●UNIVERCITY●

※この話は佐為のクラスメート・西条と金森女流二段のお話・その3です。





「金森さんも今日の飲み会行くよね?」

「……え?」



この春から大学に進学した私。

時間割りも好きに組めるので、高校の時より棋士との両立がしやすくなった。

それは嬉しいんだけど……一方で、こういう誘いが増えて私は困っていた。



「ごめん、今日はこのあと予定があって…」

「そうなの?じゃあ仕方ないね」

「ごめんね…」


私は逃げるようにそそくさと教室を後にした――



別に飲み会が嫌いなわけじゃない。

誘ってくれた、これから4年間を共に過ごす同じ英文科のクラスメートとも仲良くしておいた方が賢明だろう。

だから私も最初の2、3回は誘われるがままに参加した。

で、気付いてしまったのだ。

彼女達が私を誘う『飲み会』というのが、単なる『合コン』であることに…!!









「ごめん悠一君!お待たせ」

「全然待ってへんよ」


悠一君の家の最寄り駅前にあるセルフカフェ。

放課後デートのいつもの待ち合わせ場所で、私達は合流した。

放課後デートだからもちろん悠一君は制服のままだ。

私を待ってる間に宿題をしていたらしく、悠一君が机に広げていた教科書やノートを片付け出した。

先月までは私も彼と同じように制服だったけど、大学生になってからはもちろん私服で会うようになった。


「私も何か飲み物注文してくるね」

「そやね」


荷物を向かいの席に置いて、お財布だけを持って私はカウンターに向かった。

今日は少し暑いからアイスコーヒーにしようかな。

それともアイスティー?

結局後者にして、「お待たせ」と席に戻った。


「LINEかな、携帯めっちゃ鳴りよったよ」

と悠一君が教えてくれる。

「そうなの?誰だろ…」


携帯を確認して、相手の名前を見た途端に、げ…っとなった。

LINEでメッセージを送って来たのは、先週の飲み会でしぶしぶ連絡先を交換したA大の男の子からだった。

飲み会後、しつこいくらいに連絡が来るのだ。

もうブロックしてしまいたいんだけど、同じ学科の子の友人でもあるから、そういう訳にもいかない。

ひとまず私は携帯をカバンに仕舞った。


「返信せんの?」

「うん、いいのいいの」

「…ふーん」

「それより悠一君、今週の土曜は空いてる?映画でも観に行かない?」

「ええよ」


放課後、門限の19時までの悠一君と会える僅かな時間。

楽しくお話ししたいのに……LINEの着信音が鳴り続ける。

集中出来ない。

悠一君も「もう返信したら?」と苦笑い状態だ。


「いいの、返信なんかしたらもっと来るし」

「誰から?」

「え…?」

「誰からそんなに連絡が来よん?」

「……」


優しく聞いてくれてるけど、悠一君の目は全く笑っていなかった。

冷や汗が出る。

本当のことなんてもちろん言えない。

合コンで出会った男の子から…だなんて。


「男から?」

「え…っ?!そ、そんなわけ…っ」


でも私は嘘が吐けない性格だ。

私の動揺ぶりに、勘の鋭い悠一君は一瞬で見抜いて来る。

目を細められる。


「…奈央、先週も飲み会あったよな?」

「う…、うん…」

「そこで連絡先交換してもたんやろ」

「……ごめんなさい」

「……」

「どうしても断りきれなくて……」


私は観念して大人しく謝った。

はぁ…と悠一君に溜め息を吐かれる。

でもって

「奈央、携帯かして」

と手を差し出される。

恐る恐る渡すと、悠一君は直ぐ様LINEを開けて彼のアイコンを押した。

でもって

『二度と人の彼女に連絡しないで下さい』

とメッセージを送り、すぐにブロックし、更に削除した。

そして携帯を返される。


「奈央、付き合いもあるから飲み会は断れんこともあると思うけど、二度と連絡先は交換せんといて?」

「う、うん……ごめんなさい」

「次したら、俺も同じことするから」

「え……?」


それって、それって、悠一君も合コンに参加して、女の子と連絡先を交換するってこと??

そんなの嫌だ、絶対に嫌だ…!!

でもその絶対に嫌だと思うことを……私はしてしまったんだ……

悠一君が怒るのも無理ない……


「本当にごめんなさい……」

私はもう一度謝った。

「もうええよ、チューしてくれたら許したげる」

「え……ここで?」

「うん、ここで」


左右前後全ての席に他のお客さんが座っているほぼ満席のセルフカフェ。

めちゃくちゃ恥ずかしいけれど、私は悠一君に許してもらう為に羞恥心を捨てて。

身を乗り出して、そっと一瞬だけ彼に口付けしたのだった――









―END―








以上、ヤキモチ西条×お間抜け奈央なお話でした〜。
奈央大1、西条高2です。
お嬢様大学に進学した奈央〜。
同じ学科の子達と仲良くなりたくて飲み会に参加してみたら、見事に合コンで。
もちろん連絡先を教えるつもりなんてこれっぽっちもなかったのですが、一緒に参加した女の子達に「LINEくらい教えてあげなよ〜」と言われてしまい……しぶしぶ。
でもこれで反省したので、奈央はもう二度と飲み会にも参加しません〜。
というか、以降合コンに行くようなグループと付き合うのをやめたそうですよ。
大学には色んな人がいるので、奈央にピッタリの女の子もきっといるはず★

ヤキモチ西条は書いてて楽しかったです(笑)
西条は自分がまだ高校生なことに引け目を感じてるんですよね〜。
早く俺も大学生になりたいなぁ…と、モヤモヤ。
大学生になったらなったで、これまた奈央の方が早く卒業してしまうので、早く社会人になりたいなぁ…と思うわけですが。(いやいや、棋士は十分社会人ですよw)
ちなみにカフェでキスを求めて、ちょっと意地悪してみる西条。
きっと横に座ってた女の子達は、一瞬とはいえキスする二人を見て、きゃー///と思ったことでしょうw
というか痴話喧嘩のあたりから横の女の子達は耳をダンボにしてると思われます(笑)
バカップルくらいが西条×奈央にはピッタリですな!
ちなみにもちろんキスだけでは済まないよ!
この後西条の部屋に引っ張っていかれて、押し倒されて奈央はお仕置きエッチですよw
まぁ毎度のことながらノリノリな奈央ちゃんですけどね!(笑)
ちょっと怒ってて強引な悠一君もイイかも〜vvとか絶対思ってます。