●TONIGHT●




「また進藤と同室か…」



来週ある地方ゼミの部屋割り表を見て、思わず溜め息が出てしまった。


「何?アキラ、進藤君と同じ部屋嫌なの?」

隣りにいた芦原さんが不思議そうに聞いてきた。

「お前ら仲いいじゃん」

「それは…」


確かに今の僕にとっては進藤が一番の友達だ。

お父さんが外国に行き出してからは研究会も開催されなくなったから、塔矢門下の人達とも会う回数が減って…この芦原さんとも週に1度会えたらいい方になってしまった。

反対に会う回数が増えてきたのが進藤。

彼は用事のない時はほぼ毎日囲碁サロンに通ってくれている。

もちろん僕がその日いるか確かめてから、だけど。


「オマエがいないんだったら行っても意味ねーし」


前にそう言われたことがあって、嬉しかったのを覚えている。

進藤は僕と打つためにわざわざ来てくれてるんだ。

だからそんな進藤と同室になれて嬉しくないはずがない。

同じ部屋だったら他の人に気がねなく遅くまで打つことが出来るし…。

きっと僕は心底では喜んでるんだ。



でも…―













「じゃあ進藤君、塔矢君、お疲れ様」

「お疲れ様でーす」

「お休みなさい」


他の棋士達と別れ、部屋に戻り始めた。

「えーと…明日は朝9時から大盤解説が始まるんだよな」

「うん」

進藤が予定表を見ながら、明日のスケジュールを確認し始めた。

「オレはその後から指導碁か…。んじゃ7時半ぐらいに起きれば余裕かな?」

「そうだね」


今朝から始まったこの宇都宮でのゼミナールは、一般のお客さんを対象に明後日まで開催される。

僕ら他、数名の棋士が参加して、指導碁など手伝いに回っていた。

今日は初日ということで、ゼミナールの後に少し宴会があったので今はもう既に10時を回ってしまっている。

これから一局打つのはちょっと難しいかもしれないな…。



「んじゃそろそろ始めるか」

部屋に着いて一息ついた後、進藤がそれを口に出した。

「な、何を?」

嫌な予感がして思わず後退りをしてしまった。

「決まってんじゃーん。オレとオマエがすることって言ったら2つしかないだろ?でも今日はもう碁は嫌ってほど打ったよな〜?」

「キ、キミとは打ってないけど…」

「んなの帰ってからでも打てるし!今しか出来ないことをしよーぜ」

進藤がじりじり近付いてくる。

「い、嫌だ!前から思ってたんだが、何で僕がこんなことしなくちゃならないんだっ!」

「えー、塔矢だって好きだろ?いつものりのりじゃん」

「何言って…、あっ…―」

進藤の唇が僕の首筋に触れて、吸い付いてきた。


――そう…これが僕が進藤と同じ部屋になるのが嫌な理由。

なぜか彼は二人きりになるといつも僕の体を求めてくるんだ。

普段は出来るだけ第三者がいる所で進藤と会うようにしているから何とか免れているが、こういう個室で二人きりの状況だと逃れようがない。

僕の我が儘で部屋を変えてもらうわけにはいかないし、外で寝るわけにもいかない。

かといって今の僕の力じゃ進藤を払うことも出来なければ、声を出して助けを求めるなんて恥ずかしいことも出来ない。

それを分かってて彼は手を出してくるんだ。

こんな関係をもってからもう1年。

最初は本当に触るだけ、キスだけだったからまだ良かったんだけど……そのうちどんどんエスカレートしていって、今ではもう取り返しのつかない関係だ。

最初のうちにちゃんと拒んでおけばよかった…。



「は、離せ!だ、だいたい何で僕がいっつも下なんだ!」

なんとか進藤を引き離しながら叫んだ。

「え…、オマエ上やりてぇの?いつもマグロのくせに?」

その言葉にムッとなる。

「ぼ、僕だって男だ!上の方をやりたいと思うのが普通だ!」

「ふーん、まぁ…いいけどさ」



え…?



「んじゃ優しく抱いてね?アキラ君♪」

進藤がゴロンと布団に横になって、僕の体を引き寄せてきた。


「―…んっ…」

腕を首の後ろに巻き付けて、下からキスをしてくる。


「―は…ぁ…」


進藤を下に敷いてるかと思うと何だか違和感を感じるな…。

あまりにアッサリと上のポジションを譲られて、正直ちょっと戸惑ってしまう。

僕が進藤に…出来るのだろうか…。


「塔矢?何固まってんだよ」

早くー、と急かしてくる。

「……っ」

戸惑ってる僕を見て進藤がニヤっと笑った。

「やっぱオマエには無理なんじゃねぇの〜?」

「そんなことっ…!あ、相手が女性だったらちゃんと出来る!」

「何だよ、オレだったら萎えるっていうのか?」

「………」


当たり前だろ!という僕の視線を無視して、進藤が続ける。

「んじゃ使い分けるってことで。オレとする時は大人しく抱かれてよ」

「……」

使い分けるという以前に、そもそも何でこんなことをしなくちゃいけないんだ?

しないという選択肢を与えてくれない進藤の方を睨んだ。


「どしたんだよ?今日機嫌悪くねぇ?」

「別に…キミが自分勝手だから呆れてるんだよ」

「オレのどこが〜?」

「全部」

「ふーん」

ツンと冷たい態度を取ってるのに、お構いなしに下から僕の浴衣を脱がせてくる。

終いには上下逆転して――僕はまたしても彼に組み敷かれた―。


「塔矢…好き…―」

「もう!キミなんて知らないっ」

「へへ♪」


次第に大人しくなっていく僕の体を――今夜も進藤が好き勝手する。

何度も僕に甘い愛を囁きながら――


「好きだよ塔矢…」

「………」

「大好き…――」

「一度言えば分かる」

「んじゃ愛してる…」

「………」


恥ずかしげもなく男に告白してくる進藤。

もちろん一方通行。

僕は今のライバルという関係を壊したくないから……返事も出来ない。

拒むことも出来ない。


もういいよ。

こうなったら、キミを使って性欲処理をしてやる!



そう自分に言い聞かせ―――今夜も僕と進藤は一つになる――













―END―














以上、今夜も流されるアキラさん、でした〜。
こういう同室ネタはアキラ子では出来ないので、普通のアキラです。
まぁ男でも女でもたいして展開は変わりませんが(笑)
にしても久々に普通のヒカアキ書いたなー。
女装してたりオタクネタだったり…最近はロクなヒカアキを書いてなかったので…(汗)

まぁそれはさておき、いつかアキラ子を男だと思い込んでるヒカルとのラブラブ話が書きたいー。
アキラが好きで好きで仕方ないけど、同じ男だということに悩むヒカル(16、17歳ぐらい?)
でも耐え切れずに手を出しちゃって、初めてそこで女だと気付く!みたいな(笑)
ビックリだけど、ラッキーみたいな?
あぁ…書いてみたい…><ウズウズ