●W 9●
●○●○● ネタばらし 社 ●○●○●
「ぁん…っ、あぁ…っ、はぁ…んっ」
「お〜お〜、いい声が聞こえよるわぁ」
「盗み聞きなんて悪趣味よ。耳障りだからテレビ点けて」
「へいへい」
無事に進藤と塔矢をくっつけ、一仕事終えてホッとしとる俺と違って、ルルの表情は険しかった。
やっぱり彼女にとって進藤は、一応三年間付き合った彼氏やし?
内心複雑なんかもなぁ。
「清ちゃん、悪かったわね。変なこと頼んじゃって」
「ええって。ルルの頼み断ったらオカンに殺されるしな。可愛い姪っ子やけんなぁ」
そう――俺とこの轟ルルは、実は母親が姉妹の所謂イトコ同士ってやつやったりする。
ルルが大阪にいた小学校の頃までは、よく一緒に打ちあってもいた。
そのルルがあの進藤と付き合い始めたって聞いた時は、正直言ってめちゃくちゃ心配やった。
だって……進藤やろ?
進藤といえば…塔矢やん?
今は他の女で遊んどるんかもしれへんけど、アイツが最後に選ぶんは絶対に塔矢やし。
つーか、ルルが進藤に遊ばれてる??
一大事や!
そんなルルから
『ヒカルと別れたいの…。清ちゃん手伝って』
と助けを求められたのはほんの一ヶ月前。
自分と付き合ってるくせに、頭は常に塔矢のことしか考えてない進藤にもう限界だとか。
やっぱりな…って感じやった。
「そんなに塔矢さんのことが好きなら、さっさと塔矢さんと結婚でもすればいいのよ!」
「あの二人変に意地っ張りやけんなぁ。もうしばらくは無理やろなぁ」
「無理?!冗談じゃないわよ!清ちゃんあの二人のこと昔から知ってるんでしょ?!何とかしてよ!」
「ていわれてもなぁ…」
で、考えに考え抜いて思いついたのが今回の作戦。
まさか初デートからこんなに上手くいってまうとは思わんかったけど。
何て単純な二人なんや…。
「ヒカルなんて嫌い!嫌い嫌い大嫌い!この三年を返してよ〜〜!!」
「…よく言うわ。あの進藤ヒカルに告られた!ってめちゃくちゃ喜んどったくせに。俺はちゃんと忠告したはずやで?進藤だけはやめときやって。塔矢のもんやから」
「そのうち心変わりしてくれるって信じてたの!見事に裏切られたけど!」
えーん、とルルがベッドのシーツに潜ってしまった。
やれやれ…。
「ルルにはいつかもっとルルにピッタリの男が現れるよって。気長に待ちや」
「いつかっていつよーー??!」
えーん、と再び潜る。
「そなやぁ…、取りあえず手近に…俺とか?」
「清ちゃんと…?」
「あかん?」
「………」
少し考えたルルは、「えーん、絶対イヤ!!」とまた潜ってしまった。
はぁ……どうすりゃいいねん。
俺の周りはとんでもない奴ばっかりや……
ちなみに、壁の向こうでいちゃついてる進藤と塔矢から、結婚式の招待状が届くのは、それから半年後のことやったりする――
―END―
ありがとうございました!