●WORK HOLIC●





「今度の連休、沖縄に行きませんか?」

「えっと……日帰りでよければ」

「は?」

「あ…ごめんなさい。沖縄ですよね…沖縄。一泊二日だったら大丈夫ですか?」

「一泊…ですか」



男の人と長い期間付き合うと、いつも旅行を提案される。

そりゃあ…日帰りならいくらでも。

一泊程度ならまだ我慢出来る。

だけど二泊以上は………絶対に御免。













「オマエ、またフラれたんだって?」


約束の時間を30分も過ぎて、ようやく現れたライバルの第一声を聞いて、僕はキッと彼を睨みつけた。


「今何時だと思ってるんだ!」

「仕方ねーだろ、取材が延びちまったんだから。ちゃんとメールしたぞ?」

「携帯なんか見てないよ」

「あっそ」


碁盤越しに僕の前に座った進藤の顔が、やけにニヤニヤしていて気持ち悪い。

どうせ僕をからかうつもりなんだ。


「どうせまた渋ったんだろ?」

「何を?」

「男と女がすること。いつまでバージンでいるつもりなんだか」

「別に渋ってなんかない。向こうが求めてこないだけだ」

「堅っ。そんなだから逃げられるんだよ」

「……」

「旅行まで断ってるらしいじゃん?可哀そ〜旅行って彼女とする最終手段なのに」

「一泊ならいいって言ったよ!僕は」

「…オマエ、なんでそうゆとりねぇの?彼氏とたまにはゆっくりしたいと思わねぇのかよ?」


………したくない。

なんて言うとまた進藤に何か言われるから黙っておいた。

でも、本当にしたくない。

というか出来ない。

彼氏とゆっくり…。

碁を忘れてゆっくり……?

考えるだけで恐ろしい。

そんなの絶対に耐えられない………



「…僕、ワークホリックなのかも…」

「は?」

「ずっと囲碁のことを考えていたいんだ。打たずにそんな何日も遊びに行くなんて考えられない」

「あ〜〜そういうこと」

「うん…」

「じゃあオレが旅行に誘ったら、きっとオマエ喜んで来るな。例え三泊でも四泊でも」


あれ……?


「確かに……行くかも」

「オレとだったら、旅行しながらでも打てるからな〜」

「うん、それなら楽しみだ」

「ま。オレは行かないけど」

「……」


からかうだけからかって、ゲラゲラ笑う目の前の男を再び睨みつけた。


――でも

おかげで答えが出た。

次付き合う人は棋士にしよう。

どこにいても一緒に打てる人にしよう。



「…そうだなぁ、オマエの初めてをくれるってのなら考えてもいいけど?」

「旅行を?」

「うん」

「…キミならそんな手使わなくても、僕を誘えるだろう?」

「はは、もっちろん。今からホテル行こっか〜アキラちゃん」

「……バカ」


棋士の中でも進藤は特別。

キミとなら、僕はどこにでも行くよ。









―END―













以上、仕事中毒アキラ子さん話でした〜。
アキラさんは碁を打ってないと発狂すると思います。
だから彼氏とのデートは一泊が限度。いや、一泊もしたくないのが本音。
その為彼氏の誘いを断ってばかりになるので固いと思われがち。
アキラさんのお相手は碁打ちしか務まらないのです。
(でも自分より弱いと務まらないので、結局ヒカルしかいないかと…)