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●○●○● ネタばらし  社 ●○●○●



「ぁん…っ、あぁ…っ、はぁ…んっ」



「お〜お〜、いい声が聞こえよるわぁ」

「盗み聞きなんて悪趣味よ。耳障りだからテレビ点けて」

「へいへい」


無事に進藤と塔矢をくっつけ、一仕事終えてホッとしとる俺と違って、ルルの表情は険しかった。

やっぱり彼女にとって進藤は、一応三年間付き合った彼氏やし?

内心複雑なんかもなぁ。


「清ちゃん、悪かったわね。変なこと頼んじゃって」

「ええって。ルルの頼み断ったらオカンに殺されるしな。可愛い姪っ子やけんなぁ」


そう――俺とこの轟ルルは、実は母親が姉妹の所謂イトコ同士ってやつやったりする。

ルルが大阪にいた小学校の頃までは、よく一緒に打ちあってもいた。

そのルルがあの進藤と付き合い始めたって聞いた時は、正直言ってめちゃくちゃ心配やった。

だって……進藤やろ?

進藤といえば…塔矢やん?

今は他の女で遊んどるんかもしれへんけど、アイツが最後に選ぶんは絶対に塔矢やし。

つーか、ルルが進藤に遊ばれてる??

一大事や!


そんなルルから

『ヒカルと別れたいの…。清ちゃん手伝って』

と助けを求められたのはほんの一ヶ月前。

自分と付き合ってるくせに、頭は常に塔矢のことしか考えてない進藤にもう限界だとか。

やっぱりな…って感じやった。


「そんなに塔矢さんのことが好きなら、さっさと塔矢さんと結婚でもすればいいのよ!」

「あの二人変に意地っ張りやけんなぁ。もうしばらくは無理やろなぁ」

「無理?!冗談じゃないわよ!清ちゃんあの二人のこと昔から知ってるんでしょ?!何とかしてよ!」

「ていわれてもなぁ…」


で、考えに考え抜いて思いついたのが今回の作戦。

まさか初デートからこんなに上手くいってまうとは思わんかったけど。

何て単純な二人なんや…。


「ヒカルなんて嫌い!嫌い嫌い大嫌い!この三年を返してよ〜〜!!」

「…よく言うわ。あの進藤ヒカルに告られた!ってめちゃくちゃ喜んどったくせに。俺はちゃんと忠告したはずやで?進藤だけはやめときやって。塔矢のもんやから」

「そのうち心変わりしてくれるって信じてたの!見事に裏切られたけど!」


えーん、とルルがベッドのシーツに潜ってしまった。

やれやれ…。


「ルルにはいつかもっとルルにピッタリの男が現れるよって。気長に待ちや」

「いつかっていつよーー??!」


えーん、と再び潜る。


「そなやぁ…、取りあえず手近に…俺とか?」

「清ちゃんと…?」

「あかん?」

「………」


少し考えたルルは、「えーん、絶対イヤ!!」とまた潜ってしまった。

はぁ……どうすりゃいいねん。

俺の周りはとんでもない奴ばっかりや……




ちなみに、壁の向こうでいちゃついてる進藤と塔矢から、結婚式の招待状が届くのは、それから半年後のことやったりする――








―END―



ありがとうございました!