●UWAKI●






進藤が浮気をした―。





「ごめんっ!オレあの時酔っ払ってて、オマエと間違えて…」


色々言い訳してきたが、その事実が消えることはない。

汚らわしい…。

他の人を抱いた手で二度と僕に触るな!


「別れよう」

「そんな…」


たった一夜のミスだけど、僕には許せなかったんだ――











それから1ヶ月――。

「ここは右辺から攻める方が良くないか?」

「んー、それだと下が手薄くならねぇ?」

別れた後も、僕らは対局の時間だけは辛うじて保っている。


「いけない、もうこんな時間だ。今日はこの位で終わろうか」

「そうだな…」

碁石を素早く片付けてる間、進藤の視線は2秒に1回は僕の方にチラチラ向けられていた。


「…なに?」

「え?あ…いや、この後メシでもどうかなって…」

「悪いけど…何度も言った通り、キミとはもう二度と一緒に食べたくない」

「……」

進藤がぎゅっと唇を噛み締めた―。


キミが反省してるのは知っている。

でも僕はもう二度と、キミと碁以外の関係を持ちたくないんだ―。


「塔矢…どうやったら許してくれる…?」

「許す許さないは関係ない。ただ僕にはもうその気がないだけだ」

「オレのことが嫌いってこと…?」

「そうだね、碁を打つ時以外のキミは近くにいるだけで目障りだ」

「そこまで言うか…」

進藤が大きな溜め息をついて、首を垂らした。


「じゃあ僕はもう帰るから」

「送ってく…」

「結構だっ!」

勢いよく椅子から立上がり、進藤よりも先に碁会所を後にした―。









僕らは16の夏から付き合い始めた。

約4年間ずっと一緒にいて、碁と並行して気持ちも深め…高めあってきたつもりだ。

僕にとってこれ以上の相手はいない…。

このまま結婚してもいいかな…なんてことも何度思ったことか。


――だけど一ヶ月前のあの日

いつものように碁でも打とうかと彼の部屋を訪れた時――全てが崩れ落ちた。

ベッドで進藤が女性と寝ていたんだ。

しかも全裸で―。

何があったかなんて聞くまでもない。

進藤は酔いつぶれていて記憶が曖昧だったみたいだけど…誰かを抱いたことだけは覚えていて…、それが僕じゃなかったことに愕然としていた。

一緒に寝ていたのは僕とは180°タイプの違う人だ。

どこをどう間違えるんだか。

それとも間違えたというのは苦しい言い逃れの嘘なのか…?

でもそんなことはどうでもいい。

重要なのはそれを見た瞬間、僕の中で一気に気持ちが冷めたってことだ。

あれ以来進藤が視界に入るだけでイライラする。

本当は一緒に碁だって打ちたくない―。

もう二度と言葉も交わしたくない―。

もう二度と……僕の前に現れないでほしい…。






「塔矢っ!」

性懲りもなく追いかけてきた進藤を睨み付けた―。

「…やっぱり送ってく」

「……」

勝手にしろ、と心の中で呟きながら…僕らは並んで歩き始めた。

もちろん会話はなし。

話したくないし、何も聞きたくない。

すごく……ムカムカする。



「塔矢…。オレはオマエが好きだよ」

「……」

僕の家まであと数十メートルという所で、進藤が口を開いた―。

「初めて会った小6の時からずっと好きだ…。んで多分死ぬまで好きだと思う」

「……僕が他の男性と結婚しても?」

「オマエはそんなことしない」

「するよ。…そしてキミも僕以外の女性と結婚する」

「しねぇよ…」

「いいや、必ずする。キミは独身を貫くような質じゃないし…僕と出来ないのなら、ほどよい相手を見つけて必ずキミはする」

「しないって!」

「なぜそう言い切れる?!」

「オレは絶対オマエと結婚するから!」

「ふざけるなっ!!」

僕は進藤を思いっきり睨みつけ、久々のソレを口にした。

「嫌いだって言ったはずだ!目障りなんだ!側にいるだけでイライラする!」

「塔矢っ!!」

進藤が僕をキツく抱き締めてきた―。

「離せっ!僕に触るな!」

「嫌だっ!!」

気持ち悪い!

汚らわしい!

他人を抱いた手で僕に触れないでくれ!

もう二度と僕に近付くな!


「……っ…―」


「……塔矢」


頭で考えてることとは裏腹に、体が勝手に進藤の胸にしがみついた―。

勝手に涙が溢れてくる―。


「…キミなんか…大嫌い…」

「うん…分かってる」

「僕と付き合ってたくせに…」

「うん…」

「付き合ってたくせに…キミは他の人に…触れた…」

「ごめんな…」

「絶対に…許さない…」

「うん…オマエが許してくれるわけないよな…」

「もう二度と…」

「二度としない、絶対に。約束する」

「本当だろうな…」

「うん、絶対――」

進藤が頬にキスして、顔を上げた僕の唇にも優しく触れてきた―。


「オレにはオマエだけだし…。この先一生…」

「……」

「何が言いたいか分かる…?」

「……うん」

「やり直そうとか、もう一度付き合ってなんてことは言わない」

「……」

「オレと結婚して欲しいんだ」

「……」

「もう二度とオレがあんなこと出来ないように、一緒に住んで見張っててよ」

もう一度強く抱き締めてきた彼に体を任せて…僕はゆっくり頷いた―。

「…分かった。見張ってる」

「頼むな…」

それは僕らの婚約が成立した瞬間。

進藤は嬉しそうに何度も僕の髪にキスをしてきた―。


僕だって本当はキミといたかった。

気持ちが冷めたなんて嘘だ。

あの屈辱に耐えられなくて、そう思いたかっただけ。

それにキミが諦めずに追いかけてきてくれるのが嬉しくて…困らせてみたかったんだ。

でも本心じゃないって、キミはちゃんと分かっててくれた。

だから僕はキミが大好きなんだ――。


「…好きだよ進藤」

「オレも…―」













―END―













以上、浮気話でしたー。
拍手用に書いたまま放置されていた残骸を編集してみました。
アキラは浮気とか絶対に許さないタイプだと思います。いや、許す女性はこの世にいないと思いますが…。
この話のヒカルはアキラ一筋!の方なので、きっとこの浮気は衝動的なものかと。

にしても今浮気とかそういう類にハマってます(笑)
ドラマのねー、「不振のとき」がねー、面白いの〜(笑)
あぁいうドロドロしたの大好きvv(おい)
大奥も好きでした。(メンバーも似てますし…同じ曜日同じ時間同じCHだから?)

今度はアキラに浮気をしてもらおうかな。
でもうちのアキラはかなりの潔癖症なので、絶対にしないような…??