TIME LIMIT〜新婚編〜おまけ

※須本君の初カノ視点です





「遠距離なんて辛いだけじゃない?オレと付き合おうよ」



私の人生最大の失敗は、この悪魔の台詞に耳を貸して、大樹と別れたことだった――


 

 

 



高校1年生の夏休み前に、中学の時から仲が良かった須本大樹に

「好きです」

と告白されて私達は交際を始めた。

高校の男子の中でも断トツにカッコよくて、医学部目指してるくらい頭もよくて。

でも全然鼻にかけてなくて性格もいい。

身長だってどんどん伸びて、高3の時には180センチにもなっていた。

部活動の囲碁も全国優勝までしちゃう彼は私の自慢の彼氏で、大好きだった。


でも……


「俺、福岡の医学部受けることにした」

「……え?」


この一言から全てが変わり始めた。

(落ちたらいいのに…、そしたら滑り止めで受かってる東京の大学に進学してくれるのに…)


私の願いは叶わず、向こうの国立大学に進学してしまった大樹。

でも、マメだった彼はしょっちゅう連絡くれたし、月に1回は私に会いに帰って来てくれた。

大丈夫…、きっと6年間乗り切れる……


そう思ってたのに――



「え?彼氏福岡なの?」


友人達と飲んでる時に、友達の彼氏グループと途中から合流することになった。

偶然私の隣になった人に彼氏の有無を聞かれて、もちろん私はいると答えた。


「この子の彼氏、福岡の大学行ってるんだって。遠距離恋愛してるんだよね〜」

友達が余計な一言をその人に伝えた時、その人は言った。


『辛いだけじゃない?』

『オレと付き合おうよ』

と――



(ああ…そうか…、私…辛かったんだ……)



毎日会ってた高校時代。

今の月に一回会えるかどうかのこの状況が…辛かったんだと腑に落ちた。

気付いたらコクンと頷いていた。


別れを告げた時の大樹の表情を、私は一生忘れないだろう。




それからの大学生活は充実していて、とても楽しかった。

でも就職して、少し経った頃、彼の転勤が決まる。

名古屋に…3年間。


(大丈夫…、福岡の半分の距離だし…、たった3年だもん)


でも大樹と違って、彼はほとんど会いに帰ってきてくれなかった。

連絡しても返事が返って来るのは数日後。



そして

「やっぱ遠距離オレ無理だわ。別れようぜ」

とフラれる。


私が大樹に放った同じような台詞で――


(なんて申し訳ないことをしてしまったんだろう……)


 

 

 



32
歳になった年始、高校の同窓会で大樹に久しぶりに再会した。


「香織、久しぶり」

「あ…、うん。久しぶり…大樹」


10
年以上ぶりの彼。

更にいい男になっていて、そして当然のように左手薬指に指輪をしていた。

思わず下唇を噛む。


(引き摺ってるのは私だけなんだ…)

(もう私のことなんて何とも思ってないんだ…)


自分でフったくせに、未練がましさが嫌になる。


「須本〜オマエの母さんに聞いたんだけど、オマエJDと結婚したんだって?」

羨まし過ぎだろこの野郎、と彼の幼なじみが彼を弄る。

「いいだろ別に…、好きなんだから」

「ひゅー、熱いねぇ。な、写真ねぇの?」

「あるよ」


奥さんの写真を私も盗み見る。

年末に挙げたという結婚式での写真。

まだ19歳だという彼の奥さんは本当に若くて綺麗で可愛くて、大樹と幸せそうに写っていた。


「…よかったね……結婚おめでとう」


私が絞り出すように祝福すると、照れたように「ありがとう」と頬を掻いていた。

その笑顔に…私の中でずっと引っかかっていた何かが取れた気がした。

諦めがついたともいう。

私も前に進まなきゃと思った。



私には今交際している人がいる。

大阪に転勤の話が出ている彼。

今までの私なら遠距離にひたすら耐えてたところだけど。



――付いていこう――



そう決心した。

もう離れるのは嫌だ。

逆プロポーズでもして結婚しよう。



「大樹、あの時はごめんね…」


本当に今更だけど、一度ちゃんと謝りたかった。


一方的にフってごめんなさい。

今なら分かる、あなたがどんなに私を大事に、大切にしてくれてたのか。

あの時は理解出来なくてごめんなさい。


「いや…、別にもういいよ。お陰で俺も運命の相手に出会えたから


そう言って幸せそうに笑う彼。


私の彼も、こんな顔してどうかプロポーズを受けてくれますように――

 

 



END

 

 

以上、須本君の初カノとのお話でした〜。
須本君、スッキリして明菜の元に帰ったことでしょう。

ちなみに30オーバーの同窓会になると、当時とだいぶ面影が違ってたりもするのです。
ハゲたり太ってたりオッサンオバサンになってたり。
そんな中、高校の時以上にいい男に成長したイケメン須本君が同窓会会場に現れたら、もう同級生の女性達は全員きゃーvvなのですよ(笑)
須本君ヤバッ!え?JDと結婚?!これは結婚しても許されるレベルやわ…と。
将来ご実家の病院を継がれた暁には、絶対そこを子供のかかりつけ医にしよって誰もが思ったとか〜。

でもって囲碁部だった同級生ももちろんいるのですよ。
え?!奥さん進藤ヒカル永世七冠と塔矢アキラ女流三冠の娘なん?!ヤバッ!
え?!進藤先生と塔矢先生とも打った?!ヤバッ!と大盛り上がりですよ(笑)