なく…て…」

と言う母の声の語尾がどんどん小さくなる。


「ただいまアキラ。玄関に進藤君の靴があったが、もう打ってるの…かい…」

続いて到着した父の声も、僕らの様子を目の当たりにして…どんどん小さくなっていった。


無理はないだろう。

なんせ最愛の一人娘が朝っぱらから、しかもライバルであるはずの男と、素っ裸で抱き締めあってるんだから。

おまけに既に汗だく。

おまけのおまけに、昨日使用したゴムやら何やらの残骸が布団の周りに散らばっていた。



「あら、やだ、ほほ…、お邪魔しましたー…」

母がスススーっと戸をまた閉めてくれた。


「…アキラ、進藤君。終わったら私の部屋に来なさい」

いつもより低い父の声。

終わったらって、このまま続きをしてもいいってことですか。

無理に決まってます。

だってさっきまであんなにビンビンだった進藤のモノが、今はむしろ通常サイズよりも小さくなって、今にも僕の中から抜けそうなんですから。


父の言葉には

「はい…」

と何とか答えたものの、僕らはしばらく固まって動けなかった。

両親に彼氏としてるところを見られるなんて………穴があったら入りたいどころではなかった。

誰か僕を埋めて殺してくれ。

しかも僕はまだ親に進藤のことを話していなかった。


「進藤…どうしよう……」

「はは……」


確かに笑うしかない状況だけど。

よろよろと体を起こした僕らは、よろよろと着替え――覚悟を決め――よろよろと父の部屋に向かったのだった―――













「アキラです」

「入りなさい」


障子を開けると、上座に父、その隣に母も座っていた。


「さっきはごめんなさいね。私達も久しぶりにあなたに会えると思ったら嬉しくてつい…」

「い、いえ…」

「進藤さんとのこと、全然聞いてなかったからびっくりしたわ。いつからお付き合いしてたの?」

「もう…6年くらい前から…です」

「あら、そんなになるの」


母の存在は張り詰めた部屋の空気を緩めてくれる。

でも、父は進藤の方を睨んだままだ。

進藤は明後日の方向を向いたまま。

たまに父の方をチラッと見て、迫力に負けて、シュンと俯いていた。



「…進藤君、アキラが嫁入り前だということを分かっているのかね?」

「も、もちろんです」

「ならばなぜ傷をつけるような真似をした?」


ぼ、僕は傷物ですか?お父さん。

不良品ですか?


「それって婚前交渉したら…もうお嫁に行けないってことですか?なら問題ないと思います。塔矢はオレが貰うつもりだし…」

「進藤…」


思いがけない彼からのプロポーズに僕はもちろん感動したのだけど、父の表情はますます険しくなっていった。


「アキラはやらん!」

とそっぽを向いてしまった。


「まぁ、あなたったら。何でそんなこと言うんですか。あなただって帰ってくるまでは乗り気だったじゃないですか。アキラだってもういい歳だし、お相手がいないのならこの際進藤君にでも貰ってもらいましょうって」

「む…それは…」

「アキラさん、進藤君、ごめんなさいね。この人さっきのショックが大きすぎたみたいで…」

「い、いえ…、こちらこそすみませんでした…」


進藤が赤くなる顔を叩いて何とか素に戻し、真面目な顔をして父に頭を下げた。


「先生、いくら付き合ってるとはいえアキラさんに手を出してしまってすみませんでした。でもアキラさんに対する気持ちは真剣なんです。いつか正式に結婚の許しをいただきに来ますので、その時はよろしくお願いします」

「…いつかとはいつだね?それまでアキラには指一本触れないでくれ」

「お父さん!!」

「あなた!またそんなことを!」


妻と娘から大ブーイングを受けた父は、渋々「ではこの家ではしないこと…」という条件付きで許してくれた。


でも進藤は同じ男同士、父の顔を立てたのか、

「結婚までさ、やっぱするのやめようか」

と言い出してきた。


「本気…?」

「うん」

「でもお父さん達はまたすぐ北京に帰っちゃうんだよ?帰ったらまた自由になるし…」

「うん、だからさ、帰るまでに許しを貰おうと思うんだ」

「……え?」

「結婚しよう、塔矢」

「――え?」

「ずっと言うの延び延びになっててゴメン。でもずっと前からオレはオマエと共に生きるって決めてたからな」

「進藤……」


嬉しくて涙が出てきた。

そんな僕を進藤が優しく抱きしめてくれる。


「好きだ…塔矢。いつどこで抱き合っても、誰からも何も言われない関係に…早くなろうぜ」

「うん…――」






結局その晩、早々と父に許しを貰ってきた進藤は、意気揚々と僕を自分のマンションに引っ張っていった。


翌朝、今度は進藤のお母さんが突然訪問されて、僕らのHシーンを見られるなんて思いもしないで―――









―END―










以上、見られちゃった〜話でした!(笑)
痛い話ですみませんー…。
ヒカルとアキラの話が纏まった後、明子さんはきっと進藤家に挨拶の電話を入れたんだと思います。
娘共々これからどうぞよろしくお願いしますー、とか何とか。
もちろんまだ何も聞かされてない美津子さん。
ヒカルーーー!!!(怒)と詳しいことを聞きにヒカルの部屋に飛んで行くと、二人が愛し合ってる真っ最中でビックリ!みたいな?
ワオ!みたいな?
ということでこの題が決まりました〜。
はぁ…痛い話だ…(=_=;)
現実にあったら痛すぎる……