●UNIFORM 1●


「オレのクラスさ、来週クリスマスパーティーも兼ねて卒業パーティーすんだって」

「へぇ…面白そうだね」

「全然面白くねぇ!余興で何すると思う?!女装だぜ、女装!」

「ブッ」

思わず飲んでたお茶を吹き出しそうになってしまった。




もうすぐクリスマス。

年が明けてしまうと高校受験は本格化してしまうので、その前に進藤のクラスはお別れパーティーをすることになったらしい。

その出し物をクジで引いたところ、進藤は「女装」を当てたのだという。


「ちょうどセミナーの手伝い頼まれてたからさ、断ろうかと思ったんだけど…クラス委員の金子が『あんた受験ないんだからそれ位顔出しなさいよね!』って強制参加になっちまって…」

「災難だな」

微妙に笑っている僕を見て、進藤が口を尖らせた。


「でも女装って…一体何を着るんだ?」

「ただの女子の制服着るだけでいいってさ」

「それくらいならまだいいじゃないか」

「よくねぇよ!恥ずかしすぎ!」

進藤がプイッと顔を背けた。


「…で、その服はクラスの子に借りるの?」

「ああ、もう予備のを借りてる」

え〜と…と進藤が机の横の紙袋から取り出した。


別に見せてくれなくてもいいんだけど…。


「カツラとかは付けないのか?」

更に悪乗りして言ってみた。

「そこまで出来るか!」

「そう?キミなら似合うと思うけど…」

キミは元々目も大きいし、身長もまだ160cm台だし――うん、想像しただけでもかなりハマり役だ。

「いや、絶対オレよりオマエの方が似合うぜ」


「…は?」


いきなり自分に振られて眉間にシワを寄せた。

「そうだよ!絶対オマエの方が似合うって!塔矢着てみてよ」

「…嫌に決まってるだろ」

突然バカなことを言い出した進藤の顔を睨みつけた。

「そう言わずにさぁ〜」

「断る!」

「もし着てくれたらもう1局打ってやってもいいぜ?」

「その手には乗らないよ」


キミはすぐ碁をエサに僕を釣るんだ。


「んじゃ2局打つから」

「……ダメ」


ちょっと心が動きかけたけど、やっぱり乗らない。


「じゃあ3局」

「…今から3局も打ったんじゃ夜中になっちゃうよ…?」

「いいぜ、一晩中打ってやるよ」

「………分かった」

進藤が小さなガッツポーズをしたのが見えた。


はぁ…自分が情けない…。

やっぱり釣られてしまうとは…。

キミは卑怯だ。

キミに誘われて、僕が断れるわけがないじゃないか!


「じゃあこれとこれな!」

ご丁寧にソックスや靴まで渡してくれた。

「…上だけじゃ駄目?」

「ダメ〜」

思いっきり両手で×印を出してきた。

「でもさすがに家の中じゃ靴までは履けないよ…」

「んじゃ靴以外でいいから」

早く早く!と急かしてくる。

「…じゃあトイレを借りるよ?」

「おう!」

しぶしぶ進藤の部屋を出てトイレに入った。



葉瀬中の制服は海王とは全く違うデザインでセーラー服だ。

しかも誰に借りてきたのかしらないけど…スカートがやけに短い。

さすが進藤が恥ずかしいと言っただけあるな…。

ウエストは調節出来るみたいだから入らないってことはなさそうだけど…。


「はぁ…」

諦めて着替えるか。

でも進藤に見せたらまたすぐに着替えよう…。



「…あれ?」













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