●TIME LIMIT〜有休編〜 6●〜一ノ瀬視点〜
「そういやあれから千明さんとはどう?一ノ瀬」
いつもの昼休み。
形成外科の医局の休憩室に、いつものようにやってきた須本に聞か
「うん…まぁ、言いたいことは言えるようになったかな」
「そりゃよかった」
温泉旅行から帰った後、千明は保育園の緊急連絡先を自分に変更し
「ごめんね、これからは私がお父さんにお迎え頼むから」と――
定時という概念がない裁判官。
つまり夜遅くまで残業し放題なわけだけど、週に1回はオレより先
あと、月に1回はオレの休みに合わせて有休も取ってくれるように
もちろんその時は夫婦の時間も存分に取れていて、オレもまた家族
男って本当、単純だと思う。
「須本の方はどう?最近明菜ちゃんとは」
「え?!うん…、まぁ……ぼちぼち」
「ぼちぼち?」
「…10代の体力って凄いよなぁ」
お互いの為にも『たまには何もせずに寝よう』と一度提案してみた
『大樹さん…、私にもう飽きちゃった…?』
と明菜ちゃんにシュンとされてしまったらしい。
当然須本は
『そんなわけないから!』
とその日もイチャイチャしてしまったそうだ。
「もう明菜ちゃんの生理中と、俺の当直とか出張の日以外はするこ
「はは……死ぬなよ?」
「頑張る」
そういうオレらも、今は週1・2回のペースで最近は出来ている。
千明の態度も温泉以前とは大違いで、オレ的には大満足
ただ気になるのが……それがもう2ヶ月近く続いてるってことだ。
(生理は…?)
(まさか千明……妊娠してる?)
思い当たる節はありすぎる。
須本に言ったら絶対羨ましがるから言わないけど、実は3回に1回
もちろんもしそうならオレはめちゃくちゃ嬉しいけど……千明的に
「ただいま」
「あ、お帰りなさーい」
今日は千明が早く帰って来てくれる日で、ちょうど綾とお風呂から
ダイニングに行くと夕飯も作ってくれていて、オレは感動して胸が
「遅かったね」
「ちょっと寄り道してて…」
ガサガサとドラッグストアで買ってきた紙袋の中身を彼女に渡した
「これって…」
「千明…ずっと生理来てないだろ?」
「そういえば…」
そう――オレが渡したのは妊娠検査薬だ。
とりあえず一度検査してみた方がいいだろう。
陰性なら陰性で、それもまた別の意味で問題だからだ。
千明がトイレから出てくるのを、綾の髪を乾かしてあげながらドキ
出てきた千明に検査薬の結果をみせられる――陽性にラインの入っ
「してたみたい…妊娠」
何かそんな予感はしてたんだけどね…と彼女が笑う。
「千明…」
オレは直ぐ様彼女を抱きしめた。
「めちゃくちゃ嬉しいよ…」
「凌…」
絶対産んでほしい。
でも、仕事第一の妻的にはどうなんだろう……
「うん…、私も嬉しい…」
――え?
「いいのか?だって仕事…」
「うん…、今産んでおかないと将来絶対後悔しそうだから」
綾に弟妹を作ってあげればよかったと、将来後悔したくないらしい
それに――
「大好きな凌の子供だもん…、絶対可愛いよね」
「千明…、ありがとう。オレまた育休取るから。一緒に頑張ろうな
「ありがとう…、でも今度は私も休むから。交代で取ろうね」
「千明…」
今の彼女となら、子供が2人になってもきっと乗り越えられる気が
オレも自分のキャリアを中断してまで2人目を産んでくれる妻に感
「ありがとう…大好きだ」
嬉しそうに抱き締め返してくれた彼女を、一生大事にしようと心に誓
彼女と結婚した1度目の春。
綾が生まれた2度目の春。
育休が明けて生活がガラリと変わった3度目の春。
そして2人目に恵まれ、夫婦の絆がより深まった4度目の春をオレ
ちなみに余談だけど、オレは後日後輩から相談を受ける。
仕事も私生活も順風満帆だと思われていたあの後輩からだ。
「先輩、嫁と子供が実家帰ったっきり帰って来ないんですけど……どうし
「お前さぁ…、ちゃんと普段から奥さんに感謝の言葉とか伝えてたか?」
「え?でも専業主婦なんですから、家事育児はあっちの仕事ですよ
「お前その考え方…離婚案件だからな」
「マジすか」
「向こうから見たら家事育児全部押し付けて、自分は好きな仕事ばかりしてる最低な夫だからな」
「やば……どうしたらいいですかね?」
「さっさと奥さんの実家行って謝ってこい」
「分かりました!明日有休貰います!妻の実家、九州なんで!」
―END―
以上、有休編でした〜。
有休使って皆でわちゃわちゃ温泉に行くだけの話のつもりが、なぜか一ノ瀬君の不満爆発で千明の離婚危機話になってしまいました(笑)ミステリー
しかも最後は千明が二人目を妊娠するという…。この二人は子供は綾ちゃんだけの予定だったんですけどねぇ。予定日は11月みたいよ。
ヒカルも千明の子育て中は孤独との戦いだったと思いますが、美鈴ちゃんのお母さんがよく訪ねて来てくれたので助かってたかと。
大人と話さないとマジでノイローゼになりますからね、育児は。
一ノ瀬君も須本君や明菜が育休中に来てくれてたので、気分転換になってたかと。
(美鈴は最低限しか行ってないと思うのよね、何となく。千明の留守中の訪問は控えてる気がする。何となく。)
特に須本君は小児科医で、毎日新生児も幼児も診察してるプロなのでね!めっちゃ心の支えになってたかと思われます。
というか須本君いなかったら、一ノ瀬君はもっと早く限界が来てたんじゃないでしょうかね〜。
とりあえずこの温泉旅行を機に千明も反省したみたいで、早く帰ったりちゃんと有休取ったりするようになったのでよかったです。
千明の上司もおそらく千明の仕事の姿勢に心配してたかと思いますよ。
産後休暇終わったらすぐ復職して、毎日21時過ぎても働いてるわけですからね。(家庭大丈夫か??)と思ってたかと。
月1回の有休なんて、「どうぞどうぞ〜」だと思います。むしろもっと取れよ、と。
一方、一ノ瀬君の毎日定時上がりは、きっと周りの同僚からは好意的に思われてると思います。
一ノ瀬先生が帰るから私も帰りやすくて助かる〜と。
もちろん後輩のように終業後も自主的に好きなだけ研究に力入れて結果出してる医師も多いと思います。
結果を出してくれたら上司の教授受けはもちろんいいと思いますけどね、まぁ奥さんも大事にしてないと家庭は壊れますよねー。奥さん実家に帰っちゃいますよねーってことで終わります(笑)