TIME LIMIT〜有休編〜 おまけ〜須本視点〜





「嫁の金遣いが本当荒いんですよね…」




昼休み。

一ノ瀬と形成外科の休憩室で、いつものように昼ご飯を食べている時だった。

一つ下の後輩医師に一ノ瀬が相談を持ちかけられていた。


「しょっちゅうデパートとかで服とか靴とか買ってくるし、メイク道具の量もスゴくて…」

しかも全部ブランドものなんですよ、と頭を抱えていた。

「その上ママ友と毎日のようにホテルランチに行ってるし、ディズニーにもしょっちゅう行って毎回山のようにグッズ買ってくるし…」

これから子供の為に学費も貯めなくちゃいけないのに、タワマンに住みたいだの、もっといい車に乗り換えたいだの要望もスゴいらしい。

「そのくせ自分は働くのは絶対嫌だとか抜かすし……もうどうしたらいいと思います??」


うーん…と俺も一ノ瀬も熟考する。


「とりあえず、家計の状況を奥さんと共有するべきだな」

一ノ瀬が提案する。

「何度も説明してるんですよ?!その時は嫁だってうんうん聞いてくれるんです。でも浪費は止まらなくて…」

ボーナスなんて入ろうものならあっという間に使い切ってしまう勢いらしい。


「一ノ瀬先輩の奥さんはそんなんじゃもちろんないですよね?」

「うちは妻の方が忙しいし…、浪費する時間もないと思う」


一ノ瀬の家は家計費口座にお互いが毎月決まった金額を入れて、その中でやりくりしてるらしい。

残りはお互いが管理してるが、一ノ瀬はほぼ貯金と投資に回してるとか。

千明さんも忙しすぎてほぼ放置だと思うと。


「国家公務員の奥さんとか最強過ぎますよね…本当羨ましいです…。須本先生の奥さんはどうなんですか?」

「え?俺?」

「奥さんにはお小遣いあげてる感じですか?」

「いや、今は家族カード渡して好きに使って貰ってるけど…」

「うちもそうなんですけど、それがマズかったみたいで…」

毎月送られてくる明細を見て目眩がしてます…と嘆いていた。


確かに浪費家な奥さんに家族カードは危険だと思う。

でも明菜ちゃんはびっくりするぐらい無駄遣いをしない。

たまにアプリで明細を確認してるけど、彼女の使用履歴はスーパーばかりだ。

たまにドラッグストア、100均。

コンビニすらあんまり利用していない。

まるで余裕のない一人暮らしの大学生の明細のようだった。


(むしろもっと使ってくれていいのにな…)


だから一緒に出かけると、明菜ちゃんには色々買ってあげたくなってしまう。

「そんなにいらないから」

とある程度を超えると拒否されてしまうのだけれど……


「俺の奥さんあんまり物欲ないんだよな…、最低限で満足してるっていうか」

「めっちゃいいじゃないですか。もしかして須本先生の奥さんて、良家のお嬢様なんですか?」

「え?」

「そういう人って小さい頃から物欲が満たされてるから、大人になってもガツガツしないらしいですよ」


俺と一ノ瀬は顔を見合わせた。

進藤家の姉妹を妻にした俺ら。

父親は言わずと知れた進藤ヒカル永世七冠だ。

良家のお嬢様というわけではないけど、タイトル戦の賞金だけで20年以上も1億越えを続けていた父親のもとで育った姉妹だ。

もちろん何不自由なく何でも買い与えられていたことだろう。

物欲がないのはその為?

いや、それより義父の金銭感覚教育が素晴らしすぎるんだと思う。

というより義父自身の主夫能力が。


「うちの嫁の実家ってあんまり裕福じゃないんですよね…。だから今その反動がきてるのかも…」

「餓鬼状態ってこと?じゃあそのうち満足するんじゃない?」

「いやいや、満足するまで待ってたらオレ破産しますから!」

「じゃあ奥さんともう一度話し合った方がいいな。口で伝えるだけじゃなくて、ちゃんと家計収支を表にして、更にこれからいくら必要だから、いつまでにいくら貯めなくちゃいけないか目で見て分かるようにすればさすがに理解してくれるんじゃない?」

「…ですよね。分かりました…」

「元木さんに頼めばライフシュミレーションくらいいくらでもしてくれるよ」

ついでに元木さんの宣伝もしておく。

ライフシュミレーションは保険の営業さんの専門分野だからだ。


「分かりました!元木さん探して来ます!」

と後輩は休憩室を走って出て行った。

余っ程切羽詰まってるらしい。


「俺らっていい奥さん貰ったんだな…」

と改めて思う。


「今頃気付いた?」

「いや、前から知ってた。明菜ちゃんは最高だからな」

「千明も最高だよ」



進藤家の姉妹を妻にした俺ら。

今日も嫁自慢を繰り広げる俺らがいた――

 

 

 

END

 

 

 


以上、進藤家の姉妹を妻に貰った一ノ瀬君・須本君のお話でした〜。
温泉から2ヶ月後、千明の妊娠発覚後くらいの時期かな。

この後輩は嫁が九州の実家に帰ってしまった例の一ノ瀬君の後輩です。
医者を落とすには美貌ももちろん必要なので、元々化粧品にも服にもお金をかけまくってる女性だったんでしょうね。
その上子供を有名私立幼稚園に入れたことで、セレブママ友に誘われてホテルランチもディズニーもしょっちゅう行くことになってしまったと。
セレブママ友はもちろんタワマンに住んで高級車にも乗ってる為、合わせる為に身の丈に合ってない生活を望んでしまった感じでしょうかね〜。
元木さんに協力してもらって現実を見てもらって奥さん説得するしかないですな!

ヒカルの子育ては、子供たちが普通の金銭感覚で育ってる面では大成功ですよね。
金銭感覚はどういう友達と付き合うかも学生の頃は重要だと思いますが、高校の3年間、明菜の親友はあの百合子ちゃんでしたからね。
「アンタそれ本当に必要?同じようなの持ってなかった?」と一緒にショッピング行ってもビシバシ言ってくれそうです。
コスパとかタイパとかいう言葉が一番好きそうですもんね百合子さんは(笑)

でもって大学入っても明菜の一番の友達は愛ちゃんなので。
休みの日に一緒に遊ぶことになっても、
明「今日どこ行く?何しよっか」
愛「碁が打ちたいな♪」
てな感じでカフェで何時間もマグ碁で打ってそうですな(笑)
もしくはカフェでひたすら恋愛トークですよv
明「大樹さんがね〜」
愛「櫻井さんがね〜」
と二人とも何時間も平気で惚気トークしてそうw

一方千明は忙しすぎて無駄遣いする時間もないかと(笑)
保育園の送り迎えもヒカルがしてる為、ママ友なんてもちろんいないと思うので影響されることもなく。
千明の昔からの親友は家計管理も完璧な美鈴ちゃんですからね〜。

親友にも恵まれた進藤家の姉妹をゲットした一ノ瀬君・須本君なのでした〜!