TIME LIMIT〜新婚編〜おまけ

※若手御三家の一人・櫻井先生のお話です





婚活市場ほどシビアな世界はない――



「櫻井慎一です。大学病院で医師をしてます」

と自己紹介するのと

「大学で非常勤講師っぽいことしてます」

と言うのとではだいぶ印象が違うらしく、当然女性達の態度も違ってくる。

オレはオレなのに。


「大学で何教えてるんですか?」

「主に生命の誕生について」

「えー道徳的な?櫻井さん理系男子っぽいのに〜」

「そう?」


コンパで出会った子とその場では楽しく会話が出来る。

どの子も本音を隠すのが上手いし、態度にも一切出してこないからだ。

でも一旦トイレにでも席を外すと、一気に豹変して素を曝け出してくる。


「今日も外れだったねー」

「え?アンタ大学講師のイケメン君と楽しそうに喋ってたじゃん」

「えー無理無理。だって大学の非常勤講師って年収300万とかでしょ?いくらイケメンでも自分より年収の低い男なんてありえないから」

「将来教授にでも化けるかもよ〜?」

「それまで支える献身的な女にはなれないから。まぁどうしてもって言うならワンナイトくらいならしてあげてもいいけどね〜」

キャハハとキモイことを言ってくる彼女。


(こっちこそ無理だっつーの)


仕事柄、そのワンナイトとかその場限りの関係で痛い目に遭ってる女性達を大勢見てきたからか、そういうことを軽々しく口にする女には嫌悪感しか湧かない。

でも実際問題この歳にもなると、こういう捻くれた女しか残ってないわけで。

献身的に支えてくれるような女神は学生時代にとっくに売れてしまってるのだ。

新しく婚活市場に出回ってくる若い女の子達は当然同世代の若い男を好む。

年上の男の方が好きだなんていう女は所詮、金目当てな子達ばかりだ。


「とは言っても…、オレも潮時かな…」


今度のコンパでは偽らずに自己紹介してみるか。

医師で、年収は1500万だって……

(下手したら付け回されるから嫌なんだけどな…)


もういっそのことお見合いとかどうだろう?

結婚相談所とか?

マッチングアプリとか……


世の中には異性と出会う方法はいくらでもあるのに、どうもどれもピンと来ない。

きっとまだ結婚への憧れが捨てきれないからだ。

好きな人とゴールインしたいって。


もう何年も恋なんかしてないくせに――


 

 



「―――え?的場さん、今なんて?」


翌日、医局で看護師長の的場さんと打ち合わせをしてると、衝撃的なことを彼女が口にした。

「だからー、小児科の須本先生、結婚間近らしいわよ」

「……は?」



はあああああああ???!!!



同期の須本はオレにとって貴重な独身仲間だった。

あんなにイケメンなのに、オレと同じく女に縁がなく、しょっちゅう恋人にフラれてるからだ。

最近彼女が出来たらしいが、どうせまたすぐ別れると思っていた。

それなのに!結婚?!嘘だろ?!

(このオレを差し置いて先に自分だけ幸せになるとか許さねぇ!!



回診が終わった後、オレは居てもたってもいられず小児科に乗り込んだ。


「須本!!」

「何だよ?」

相変わらずものすごい速さでPCにデータを打ち込んでる須本が顔を上げてくる。

「オマエ、結婚するって本当か?!」

「うん」

「うん、じゃねーよ!一人だけ幸せになるなんて許さないからな!


須本を医局から連れ出して、空いてたミーティング室で怒りのごとく根掘り葉掘り聞いてみる。


「どこで出会ったんだよ?」

「紹介してもらった」

「誰に?」

「親友」

「オマエに親友なんていたか…?あ、もしかして一ノ瀬?」

「そ。一ノ瀬に妹紹介してもらった」


はああああああああ???!!!


んなとんでもない裏ルートで結婚相手を見つけていた須本。

妹とかズル過ぎだろ。


「…一ノ瀬の妹って何歳?28くらい?」

「いや、19

「はああああああああ???!!!」


しかも19歳の女子大生と結婚するとかホザいてきた。

驚きを通り越して、心配になる。


「お前ソレ大丈夫か?騙されてんじゃ…」

「んなわけないだろ」

「いやいやだって、19がオマエと結婚するメリットって何だよ。あ、金か?さては貢いでるな?」

「明菜ちゃんはそんなんじゃないから」

「じゃあ何でオマエなんかが選ばれるんだよ?」

「そりゃオマエ……愛だろ」

「……はい?」

「俺ら相思相愛だし」


明菜ちゃんのことを考えるだけで胸が苦しくなるんだよな…、とかまるで思春期の中学生みたいなことをホザいてきた。


「オマエそれ大丈夫か?胸が苦しいって…狭心症?あ、心筋梗塞?」

「違うって」


その後も永遠と明菜ちゃんとのやりとりを惚気て来た須本。

両想いなのはよく分かった。

もうお互い卒業までなんて絶対待てないから結婚することに決めたらしい。


(羨まし…)


何が羨ましいって、須本がしようとしてる結婚が、オレが一番望んでる理想系だからだ。

好きな人とゴールインする。

打算とか下心とか一切ない、純粋に大好きな女の子と結婚する。

そんな夢みたいな結婚をこの歳で新たに出会った子と出来るなんて、なんて羨ましいんだ……


「…櫻井?聞いてる?大丈夫か?」

「…オレにも紹介してくれよ」

「え?」

「お前だけ幸せになるとかズルい。明菜ちゃんに誰か友達紹介してって頼んでよ」

「ええー…」


19
歳の友達はもちろん同じ歳ぐらいの女の子になってしまうだろう。

でも、幸せそうな須本を見ていたらそんな年の差も関係ないような気がしてきた。


「須本、頼んだからな!」

「ええー…」


 


END

 

 

 

以上、若手御三家の一人、産科の櫻井先生のお話でした〜。
イケメンな彼はコンパでは職業を常に偽ってるそうです。
もちろん真実の愛を見つける為に〜(笑)

でも婚活現場はシビアな為、なかなかいい出会いがないみたいです。
もう同じ歳くらいの子は打算的で捻くれた女しか残ってない、と。
かと言って若すぎる女の子は無理だよな…と諦めてたところで、須本君の女子大生との結婚ですよ。
え?そんなんアリ?騙されてんじゃ??と疑いますが、めっちゃ純愛でビックリ〜。
え?ズルくない?オレにも紹介しろよ、となる訳ですな!

ちなみにこの頃の須本君は明菜との結婚まであと数日と迫ってるので、完全に脳内お花畑状態なのです(笑)
惚気まくっちゃう須本君なのでした!