●WITH PARENTS●





オレ、進藤ヒカルはこの度『塔矢ヒカル』になった。

婿養子に入ったのだ―――



「ごめんね、キミも一人っ子なのに…」

「いいよ、父さん長男じゃないしな。うちの親も、アキラん家みたいな旧家だと仕方ないって納得してくれたし。そんなことより問題は……」



問題は『親と同居』ってことだ。

つまり、塔矢先生夫妻と一緒に住むってこと。

経済的には助かるし、婿養子ってなんかお客様扱いで待遇いい。

先生とも毎日打てて勉強になるし、明子さんが家事を担当してくれるのでアキラが遠征でもご飯の心配はまずない。

休日はアキラも台所に立ってくれるので手料理が食べれないわけでもないし。

じゃあ何が問題なのかというと、新婚のオレらにとって一番大事(?)な夜の生活を遠慮してしまうってことだ。



「…それって問題?」

「大大大問題だって!なんで未だにホテルなんか使わなくちゃいけねーんだよっ」

「両親の留守中は家でしてるじゃないか」

「でも、滅多にない」

「いてもたまにしてる気がするけど…」

「遠慮気味にな。オレ的にはオマエにもっと声出してほしいし、本当は毎晩でもしたい。横でオマエが寝てるのに手が出せないのってすっげー辛い」


心置きなく毎晩出来た新婚旅行が懐かしい。

これで「子供はまだ?」なんて言われた暁にはキレるかもしれない。

妊娠なんかしてみろ、軽く一年は禁欲生活だ。

今の状況を改善出来るまでは絶対に避妊してやる。


「…でも、僕は早く子供ほしいな」

「え?」

「キミの赤ちゃん…早く産みたい。キミは?」

「え、そりゃ、ほしくないわけじゃねぇけど…」


もし出来たら、当然産んでほしい。

オレ子供好きだし、アキラの子供だったらすっげー可愛いだろうし。

でもでもでも!その前に悔いが残らないぐらい作る行為を楽しみたいんだっ!

あ〜〜なんかいい方法ねーのかよ??!


「じゃあ…試しに今夜は家で普通にしてみる?明日の朝、両親の反応をちょっと見てみよう」

「ええ??ソレ気まずくねー??」

「両親だって、結婚したばかりの僕らが夜に何をしてるのかなんて当然分かってると思う。僕が親ならあえて詮索もしないし放っておく。両親も同じなはずだ」

「でも何か言われたら?もう少し静かにしてね、とか。アキラをあまり虐めないでくれ、とかさ〜」

「…それは父が正しい。キミっていつも手加減なしだから…」

「え〜?手加減していいの?イヤイヤ言いながらもオマエだっていつもノリノリなくせに〜」

「………」


とにもかくにも、今夜は遠慮なしにアキラとエッチすることに決定した。




「ヒカルさん、お風呂沸きましたよ。お先にどうぞ」

「ありがとうございます。アキラ、一緒に入ろうぜ」


悪ノリして風呂にも誘うと、アキラと明子さんは同じようなビックリした表情を向けてきた。

先生は飲んだお茶で噎せていた。


「ダメ?」

「い……いいけど」

「じゃ、行こうぜ」


アキラの手を取って風呂場に向かった。



「キミって……」

「へへ、いいじゃん。アピールだよ、アピール。夫婦仲いいんです、って」


一緒に浸かって、流しあいっこもして、ちょっとキスにスキンシップも。

のぼせかける手前で上がって、今度は髪を乾かしあいっこ。

居間に手を繋いで戻って、一緒にお休みなさいを言ってからオレらの寝室に帰った。


「塔矢先生複雑そうな顔してたな。やっぱ婿養子でも娘を取られた気分になるのかな?」

「違うと思う…。キミが突然僕にベタベタし出したから戸惑ってるんだよ」

「でもこれがホントのオレだもん。奥さんといちゃいちゃして何が悪いんだよ」

「人前ではほどほどにしてくれ…」


ぷぅっと口を膨らましてみたが、これから思う存分にアキラを抱けると思うと顔がニヤけて仕方ない。

背後に回って、ぎゅっとアキラを抱きしめた。


「…もし明日の朝、先生と明子さんの様子がいつもと同じだったら、しばらく毎晩抱いてもいい?」

「しばらく?」

「うん…子供が出来るまで」

「ヒカル…」

「オレ…オマエにオレの子供産みたいって言われて…すげぇ嬉しかった」

「本心だよ。キミの子供が早く欲しい」

「じゃ、今から作ろうか」

「うん――」



キスで始まる今夜のエッチ。

時間をたっぷりかけて愛撫して、アキラにオレの愛を伝えた。


「―はぁ…んっ、…も…う…―」

「ん…、いく…な」

「あぁ…っ――」


アキラの可愛い喘ぎ声、きっと先生達の部屋まで聞こえてる。

どう思われてるんだろう。

呆れられてる?

怒ってる?

それともオレらの仲がよくて安心してる?

孫を抱ける日も近いかもって喜んでる?

明日の朝の反応が楽しみだ―――







「おはようございまーす」


翌朝――いつも通りに朝食をいただきに居間に行くと、いつも通りの光景があった。


「おはよう」

と新聞に顔を向けたままの先生。

「おはよう。もう出来ますからね」

とテキパキ動いてる明子さん。

オレもアキラもホッと胸を撫で下ろした。



後で知ることになるのだが、実は先生も明子さんも一度寝たら多少のことでは絶対に朝まで起きないらしい。

しかも二人が寝るのは決まって夜10時。


「なんだよー。10時以降ならいくらでもラブラブしてよかったんじゃん!」

とかなり悔しかった。


「だから両親は同居したかったのかもしれないね。何かあった時、気付かず逃げ遅れたら大変だし」

「そうだな」


唯一の問題がなくなった今、オレらの夫婦生活は順調そのもの。

あとは子供が出来るのを待つのみ―――







―END―







以上、親と同居話でした〜。
自分でもツッコミ所満載な設定でしたが、とりあえず婿養子ヒカルっていいよな〜と思います(笑)
奥さんの家でちやほやされるヒカル。
世渡りが上手いヒカルは塔矢名人とも明子夫人とも余裕で上手くやれそう。
22時就寝〜というオチにしましたが、別に聞こえてても明子さんなら笑って知らない振りしてくれそうですよね。
名人は何も言わないけど実は困ってたり。
ぼそっと緒方さんあたりにぼやいて、ヒカアキは後で一喝されるのです(笑)
あ〜楽しい設定だわ、これ。長編で書きたいな〜(^▽^)/